第111話

 異世界1ヵ月と5日目。


 日の出前の早朝から目が覚めた。

 今日は店のオープンの日と言う事で、心がざわつく。

 結局、昨日の『忘れてる気がする』不安は解消されることなく、朝になってしまった。


 まあ、気にしてもしょうがないので、気分を切り替える事にする。

 朝の鍛錬を終え、早目の朝食を食べ、7時40分には南門を出て、コーデリア王国の南門へと向かう。

 フェリンシアも、今日は色々お手伝いするそうで、お留守番組。


 歩いて、南門へ向かうと、まだ8時前と言うのに、ドロスさんサチーさんが待っていた。

「おはようございます。お早いですね。」

と挨拶すると、


「そりゃあ、楽しみで楽しみで、寝れなかったしww」

とお二人さん。


「じゃあ、早速行きましょうか。付いて来て下さい。」

と2人を木の陰へと誘導し、


「先に、これからの移動手段は、絶対に口外しないで下さい。」

と釘を刺す。


 2人はしっかりと、頷く。


 ゲートを繋ぐ。


「さあ、行きましょう」

と2人を連れてゲートを潜る。


 2人は唖然としつつ、ゲートを抜けた場所をキョロキョロと見回す。


「この先に、トリスターの南門がありますので、そこから中に入ります。」

と伝え、歩いて行く。


 すると、

「今のは? もしかして空間移動なのか!」

とドロスさん。


「うーん、考え方としては、地点と地点を引っ付けたゲートですね。」

と答える。


「なるほど・・・、御伽噺に出て来る類の魔法だな・・・」

と感心するドロスさん。


「これがあれば、商売し放題だな・・・」

と呟くサチーさん。


「ああ、これをあまり商売に使うつもりはないんです。 他の誰でも使える移動手段を開発する予定なので、将来的にはコーデリア王国とワンスロット王国が近くなりますよw」と笑う。


 南門を無事通過して、歩く事20分。屋敷に到着した。


 さあ、どうぞ!と屋敷の応接室へ通し、ついでにダスティンさんも呼んだ。


 ダスティンさんが、応接室に入って来ると、


「「「おーーー!」」」

と声を上げ、感激して抱き合っていた。


 50年振り?

 9時まで3人で話ててもらう事にして、準備状況の確認の為、席を外す。



 現在8時50分。

 庭にテーブル(俺の魔法で)を置いて、食べ物をドンドンマジックバックから出して、揃えて行く。

 ビュッフェ方式にしてもらっている。


 テーブル席も幾つか揃え(俺の魔法で)、なかなか豪勢ななった。


 ステージも作ってあって、一応挨拶をする予定。

 うーん、人前に立つって元の世界の授業以来か。

 えっと、人前で緊張しない御呪いって何だっけ?

『の』の字?書いて飲む? ん?何か違うな・・・。




 招待客をドンドン庭へ案内し、入り口で、挨拶しながらお通しする。


 9時になって、アルマーさんや、主要な方が揃ったので、全員にグラスを配らせ、壇上に登り・・・低すぎるので、更に踏み台つくって登って・・・

「今日はお忙しい所を集まって頂きありがとうございます。また急なご招待にも拘わらす、集まって頂き感謝しております。大した物はありませんが、1時間程、御歓談して頂ければと思います。

 あちらに、色々な軽食等をご用意しておりますので、どうぞご自由に好きな物をお楽しみください。」


 続いて、アルマーさんに乾杯の音頭をお願いした。


「あー、今日は大切な友人であるカイト君の商会がオープンすると言う事で、駆けつけた。これからもカイト君とさえじま商会の発展を祈って、乾杯!」


 乾杯をするが、ワインを飲みつつ、グラスに興味深々のみなさん。


 子供らは、ジュースを飲んで、「「「おいしーー」」」 と喜んでいる。

 そして、徐々に食べ物に食いつき始め、みんな食べては、お替りを楽しんでいる。

 孤児院の子らも、美味しい美味しいと大喜びしている。


 みなさんに挨拶しながら、色々商品や料理について聞かれつつ、「そのうち、横のカフェやレストランもオープンしますので!」と宣伝。


 で、サンドラさんは、久々の再会に感動して泣いていた・・・食べながら。


 デザートを出すと、これまた滅茶滅茶大人気。

 わざと1人1個にしてあるから、お替りは無し。

 後日オープンしますから で済ませる。


 まあ、実際は多めに作ってあるから、子供ら合わせて100名ぐらいのパーティーだし、アイテムボックスには沢山予備あるんだけどね。


 そんなわけで、約1時間のパーティは終わり、プレオープンと言う事で、皆さまを店にご案内。


 店内では初っ端から戦争の様な有様に・・・。

 売り子スタッフが、説明したり、エスカレーターについて聞かれたり、大忙し。


 大の大人が、エスカレーターを何周もするのは、止めなさい! と言いたくなる状況。

 あ、エスカレーターのベルトの色は白から赤のベルベットっぽい色に変更しました。高級感があるらしいので。


 そして・・・飛ぶように買って買って買いまくる招待客達。

 細かい料金設定は、オスカーさん任せで、あまり知らないのだが、あれだけ買うと、相当な金額になる筈なんだがな・・・。


 とにかく、瞬く間に在庫が減っていく。


 パーティー会場の方は撤収し、生産ラインはフル可動中なので、それをストックルームへドンドン運び込む。


 招待客の爆買いタイムが終わり、一般客の入場。招待客は一部を残してホクホクと撤収してくれた。


 町の食堂の店主やなんかが、岩塩や砂糖をドンドン買い、魔道具の調理器具にも興味深々。

 冒険者も多数来ており、テントや簡易結界に食いついていて、仲間と相談しながら購入したりしていた。

 途中、売り子スタッフもローテーションしながら、昼休みを取ったりしていたが、閉店までフル稼働でした。


 サチーさんは、オスカーさんと商談を終え、相当量の買い付けをして行ったらしい。

 まあ、在庫で何とか足りる量ではあったが、運ぶ為に最高容量のマジックバッグを3つ購入し、せっせと詰め込んでいた。

 海渡自身は良く知らなかったのだけど、通貨の両替が出来るらしく、コーデリア王国の硬貨でも支払いはOKなんだって。

 手数料分、高くなるけどね。


 午後2時ぐらいには買い物も終わって、今日はサンドラさんの家に泊まるそうだ。


「明後日ぐらいに送ってね」と言い残し、サチーさん達が去って行った。


 激しい初日が終わり、閉店後、みんなにハチミツ水を飲ませ、初日のご祝儀と言う事で、金一封を配ると、全員が笑顔で大喜び。


 そして夕食。

 みんな、良い顔で、

「いやぁ~、今日の売れ行き凄かったな!」とか

「これが毎日だと、死んじゃうぅ~」とか

「面白いように、みんな商品に驚いていたよw」とか

「俺、ここに雇って貰えて本当に良かった」とか


 そこで、

「まあ、オープン初日は物珍しさもあるから、人は多いかも知れないけど、4日ぐらいしたら、落ち着くと思うから。」

と言っておいた。


 無事オープンに漕ぎ着けて良かったよ。

 みんな、ありがとう!

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