第116話

 また来ますね!と手を振りつつ、教会から領主様の館へと向かう。

残念ながら、屋台への寄り道は、後回しだ。


 領主館に辿り着くと、門番のおじさんに挨拶て、アルマーさんへの面会をお願いする。


 待たされる事もなく、すぐに書斎に通され、

「いやぁ~ 昨日は面白かったなw」

とアルマーさん。


「おはようございます。耳寄りな情報とお知らせしたい事があってきました。」


「ほう、その耳よりな情報とは?」

と言うので、順を追って説明。


 まず、例の工作員は闇ギルドの者で、ドラーツ公爵とデニッチが依頼して首謀者は奴らと言う事。

 デニッチは非合法な手段で行った悪事の証拠の書類が、まだアレスター商会トリスター支店のデニッチの書斎の本棚の裏の隠し部屋に置いてあ事。

 それがあれば、デニッチは確実に奴らは極刑 ドラーツ公爵を失脚どころか投獄出来る。

 証拠隠滅をされる前に、押収してくれ。と。


「おお、それは凄い情報じゃないか! すぐに向かわせる!! おい、誰か!」

と人を呼んで、騎士団長のサナトさんを呼び、すぐに押収に向かう様に指示した。


「しかしカイト君は、どうやってその情報を?」

とアルマーさんが、不思議そうにしてた。


「まあ、その件はそれとして・・・お知らせした事があるのですが、ここじゃあ無理なので、ちょっと庭まで付き合っていただけませんか?」

とニヤリと笑いながら、お願いする。


 すると、アルマーさんは

「ん?もしかして? よし、行こう!」

とすぐに書斎を飛び出す。


 3人で庭に出て、

「まだプロトタイプなのですが、テストはOKでした。」

と目の前に飛行機を取り出す。


「おおお!! これか!!!!!」とアルマーさんが叫ぶ。


「ええ、これです。」と海渡がニヤリと笑う。


「カイト君、これ、乗れるのかい?」


「プロトタイプなので狭いですが乗れますよ。」

と後部ハッチを開ける。


「ちょっと、乗ってみます?」

と聞くと。


「そりゃあ、乗るさ!!!」

と答える。


そこで、城内で有る事を思い出し、慌てて確認する海渡。


「ここから、飛び立っても大丈夫ですかね?」



「うむ、問題ないw だって俺が領主だもんw」

と即答。


「じゃあ、2番目の列の席にどうぞ。狭いので気を付けてくださいね。」

と席へ誘導。

 フェリンシアは、聞かずともその隣へ座る。

 2人にシートベルトの締め方を教え、後部ハッチを閉めてコクピットへと座る。


 メインキーを差し込んで、魔道具のメインスイッチを入れる。

 重力制御ON、フルフラップ、エンジン角度90°シールドON、エアコンON・・・


「カイト行きます!」

と宣言し、スロットルを徐々に開ける・・・


 機体はフワリを庭の芝生や草木を揺らす。


「おお、浮いたぞ!」

と喜ぶアルマーさん。


「ああ、飛んだw」

とフェリンシア。


 機体はゆっくり上昇し、現在高度40m。


「少し遊覧飛行しますか?」

と聞くと、


「ああ、やってくれwww」

とアルマーさん。


 高度50mでエンジンを徐々に前に傾け、45°でフラップを徐々に上げる。

 館を飛び越え、トリスター上空を飛び始める。高度は現在70m、フラップをフラットにし、エンジンも0°にする。

 スピードはグングン上がり、南門を抜けて、絶界の森へと向かう。

 高度100mでスロットル75%にする頃には、絶界の森を眼下にし、更にスピードは上がる。

 現在、時速800km・・・スロットル80%で時速900km


『知恵子さん、機体の状態はどう? 昨日よりスピード出てるみたいなんだけど。』

と聞くと、


『機体もエンジンも問題ありません。重力制御とシールドの恩恵ですね。まだまだいけますよ。』


 との事なので、禁断の100%行ってみました。

『ヤバそうなら、早目に教えてね!』と。


 現在、時速950km・・・

『どう? 大丈夫?』


『はい、音速を越えなければ大丈夫だと思います。』


 現在、時速1070km・・・自主規制でスロットルを90%に下げる。


「アルマー様、このスピードは1時間に1070km進める速度です。あと30分ぐらいすると、コーデリア王国の王都見えてきますよ。」

と言うと、


「ああ、それは流石にまずそうだな。 取り合えず引き返してくれるか。」

との事で、Uターン。


 機体も安定してて、問題無し。

「しかし、凄いな、1時間ぐらいでコーデリア王国の王都に辿りつく計算か。2ヵ月前では考えられない話だなww」と大笑い。


「それで幾つか提案なのですが、飛行場を作りませんか? と言うか、作らせてくれませんか? 南門の外の空き地を開拓させて貰えませんか?

 それで、王都と、コーデリア王国の王都の定期運航や輸送をして、コーデリア王国との交易の正式な玄関になれば、かなり面白い事になると思おうのですよ。

 今回のオープンでは、コーデリア王国のロデム商会の会長、サチー・ロデムもお見えになっていて、爆買いされていきました。

 本日、お送りする約束になっておりまして、11時ごろにこられる話になってます。如何でしょうか?」

とプレゼン。


「なるほど、飛行場か、それは面白い。いいぞ、南門の横の場所を好きに開拓して。」

とお墨付きを頂いた。


「ありがとうございます。一応後で許可書をお願い致しますね。 あと、この飛行機でサチーを送って行こうと思ってるんですが、宜しいでしょうか?」

と聞いてみた。


「向う側にも飛行場あった方が便利ですし、どんな物かは乗った方が早いですもんね?」

と付け加えた。


「うむ。良いんじゃないか? で、わが国の王都には何時頃向かう?」

と言うので、来週か再来週で良いかと聞いた。


 飛行機は森を抜ける前にスロットルを50%に下げ、徐々にスピードを落としていた。

 フラップ1/4で時速300km スポイラーをかけ、200kmまで落とす。

 高度も徐々に下げて100mとなった。森を抜け、丘を越え、100mの高度を維持しながら、速度を更に落とし、エンジン角度を45°フルフラップ。

 城壁を越え、領主の館上空へ着く頃には、時速30kmまで落としエンジン角度は80°で鼻息前進状態。やがて90°にして、庭の上をホバリング。

 スロットルは更に絞り、高度を下げる。高度10m、5m少しスロットルを開けて着地のショックを軽減し、着陸。エンジンを切って魔道スイッチのキーを抜く。

 全システム停止を確認し、シートベルトを外して、ハッチの外にでた。


「お疲れ様でした。どうでしたか? 結構速かったでしょ?」

と聞くと。


「これは良い! 是非とも1台欲しいものだ。」

とアルマーさん。


「もうちょっと改良しないと、着陸とかが難しいので、それはもう少し待って下さい。色々機能をつけて、もっと大きなものにする予定なので。」

と答えた。


 まあ、今教えても、着陸は難しいだろうなぁと。

 自動着陸装置とか作らないとね。


「そうか、期待してるぞ!」とアルマーさん。


 機体を収納し、じゃあ、南門の件、衛兵の方達にも通達宜しくお願い致します と領主様の館を後にする。


 時刻は10時40分。タイトなスケジュールだが、何とか間に合ったなw

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る