第143話


「どうせ、向うは殺す気でやってくるだろうから、手も足も出せないって事を思い知らせて、思い上がってた事を心底後悔させてやれ!なんなら、ヤッちゃっても良いから。」

と心強いお言葉をアルマーさんから頂きました。

同じ様な事は、女神様からも言われているし、ここは徹底的に格の違いを見せつけるとしましょう。



訓練場の真ん中に20m離れて立つ、海渡とドラーツ公爵。


王様が拡声魔道具で、

「これより、ドラーツ公爵とカイト君の決闘を行う。 カイト君は、決闘のルールを知らないだろうから、予め説明する。

まず、20m離れた位置から開始し、相手が死亡又は降参をするまでとする。決闘を行う本人以外の手助けや補助等が発覚した場合は、失格とし負けとする。

手助けをした者も処罰の対象とする。

魔道具等、自分の魔法を補助する物に関しては、自分自身が身につけている物のみ使用して良い。

開始前に、発動したり、罠を仕掛けている事が発覚した場合も失格とする。

以上だが、何か質問はあるかね?」と王様。


なので、海渡は手を上げ、

「質問とお願いがあります。」

と風魔法の拡声を使って、全体に届く声で言う。


「まず、事前に罠等と置いてはダメと聞きましたが、この訓練場は罠だらけですよね? これは良いでしょうかね?」

と、身体強化と身体加速を発動して、瞬時に罠の個所に移動し、地面を掘り起こして、出して行く。

「こんな魔道具が沢山仕込んでありましたけど? 全部で20か所ですね・・・。 あと、この方とこの方と・・・」

と、観客席の貴族11名を闇魔法の拘束具で、ドンドン拘束していき、最後は従者と思しき5名を、同じく闇魔法で拘束し、引きずり出して来る。


「今拘束した方は、どうやら良からぬ意図を持っていらっしゃるようなので、何も画策しないように、予め拘束させてください。

じゃないと、頼んでもないのに、勝手にドラーツ公爵へ攻撃して、私が失格にさせられる可能性もありますからね。」

と悪い笑みを浮かべつつ、お願いする。


それを見たドラーツ公爵は驚きと、見破られた事に対する悔しさか、顔を真っ赤にして唸っていた。


「うむ・・・そんなに事前に罠が仕掛けられていたのか・・・ 本来なら、既に失格だが・・・、まあ結果は変わらないだろう。では開始の合図と共に戦闘を開始してくれ。」

と王様。


そして、開始のドラが叩かれた。


「さ、どうぞー♪ 初手を待ってあげますよwww」

と煽る海渡。


「おのれ・・・ガキ風情が・・・ 目にものをみせてやる。」

と杖を片手に持ち、

「赤き大火の炎で敵を殲滅せよ、フレイムサークル!!!!」

とか詠唱を始めた。


すると、海渡の周囲に高さ4m、幅2mの炎が燃え広がった。

「はっはっは!!! 見たか小僧! 焼け苦しんで後悔するがよい!!!」

とドラーツ公爵。


会場の観客(貴族やその子弟)から、「ああーー」とか「きゃぁーー」とか悲鳴のような声を上げている。



30秒間燃え盛った炎が消えた時、


光魔法のシールドの中で、海渡は、テーブルと椅子を出して、お茶を飲んでいた。


アングリと口を開けているドラーツ公爵・・・

王様をはじめ、他の観客も同様。


アルマーさんとフェリンシアだけが、爆笑中www 会場に響いてる。



海渡が、

「あ、焚き火はもう終わったようですね。」

と椅子から立ち上がり、サクッとテーブル椅子を収納する。


「で、今の焚き火が初手で悔いはないですかね? 

