第151話
異世界1ヵ月と19日目。
日の出前に目覚め、軽く朝の鍛錬を終える。
今日は王都⇔トリスターで往復しなければならない。
長丁場となるので、少し機内食用にサンドイッチを仕込んでおくことにした。
さて、何のサンドイッチを作ろうか・・・。
そう言えば、この世界に来て、まだ1度もカツサンドと言うか、トンカツにお目に掛かってないな・・・。
と言う事で、朝からオーク肉でトンカツ作ってます。
パン粉がそもそもなかったので、まずはパン粉作りから・・・。
魔法で水分を飛ばし、完全に乾いたパンを、荒いおろし金(自作品)でパン粉にしてます。
注意点は・・・指を削らない事! これだな。
厚さ1.5cm厚に切ったオーク肉を叩き、軽く筋を切り、塩コショウをして、小麦粉を軽く塗し、溶き卵に漬けてパン粉を塗す。
これを油で揚げればOKな筈。
さて、食用油だが・・・購入出来たのはオリーブオイルしかないので、これで揚げて見る事にした。
(オークのラードを使う事も検討したが、獣臭くなりそうな予感がして止めた)
オイルを深めの大きな鍋に入れ適温に温める。
余り高温にしすぎると、中に火が通る前に焦げてしまう。
パン粉の屑をいれて温度を見てみる。
そろそろ良い感じ・・・肉を投入・・・ジューと揚げ物特融の音がしている。
頃合いを見計らって、肉を引っくり返す・・・うむ、美味しそうなキツネ色。
最後にちょっと火力を上げて、カリっとさせ、素早くバレットに上げる。
1つ切って火の通り具合を確認し、次いでに味も確認w 久々のトンカツ・・・いやオークカツに体が震える。
「これは病みつきになるなw」とほくそ笑む。
出来栄えに満足し、下ごしらえしたトンカツを淡々と揚げていく。
180個つくりました。途中5回程、油を交換しました。
油を切ったトンカツは冷めないように、アイテムボックスに収納しておく。
サンドイッチ用のパンを切って、マスタードをパンに塗り、レタスを敷いて、トンカツを乗せる。
トンカツの上には、この時の為って訳ではないが、色々試行錯誤して作っておいた、ソースを掛ける。上にパンを乗せ、半分に切って完成。
これを繰り返し、人数分以上を作りだめしておいた。
途中の2時間半の間は暇なので、カツサンドで楽しんで貰う予定。
朝食だが、軽めに茸の雑炊と、焼き魚にしてみた。
この国では、お米を知らない人ばかりなんだけど、意外にも大好評。
更に、コーデリア王国の屋台で購入しておいた、焼き立ての魚の串も大好評。
内陸部だと、なかなか魚って食べられないので、
「俺、海の魚って初めて食べるけど、滅茶滅茶美味しいな!!」
と少年少女が大喜びしてた。
朝食が済み、一休みしてる間にチャーターした馬車が到着した。
オスカーさんに
「では、いってきます。また夕方までには戻れると思いますので、その間宜しくお願い致します。」
と後を任せ、宿舎を後にする。
馬車だが、人数が多いので、乗合馬車タイプの2台に分乗し、北門へと向かう。
朝だが、結構人が歩いていたり、店の準備をしたりと、メインストリートは賑やかである。
しかし昨日、このメインストリートの数ブロック奥に、スラムがある事を知り、複雑な心境ではある。
そんな事を考えている間に、北門へと到着。
北門の通用口から出る際、衛兵に陛下からの空港建設許可の書類を見せ、今からちょっと滑走路作るけど、驚かないようにね! と事前報告をしておく。
北門から200m、街道から100m外れた場所を綺麗に整地し、トリスターの空港と同じく、400m×200mの長方形の土台をガチガチのフラットな物にする。
雨対策で、表面を細かくざらざらにし、浅く賽の目状の溝を入れる事も忘れない。
建物はあとで、トリスターと同じ物を作って持って来る予定だ。
フェリンシアとヨーコさん以外のみんなは・・・(気付いてなかったが、北門の衛兵や城壁の上の監視兵も)余りの早業に、ポカンとしてしまっていた。
一応完成した飛行場に、2号機を出して、強制再起動させ、みんなを呼ぶ。
シートに座らせ、シートベルトの着用法を教え、後部ハッチを閉めて、朝の王都を発進した。
街道を王都へと向かう商人のキャラバンが、熱い視線を投げかけていた。
高度を取りつつ、トリスターに進路を向け一気に上空へ駆け上がり、巡航速度でオートパイロットON。
あとは2時間強は暇な時間となる。
到着予定は10時半前後の予定。
ヨーコさんは、トリスターに連絡し、出発した事を報告していた。
初飛行組は、凄いスピードで遠ざかって行く王都と、周りの風景に、大興奮していた。
時刻は9時50分・・・海渡自身はお腹は減ってなかったのだが、作ってた時思ってた程、朝食と時間が離れなかった事もあって迷った挙句、
取り合えず、配ってみる事にした。カツサンドを。
飲み物とカツサンドの箱を全員に渡して、
「よければ軽食をどうぞ!」
と。
ところが、意外な事に、全員興奮してはしゃぎ過ぎたのか? 全員喜んで食べてくれた。
最初の一口食べたら、後は手が止まらず、
「これは何ですか! こんなサンドイッチ食べた事がありません。」
や
「これ、売れるんじゃないですかね?」
と大絶賛してくれた。
ふっふっふ・・・じゃあどっかで販売するかな?
