第142話


異世界1ヵ月と15日目。


日の出の少し前に、目が覚める。 元の世界のように、冬が近づいて、日の出の時間が遅くなってるのかな?


日課の朝の鍛錬を軽く済ませる。

今日は、ドラーツ公爵に引導を渡す日だ。

昨日は、向こうから手を出してくれたので、心置きなくヤル事が出来る。

「ふっふっふ・・・」と朝から悪い笑みを浮かべる海渡。


この世界では、元の日本の様に、「こちらが争いを拒否すれば、安全だ!」とか、根拠の無い、意味不明の事を言う馬鹿は居ない。

自分がどう思おうと、悪意の向けて害してくる奴らには、力を持って排除するしかない。

海渡が、どんな状況でも、こうして落ち着いてられるのは、それを排除できる自分を作った(女神様が作った?)からである。

まぁ、ただ見た目が、非常に可愛い5歳児と言う事で、全然抑止力を発揮していないのだが・・・。


鍛錬から戻り、朝食をみんなで食べ、アルマーさんと海渡、フェリンシアの3名は、王城へ対決へ。

オスカーさんとヨーコさんは、旧アレスター商会の店舗と屋敷のチェックと、人員確保に動いて貰う事になっている。

ヨーコさんが、昨夜トリスターの方に連絡したところ、特に問題は無いとの事だった。



そして現在、アルマーさんと馬車に乗り、これから御前で行われる三文芝居の最終確認をしながら、王城へと向かっている。


『三文芝居』とは、試合目的でドラーツ公爵を呼び出している訳ではなく、貴族全員を招集している会見の間で、飛行機や通信機の開発の功績や、コーデリア王国との航路確立の命と、塩や砂糖の問題を解決する事に対する、褒賞や権限(全権委任)を与え、更に話を詠唱魔法に向けていき、「ならば、どちらが優れているのか、御前試合を!」と言う流れにするシナリオを指す。



「まあ、あのドラーツ公爵は、プライドが高く、好戦的で不遜な態度の奴だから、少し煽れば、すぐに食って掛かるだろうwwww」

とアルマーさんは笑っていた。



王城へ到着し、会見の間の手前の待合室で、お茶を飲みながら時を待つ。

ドアがノックされ、騎士が迎えに来た。


さあ、いよいよ本番である。


大きな会見の間の扉が開き、赤い絨毯の上をアルマーさんの後ろに着いて、王様の前へと進み、片膝を付いて礼をする。

周りには、多くの貴族が並んでおり、海渡を見て、ヒソヒソと話をしている。


「表をあげよ。アルマー、そこの者が、この度の通信機や飛行機を開発した者か?」

と王様。


「はっ。ここに居る、カイト君がそうでございます。今回の王都まではカイト君の飛行機で、トリスターから約2時間半でやってまいりました。」

とアルマーさんが答えると、周囲の貴族が一層ザワザワとする。


すかさず王様が、

「なんと!2600km離れたトリスターから、たったの2時間半でやって来たと申すか!! それは凄い発明じゃな!」

と、強調する。


「更に、お主から献上された、通信機? あれはどんなに遠くとも瞬時に会話が出来るとの事。これは画期的じゃ。国防から政治まで、あらゆる情報の伝達が、タイムラグ無しに出来るとは・・・。

しかも、こんなに凄い物の開発者が、そこの子供とは。これまで宮廷魔導士は何をやっておったと言わざるを得ないな・・・」

とチラリと宮廷魔導士の長官であるドラーツ公爵を見る。


ドラーツ公爵は顔を真っ赤にして、歯ぎしりをしている。


ドラーツ公爵は心の中で、怒りに震えていた。

『何故、こいつが平然ここにいて、昨日放った手下どもは、誰一人戻って来ないのだ? どいつも、こいつも使えない・・・こうなたら、意地でもあのガキをぶちのめし、あの可愛い子(フェリンシア)を手に入れてやる!!!!』と。


