第117話
さて、時刻は少し戻って・・・
海渡がアルマーさんを乗せて飛び立った直後、突然風が吹き荒れ、窓と言う窓を揺らし、館の者は全員庭に注目する。
ある者は、ビックリして腰を抜かし、ある者は騒ぎ立て、ある者は冷静に胴体に描かれた、カイト印を見て誰の仕業かを理解して微笑み・・・まあ、ぶっちゃけカオスだった。
そのカオス根源は、館の上空を飛び越え、町の上空を進み始めた頃、民衆へと伝染する。
まあ、この騒ぎの元凶は、許可を出した領主たるアルマーさんが全て悪い。
一応、お伺いをたてて、許可を得ての事なのだから・・・我慢出来ずに行っちゃえw と許可を出した これが計算だったのか・・・
後に言う・・・ワンスロット王国の辺境伯アルマー・フォン・トリスター39歳「ふっふっふ、あれは計算だよ? インパクトあっただろ?」と。
と言う訳で、突如として現れた、未知の飛行物体に、民衆は軽く?結構重度?にパニクっていた。
カイト印を発見して、「ああ、あいつの仕業かw」思ったのは5%に過ぎなかった。
そんなパニックの中を、アレスター商会のトリスター支店へ強制家宅捜査へ向かう一行の指揮を取っていた騎士団長のサナトは、このパニックの間にやっちゃえ!と冷静にアレスター商会へ入り込み、パニックで殆ど抵抗されないままに、見事に書類(悪事の証拠)の山をGetしたのだった。
サナトだけは、「ナイス・アシストです♪」と喜んでいたが。
館に再び着陸する前、北門の城壁の監視兵が、こちらに近づく飛行物体に軽く騒いだが、望遠鏡で覗くその先に海渡の姿を発見し、騒動は収束した。
着陸した後、海渡とフェリンシアは、颯爽と自分らの屋敷へと戻ったが、館に戻ったアルマーさんは、奥様に耳を引っ張られ、連れられ、部屋から暫く出てこなかった。アルマーさん、ドンマイ♪
海渡が屋敷に戻ったのは丁度10時59分。
町の騒ぎはこちらまで伝わったが、「ああ、カイト様ですねw」とみなスルーしてくれていた。
ドロスさんとサチーさんはまだ来てなかった。
海渡は、ヨーコさんを探し、南門の横を開拓して、飛行場を作成して良いと言う許可が下りた事を話す。
将来的には、ワンスロット王国王都⇔トリスター⇔コーデリア王国王都 の定期便や輸送を行い、トリスターはコーデリア王国王都の貿易の窓口となる事を告げた。
棟梁、喜んでくれるかな? と。
で、本日はあの飛行機でドロスさんとサチーさんを送って行く予定であると伝えた。
打ち合わせがあるかも知れないので、帰りは明日になるかもしれないと。
「了解しました。頑張って来て下さい!」
とほほ笑んでいた。
11時30分頃、やっとドロスさんとサチーさんがやって来た。
海渡の本来の予定では、昼食はあっちでラーメン? いや、他の食べ物? とワクワクしていたのだが、時間的に既に昼時なので、こちらで食べてからの出発となってしまった。
食べながら、2人に質問する
「そう言えば、コーデリア王国には、カレーライスとかってのはありますか?」
と頭の中で色々食べたいメニュー名を聞き始める。
「かれーらいす?? 聞いた事ないな。どんな食べ物だ?」
と聞き返すサチーさん。
カレーライスを説明すると・・・
「うーん、そのかれーらいすとやらかは判らないけど、サルド共和国の方はスパイスの効いた料理が多いと聞いてる。もしかすると、かれーらいす とやらもあるかもな。」
ほう!サルド共和国か・・・一度行ってみるかな。
「なるほど、サルド共和国ですか。時間出来たら行ってみたいですね。じゃあ、『うなぎの蒲焼』とか『うな重』とかって、料理ありますか?」
と聞くと、