では、満足したでしょうから、今度はこちらから行かせていただきますね?」

とカップを片手に


30本のアイスランスを生成し、一気に発射。

発射と同時に「バシュバシュバシュ・・・」と連続着弾音がして、ドラーツ公爵の周囲50㎝の地面を抉って行く。

結果、ドラーツ公爵の周囲には、ドーナツ状に3mの深さで抉られた溝が出来た。


アッと息をのむ観客。

更に、その溝へ、向かって、ファイヤーボール(約直径1m)10発同時に発動し、打ち込んで行く。

アッと言う間に廻りは溶岩の堀が出来上がり、ドラーツ公爵は腰を抜かして震えている。


「ん? まだ降参してませんね。じゃあお遊びはこれくらいにして、絶界の森でワイバーンを倒した魔法でもお見舞いしますかね。」

とほほ笑む海渡。


それを聞いて股間から水気を垂れ流し、震える声で・・・

「た、助けてくれ・・・俺の負けだ・・・」と言うドラーツ公爵。


「え?何か言いましたか? 歓声で聞こえなくて・・・じゃあ、行きますね!」

とわざと超巨大なアイスカッター半径20mを5枚用意して、ドラーツ公爵の周りを取り囲む様に待機させる。


「降参する!! 俺のまけだーー!」と大声で絶叫するドラーツ公爵。

そこへ、追い打ちをかけるように言う海渡。

「それだけじゃないですよね? 謝る事があるんじゃないですか? 昨日貴方は手下に私とフェリンシアを襲わせましたよね? 違いますか?」


「ああ・・・」

「聞こえませんね?」


「ああ、部下にお前らを襲うように、命令したーー」

と更に絶叫。


そして、海渡は王様をチラリと見ると・・・唖然として固まっていた王様が気付いて再起動。


「この勝負、カイト君の勝ちとする。 尚、ドラーツ公爵は、昨日のカイト君達への襲撃だけでなく、様々な悪事の証拠が提出され、告発されている。どれも明白な犯罪であり、国家反逆罪に該当する物まである。

身分剥奪とドラーツ公爵家は断絶とし、取り調べで余罪を全て明るみに出した後、罰を受けて貰う。 そいつを投獄しろ!」と宣言。

「更に、ドラーツ公爵に従い悪事をしでかしていた貴族も同様である。」

と海渡に拘束されている貴族らを見た。


海渡は、アイスカッターを解き、溶岩を冷却て土魔法で溝を無くし、闇魔法の拘束でドラーツ公爵をす巻きにした。

魂が抜けた様な表情のドラーツ公爵が顔だけ出して真っ黒い芋虫になっていた。



これと同時期に、近衛騎士団率いる、憲兵隊がドラーツ公爵家を強制調査し、数々の証拠と囚われていた女性や女の子を25人救出し、家族、家来を含む全員を捕縛していた。

この後連日、悪事に拘わっていた貴族も次々に捕えられていったのだった。



この決闘の後、再度会見の間に戻り、王様よりの感謝とお褒めのお言葉を頂き、褒美に爵位を と言われた海渡だが・・・

「いえ、せっかくのお心遣いをお断りするのは、不遜に当たるかもしれませんが、こんな年端もいかない子供ですし、領地を治めるなどとても出来ません。

ましてや、私は好きな事をやり、好きな冒険をし、みんなに喜んで貰える様な魔道具や料理を作りたいだけで、そういう形で王国に貢献できればと思っております。

何卒ご容赦くださいませ。また、魔法の理に関しては、別途お教えする事が出来ます。」

と丁寧に頭を下げた。


うーんと、王様は唸りつつも、自由に生きたいと告げる海渡を縛る事で、他の国に逃げられると、取り返しがつかなくなる事もあり、了承した。


先の決闘で、海渡が見せた見えない動き、魔法、洞察力・・・そのどれもが常軌を逸した物だったからである。

事実、この国で海渡を倒せたり、捕まえたり出来る人間を思いつかなかった。

最強と言われる近衛騎士団の団長でさえも、おそらく海渡には届かないと思えた。

もっとも、海渡を害する気も、束縛する気も無かった。この王様、かなり熱狂的に海渡を気に入っていた。

何とか、彼を我が王家の一員に加えられないかな? と思う程に・・・。

しかし、いつも真横にニコニコと居るフェリンシアの存在を見て、まあ余り邪魔になる様な考えをするべきではないな・・・と考えを抑制するのであった。



この日、海渡の名は王都中に広がり、その噂はあっと言う間に王国中に鳴り響いたのであった。

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