「また、このカイト君の商会が今までより上質の塩と砂糖を適正な価格で販売してくれるようになり、トリスターでは、町に活気が溢れ、犯罪も減り、素晴らしい効果を発揮してくれました。」

とアルマーさん。


「なんと、それは素晴らしい。是非ともこの王都や、その他の貴族の領地でも、販売して欲しい物だな。では、そちらのカイト君の商会へ、褒美として不正塗れで没収された、アレスター商会の店舗や敷地、屋敷を与えるとしよう。是非とも早急に各地で庶民への塩や砂糖の販売を再開してくれ。」

と王様。


「ははっ。ありがたき幸せ。早々の開店に向け、スタッフ一丸となり、努力させて頂きます。 アレスター商会の様に、庶民の生活に必要な塩を、不当に値段を釣り上げる様な『愚行』は決して行いませんので、ご安心ください。」

と海渡。


ここで溜まらずドラーツ公爵が口を挟む。

「何を言う、アレスター商会の何処が不当だったのだ? 必要な儲けを取って何が悪い!」

と叫んだ。


「おや、これは異なことを仰る。 アレスター商会は、手下のチンピラを使い、他の商会が正当な値段で販売している塩に難癖を付け、営業妨害し、違法の限りを尽くしておりましたが?」

と海渡。


更に、

「アレスター商会の話であって、あなた様の事では無いのですが? 何かアレスター商会とご関係が??」

と付け加える。


「ぐぬぬ・・・ 大体、通信機とか空飛ぶ乗り物でトリスターから2時間半とか、嘘くさい。どっかの魔法陣をパクったんじゃないのか? こんな子供に出来てたまるか!」

とドラーツ公爵。


「それは、本当でございます。飛行機の速度ですが、最大速度は、音速、音の伝わるスピードを超える事も可能なのです。まあ安全の為のマージンで音速以下での運用としております。

トリスターから王都までの2600kmでしたら、十分に2時間半で到着致しますよ。 そもそも、この王国の主流である、詠唱魔法とかの考え方が、色々『間違っている』から、いつまでたっても、新しい画期的な発明が無いのではないでしょうかね?」

と火に油を注ぎ、ニヤリと笑う海渡。


「なにお!! 小僧、言って良い事と悪い事があるぞ! 我が家に代々伝わり、日々研究されている、詠唱魔法を愚弄するか!!!」

と火を吐く勢いのドラーツ公爵。


「ほう、詠唱魔法が『間違っている』とな。

これは本当なら、由々しき事だな? のうドラーツ公爵。

もし本当なら、これまで王国と民を代々騙して来た事になる。」

と追い詰める王様。


「ふむ・・・では、口で言うより、お主らで、それを証明したら早いじゃろ。 これより、魔法による試合を両名に申し付ける。」と王様。


キターーー!!

「はい、私は構いませんが、この方相手なら、私はやはり、『手加減』しないとマズイですよね?」と海渡。


「ふざけるな!!! 何が手加減だ!! そこまで言うなら、試合ではなく、決闘で決着をよう。」

とマンマと誘いに乗って来るドラーツ公爵ww


「こちらは全く構いませんが、本気ですよね? ふふふ。」と海渡。


「当然だ!」とドラーツ公爵。


「では、これより訓練場の方で、ドラーツ公爵とカイト君の決闘を執り行うとする。」と王様。


と言う事で、アルマーさんに連れられて、訓練場の方へと場所を移動しながら、

「あんな感じで良かったでしょうか?」

と聞く海渡。


「いやぁ~、予想以上に上出来だよwww」

と悪い笑みを漏らすアルマーさん。


フェリンシアは

「私の出番はあるかな?」

とワクワクしてる。


そうして到着した訓練場は広く、周りをコロセウムの様に、すり鉢状の観客席がある場所でした。


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やっと、念願のAtoKを購入しました。これでIMEの誤変換とはおさらば出来る予定です。但し、書き貯めた分、+50話ぐらいあるので、効果が出るのは200話ぐらいからかなぁ・・・。

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