第141話


「き、君がカイト君かい? 陛下の命で犯人を受け取りに来たのだが?」

と騎士の1人が、顔を引き攣らせながら聞いて来る。


「あ、お手数かけます。はい、私がカイトで、こちらがフェリンシアです。襲われたシーンの記録映像のコピーはこちらに入ってます。」

と水晶記憶体を手渡す。


そう、女神様から情報で、襲撃を予告されていた海渡は、気配を消して自分の周囲を録画する撮影ドローンを作っておいたのだ。


だから、「ドラーツ公爵の命で」とか「手下」と言うワードを引き出したかったのである。

「証拠は多い方が面白いからねw」と。


「あ、申し遅れた。私は近衛騎士団の第一隊の隊長をやっている、ファーリング・ステファンと申します。」

と改めて、騎士の1人が自己紹介し、他の2名の騎士は衛兵に指示を飛ばしていた。


そして、周囲にバレない様に、男達は、衛兵のロープで拘束し直され、麻袋に入れられて、運ばれていった。


海渡は、テーブルと椅子を収納し、

「ありがとうございました。助かりました。(自分で運ばなくて済んで)」

と改めて近衛騎士にお礼を言って別れ、アルマー別邸へと戻るのであった。


一応アルマーさんには、引き渡しが完了した事も連絡済みである。


海渡達から遅れる事、2時間ぐらいで、アルマーさん、オスカーさん、ヨーコさんの3名が戻って来た。

「お疲れ様です。」

と笑顔で出迎える海渡。


フェリンシアは・・・帰宅するとそのまま3人姉妹に捕獲されて、現在一緒に部屋で遊んでいる。


若干疲れた顔の3人に、ハチミツ水を手渡しつつ、どういう事になったか報告を聞く。

「明日の朝、ドラーツ公爵とカイト君とで、魔法の御前試合をやって貰う事となった。君の魔法が桁違いな事を、陛下と重鎮、そして格の違いをドラーツ公爵に見せてやってくれ!」

とアルマーさん。


ほぼ以前に打ち合わせた内容なので、

「判りました。」

と了承する海渡。


アルマーさんと別れ、オスカーさんとヨーコさんから、商談報告を聞く事となった。

「お疲れ様でした。すみませんね、通信機以外の値段設定覚えて無かったし、あまりそういう事に慣れてないので、丸投げしちゃって。」

と素直に頭を下げる。


「あ、いえいえ、元々それが私の仕事ですし、お陰様でなかなか出来ない体験と王宮に物を納めると言う、名誉な体験をさせて頂いて、こちらも感謝しております。」

と微笑むオスカーさん。


で、どんな取引内容になったか?と言うと、今回こちらに持って来ている品の殆どを、王宮の方で「是非」引き取りたいと言う事になったらしい。

塩や砂糖などの消耗品の定期的な注文と、今回の納品で足りなかった製品のバックオーダーも頂いたらしい。


王宮からの注文と言う事で、多少は値引きをしたが、それでもトンデモナイ額の取引だそうだ。納期に関しては王都その他の支店開設もあるから、余裕を見た内容となっているらしい。

特に凄いのは、やはり魔力リンク通信機ですよとの事。


で、今度はヨーコさんの報告を聞く。

王国中の旧アレスター商会の店舗や倉庫や屋敷や土地は、そのまま『さえじま商会』の方に譲渡となり、書類も貰った。


取り合えず、王都だけでも早急に開店するようにとの事。

尚、アレスター商会の店舗数であるが・・・王国内で73都市にあるらしい。出張所レベルの小規模店舗は更に121町村。

「マジか・・・」と崩れる海渡。

苦笑いのヨーコさん。オスカーさんも引き攣っている。

「これほど急速に人員不足が露見するとはなぁ・・・。」と自分が蒔いた種ではあるものの、うーんと唸ってしまう。


そこで、2人に提案してみる。

「まず、人手不足である事は間違いないが、一番不足しているのは、幹部候補や店長を任せられる人材。

ここ王都で多少幹部候補や店長を任せられる人材を確保しよう。

で、各店舗だが、トリスターの店舗の様に、全て各支店で生産までやっていると、設備や作業員の熟練が確実に無理となる。

なので、生産は全てトリスターで行い、人材を育てつつ量産していく。

集中生産する事で、生産部門のチーフはこのままでもいける。人員を増やしても、今のメンバーが慣れるまでサポート出来る。

よって、トリスターの地下工房を生産工場にし、地下工房は更に深層へ引っ越す。

さて、トリスターでの集中生産となった場合だが、品物の輸送の問題が出て来る。

それを一挙に解決しようと思う。

現在のマジック倉庫を各店舗で共有する様に改造する。名付けて、時空共有倉庫。

各店舗は販売部門のみで当面は構成する。

とにかく、当面新しくオープンする場所は、最低限の岩塩と砂糖の販売に絞っても良い。」

と言うと、


「おお、それなら確保すべき人員の問題も格段に減る事になりますね。と言う事は、各支店は店長を派遣か、現地で確保さえすれば何とかなりそうです。」

とオスカーさん。


「あと、店舗だが、当面は今の『嫌だけど』旧アレスター商会の店舗に、『さえじま商会』の看板を出して使う。

で、準備が整い次第、トリスターで作った店舗にゴッソリ入れ替える。一夜でw」

と言うと、


唖然とした顔で見られたが、

「ああ、でもカイト様なら、不可能でも無い気がしますねwww」

と笑い出す2人。


「ああ、なんか少し出来そう(店舗開設の)な希望が湧いてきましたw」

とヨーコさん。


「王都でも、孤児院とかに声をかければ、読み書き計算が最低限出来る人材も確保出来るだろう。」

と・・・ついでに教会で女神様に聞いてみよう。


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