「おお、それはあるぞ! まあ旬は夏なんだが、今ならまだうなぎが取れるからギリギリ食べられるんじゃないか? 冬になると食べられなくなるからな・・・。」
と嬉しい情報。
「そうですか! じゃあ、今日の夕食は『うな重』にしたいなww いやぁ~楽しみだなぁw」
と大はしゃぎの海渡。
まあこの世界のウナギなら、きっと予想の更に上を行く美味しさなんだろうな と頭と胃袋はウナギモードに入る。
フェリンシアも「うな重!?」と海渡が興奮する食べ物に興味深々。
「もしかして、ウナギも塩湖で捕れるんですか?」
と聞くと、
「いや、あれは川でしか捕れないな。」
との事。ふむふむ。
「ああ、そうだ、塩湖で思い出した! ちょっと聞きたい事あったんですが、塩湖に『ガチコンブ』が居ると聞いたんですが」
と飛行機作りに必要な事を聞く。
すると、ドロスさんが、
「ああ『ガチコンブ』か、居るな。あれは本当に厄介な奴だよ。」
と口を挟む。
「魚食うって聞きましたが、養殖に影響出るんじゃないですか?」
と聞くと、
「ああ、冒険者ギルドでも、常に討伐依頼が出てるな。 ただ相手が水中に住む海藻の魔物だから討伐が困難なんだよな。」と。
更に詳しく聞くと、大体全長10mで大きい個体になると、20m級も居る。
海底の岩に根付いており、流れに身を漂わせながら、魚の好む匂い?を撒いて、近づいた魚に巻き付いて、溶かして食べるらしい。
また、海底に根付いては居るが、稀にユックリと移動はするらしい。
海藻と言うか植物系だけに太陽光も必要らしく、葉先と言うか体の先端が丁度海面ギリギリに出てる感じなので、居場所は判る。
だが、海上から攻撃を仕掛けると、すぐに引っ込むので、有効な打撃を与えられないらしい。
その為、年に数体ぐらいしか討伐されず、繁殖力は強くないが、徐々に増えつつある との事だった。
ちなみに、討伐報酬は、難易度が高い為、高額らしい。
ほうほう! これは遠征討伐もアリなんじゃないかな。
市場に出回っているなら、手っ取り早く購入も考えるのだが、年に数体程度だと厳しいよね。
更に高額報酬も付いて来るって事だし、真剣に討伐方法考えよう。
「なるほど、有益な話ありがとうございます。そろそろ食べ終わった事ですし、行きましょうかね。ちょっとスタッフに連絡事項してきます。」
と席を立ち、ヨーコさんに 飛行機に必要なので、送ったついでに『ガチコンブ』を討伐したい。2,3日留守にしても良いかを聞く。
ヨーコさんは、ちょっと考え込みつつ、
「流石にこの時期に3日はちょっと厳しいので『なるはや』でお帰り下さい。」
とお願いされた。
と言う事で、フェリンシアも混ぜた4名で南門の外に出る。
木の陰に行かない海渡に、
「あれ?あっちの木の陰に行かなくて良いのか?」
と疑問を投げかけるドロスさん。
海渡はニヤリと笑い、
「ええ、一応先ほど領主様から色々許可を頂いたのでね、今回は別の手段で送る事になりましたw」
と軽く返し、スタスタと街道から草原の方へと進む。
城壁と街道から十分な距離を取って、マップで周囲に人が居ない事を確認してから、飛行機を取り出す。
突然出て来た予想外に大きな物体に
「「おおおお」」と驚く2人。
「先日軽く話をした、もう1つの交通手段のプロトタイプが完成したので、こちらでお送りします。」
と説明。
「これはさっき町の上を飛んでいた、あれか!」
と驚くサチーさん。
「・・・」
ちょっと青い顔をして固まるドロスさん。
「さあ、コーデリア王国の王都まで、快適な空の旅を楽しみましょう!」
と自信満々に手を広げる海渡であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます