第118話

「ささ、どうぞこちらに。狭いので頭に気を付けて下さいね。」

と後部ハッチを開けて手招きをする。


 復活した青い顔のドロスさんが、

「いや、俺・・・ちょっと高い所は・・・」

と呟くも、


「おお!これは楽しみだ!!! 何ゴチャゴチャ言ってるんだい、さあ行くよ!!」

と強引にドロスさんを引っ張り込むサチーさん。


 2人を座らせ、シートベルトの締め方、外し方を教え、後部ハッチを閉める。


 フェリンシアは既に後部座席で、シートベルトを締めて準備万端。


 メインキーを差し込み、起動開始。


 ゆっくりと、機体が浮き上がり、上空30mから徐々に加速しながら上昇し、高度100mで旋回して北へと進路を取る。


 そして現在高度300mを時速1070km スロットル90%で巡行中、アッと言う間にトリスター上空を通り過ぎ、現在丁度ユグドラシルを通過した。


 後ろの席のサチーさんは大興奮。

 ドロスさんも少し慣れたようで、窓の外の景色を見始めている。


「なあ、これ、うちにも売ってくれないか!!」

とサチーさん。


 うーん、そこら辺は政治が絡みそうだしなぁ・・・。

「売るのはちょっと、即答出来ませんが・・・」

と構想の説明を始める。


 現在、ワンスロット王国王都⇔トリスター⇔コーデリア王国王都 の定期便や輸送を行う事を考えていて、アルマーさんの許可は取った。

 今度、ワンスロット王国王都で王様に打診する予定である事。 なのでコーデリア王国側の窓口になりませんか?と。

 トリスターは、先ほどの南門の城壁の外に空港を作ります。コーデリア側として、一口乗りませんか? と言う事を打診する。


 サチーさんは、即決了承し、ドロスさんの方を見て

「と言う事なんだけど、どうよ?」

と聞く。


 ドロスさんは、ちょっと考えつつ、

「悪くない。と言うか、非常にメリットの大きい話だと思う。帰ったら父上に相談してみる。」

との事。


 父上?? ドロスさんのお父さんは、何か影響力あるのかな?

「まあ、前向きに宜しくお願い致しますね!」

と上機嫌の海渡。


 既に絶界の森を越え、遥か向うに王都が見えてきた。

「あ、王都見えましたね。」

と後部座席へ伝達。


「もうか! 普通に考えると、森を迂回して数か月かけてやっと辿り着く距離なのだが・・・。

 いやぁ本当にこれは・・・飛行機は素晴らしいな!」

とサチーさん。


 飛行機は徐々に速度と高度を落とし、南門の手前300mぐらいに着陸。

 飛行機を収納し、門へと歩く。


 南門の衛兵は騒いでいたが、ドロスさんを確認して、

「あ、ドロス様・・・先ほどのアレは?」

と聞いて来る。

 向うの方へ引っ込んで、何やら説明していた。


 そして無事に、王都へと入る。

 場内に入った所で、うなぎ屋の場所と冒険者ギルドの場所を教えて貰い、解散する。

 今夜、こっちに泊まるなら、うちに泊まってけ! とサチーさんに確約させられ、うなぎ屋を目指す。


 うなぎ屋に近づいたのか、懐かしい素晴らしい匂いが胃袋と本能を刺激する。

 嗅覚の鋭いフェリンシアは、既にもっと前から、匂いにロックオン状態だったようで、涎が凄い事になっていたww

 せっかくの美少女なのにwww


 店内に入り、特上のうな重を2個注文した。


 お持ち帰りを聞いてみると、

「あるよ!」と不愛想なオヤジ(鉢巻をした角刈りのエルフ)がウチワで火力を調節しながら、答えた。


 いやぁ~、本当にエルフのイメージ変わるわぁwww

 ここのエルフって好きだなww と女神様へGJを送る海渡。


 運ばれて来たうな重は・・・もう天国でした。


 一口でうな重に心を奪われる2人は速攻で完食。

 いや、予想はしてたけど、日本で食べたウナギよりも、各段に肉厚で濃厚。

 これで旬じゃないとは、本当に驚きだ。


 フェリンシアが食べたそうにしてたので、フェリンシアの分を更に追加注文。

 持ち帰りは何個まで大丈夫かを聞くと、時間くれるなら、30個との事で、早速注文。

 待ってる間にが食べてるのを見て、結局海渡もお替りを注文。フェリンシアも・・・


「おめーら、良く食うなぁ~ww」

とオヤジが笑い。


「だって、美味しいんだもんw もうこの匂いだけでご飯食べられますよw」

と言うと、


「そうか!」

とオヤジも笑ってた。



 お土産30個のうな重を受け取り、冒険者ギルトへと向かう。

 ちなみに、この冒険者ギルトが全世界の本部となる。


 ギルドの建物は本部だけあって、相当に大きく立派で、4階建ての石造りだった。


「おお、流石に本部は違うねぇ~」

とドアを開けて中に入ると、サイズこそ違え、中身のレイアウトも雰囲気もトリスターと同じだった。


 中に入ると、一斉に視線が絡んで来る。


 カウンターの受付嬢が、

「坊やどうしたの?」

と聞いて来るので、


「塩湖の『ガチコンブ』の討伐を受けようと思ってまして、その情報を貰いに来ました。 あ、こちらがギルドカードです。」

と、カードを渡す。フェリンシアも取り出して渡す。


 おねーさん固まる。

 しかし、流石は本部の受付嬢、すぐに応接室へと通され、話を聞く事となった。


 下手なテンプレが無くてホッとする海渡。

「カイトさん、フェリンシアさん、あらためて、初めまして。私はギルド本部の受付をやっています、メリンダと申します。

 史上初のSSSランクの方がこんなに可愛いとは、驚きましたw」


「初めまして。カイトです。こちらはフェリンシア。ワンスロット王国王都のトリスターを拠点としてます。 

 で、塩湖の『ガチコンブ』ですが、どこら辺に行けば良いでしょうか? 結構大きな湖のようですが。情報をお願いします。」

とお願いした。


「『ガチコンブ』ですが、年々数が増えてまして、養殖の方にも被害が増えて来ていて、困ってます。常設依頼で出してますが、

 本体の殆どが海面下にあるので、なかなか有効的な攻撃が出来ず、年に何人かの冒険者も亡くなってまして・・・。」


「ちなみに、あまり動きは廻らなくて、魚を巻き付けて溶かして食べると聞いてますが、どういう攻撃をかけ、どういう事で冒険者は亡くなったのか判りますか?」

と聞くと、


「海上から船に乗って、付近に行き、海面下へ銛とかで攻撃を仕掛け、ロープで引っ張ろうとして、逆に海中に引っ張られて食べられるとか、

 あとは、上位種の『ギガ・ガチコンブ』になると、体の表皮を飛ばして来るようです。」

 だそうで・・・。


「『ガチコンブ』は大体、自分の全長と同じ深さの海底に根付いてますので、沖へ行く程大きな個体となるようです。

 特に被害や目撃報告のあるのは、養殖の拠点となっている、サクラと言う漁港沖ですね。」

と言う事で、


「じゃあ、サクラに行ってみます。地図で場所判りますかね? あと、サクラに宿とかは?」

と聞くと、


「宿はあまり大した物はないですが、何軒かあります。地図は、こちらを見て下さい。一応、現地にも、ギルドの出張所はありますが、連絡員が居るだけなので、何かあれば、こちらの方へお願いします。」

と地図を広げ、サクラの位置を指さして、ここですね。と。


 情報の礼を言って、ギルドを後にする。


 歩きながら、

「ねえ、フェリンシア フェリンシアって泳げる?」

と聞くと、プルプル震えだした・・・。


「え?? 泳げないの?」

と聞くと、コクコクと頷く。


「水とか深いと怖い?」

と聞くと頷く。


「あれ?でも風呂で泳いでなかった?」

と聞くと、足が付かない所で底が暗いのが怖いそうだ。

 風呂は気持ち良いから大丈夫 との事。


 なんか小さい頃に魚を取ろうと川に入ったら、深くて流されてしまったそうでして・・・それ以来深いのはトラウマらしい。


「そうだったんだ・・・ じゃあ、今回は俺メインかな」

と方法を検討するのであった。


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