フェリンシアは、2箱目を要求していた。
全員が完食して、余韻に浸っている頃、目前に迫るトリスターへと高度を下げ始める。
滑走路へ着陸し、後部ハッチから全員降りる。
2号機を格納し、南門へから入って、徒歩で屋敷へと向かう。
王都組は、初めてのトリスターであったが、辺境都市と言う田舎のイメージを連想していた。
しかし、目にしたトリスターは、王都と比べても見劣りしない程に、栄えており、あまりの活気に驚いていた。
うん、俺も驚いたw なんか人増えてるよね?
店舗の前に辿り着くと・・・少し行列出来てるし・・・
王都組は、その客の多さと行列に少し引き攣っていたw
「わぁ・・・これ、王都に行く前より、絶対にお客さん増えてるよね?」
とヨーコさんに聞いて見ると、
「ええ、確実に増えてますよ。」
と呟いていた。
店舗の混雑を後目にしつつ、屋敷へと入り、後はスタッフに任せた。
王都組は部屋割りを済ませ、早々に制服に着替え、スタッフに連れられて店舗へと消えていった。
フェリンシアとスラム組の12歳未満は託児ルームで子供らと戯れていた。
1時間程休憩の後、出発の予定だったのだが、ヨーコさんのお願いで、2時間に延期。
その間、地下工房の棟梁達の隣で、せっせと増産用のラインをせっせと製作。
そうそう、棟梁達には、頑張ってくれている事へのお礼と、王都土産のお酒を配っておいた。
更に、この作業(店舗・カフェ・宿舎のセットの建設)がまだ暫く続く事と、空港のロビーや格納庫の建設もあるよ? と予告しておいた。
棟梁達は、ニカッっと笑い、
「おう!任せとけ!!」
と心強く胸を叩いていた。
新たに、各製造ラインを5機づつ増やして地下第2工場へと設置して、ダスティンさんへと引き継いだ。
通信機のラインは固有の番号を共有する為、第1工場の既存ラインの真横に置いた。
これで、通信機のラインもかなり楽になる。
だが・・・決定的に問題なのは、付与を行えるスキル持ちの不足だ。
現在8名が魔法陣スタンプを担当しているが、そこが追い付いていない。
逆にスタンプさえ、何とかなれば、後は十分対応できるらしい・・・。
改造してみるかな・・・。
1台を分離して、魔法陣の改造に着手する。
既存のラインの最後に『魔法陣スタンプを押す工程』を魔法陣化してみる・・・
1台試作してみて使えるかをテストするが、上手く付与されていない。
うーん・・・
分解して、魔法陣を確認してみると、魔法陣をスタンプする際の魔力が足りていない感じがする。
なので、魔法陣スタンプ工程だけを、独立した魔石を使ってスタンプする様に改造し、再度テスト。
「おお!!今度は行けた!!!」
『ねえ、知恵子さん、この独立工程で使う魔石だけど、どれくらいの台数スタンプ出来そう?』
と聞くと、
『そうですね・・・ラインの魔石交換時に全交換するぐらいの感じだと思います。要は瞬間最大容量が足りてなかっただけで、最初に一瞬大きな魔力を流せる魔石であれば、問題無いようですね。』
『ああ、なるほど、瞬間的に大電流を流すスパークプラグ的な感じか!』
と理解した。
そこで、既存ラインを含む魔法陣付与が必要なラインを全部自動化に変更していった。
目の下にクマを作っていた、付与係りのスタッフからは、泣いて喜ばれた。
1階に戻り、料理スタッフに、オークカツサンドを味見して貰って、作り方を教え、ソースを分けて上げた。
あと、スラム組の子供に料理スキル持ちが居るので、仕込んであげてね とお願いしておいた。
「任せてください!」
と料理長のアニータさんが、胸を叩いていた。
ちなみに、トリスターの料理スタッフも現在では、かなり増えており、独身で子供の居ない女性・・・キャスティさん(20歳独身)が居たので、王都支店の料理スタッフが出来るまで、出張してくれないかと打診してみた。
すると、即答で
「ええ、大丈夫ですよ。え?今日これからですかww 急ですねw」
と笑いながら了承してくれた。
ああ、これで食事の心配はなくなるな。
そこで、更に1時間出発を後らせ、必要な調理道具をキャスティさんと、急いで調理道具一式や皿類を大量買いしに行く。
場所は、以前何度か雑貨を爆買いしにいった、服屋のおばちゃんお勧めの日用雑貨の店。大量の皿やフォークやスプーン類、鍋やフライパン~タオルに至るまで、「店の在庫が・・・」と言われる程に買い揃えて来たw
屋敷に戻り、入れ替わりにヘルプに入るスタッフと合流し、とんぼ返りで王都へ向かった。
やはり初めて乗る飛行機に、スタッフ達は大興奮であった。
王都に着陸し、北門から入って、馬車をチャーターして王都支店へと向かって、やっと今日のスケジュールを達成。
後は、オスカーさん、ヨーコさんに任せ、久々にアルマー別邸へと戻って一息ついたのだった。
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