第74話
早いもので、本日で異世界20日目。
トリスターに来て5日目。トリスターに来てから、1日1日が非常に濃いので、バタバタと過ぎて行く。
昨夜は、模型のショーウィンドー用ガラスの試作をして、2度目にやっと満足いく物が出来た。模型ようだったので、薄目に作った事で、余計な苦労をしてしまったよ。
板ガラスを作っている内にハッと気づいたんだけど、この世界って、ガラスのコップやワイングラスって無いんだよね。全部陶器とか木のコップだし。
まあ、そもそもガラスってのが高いし、グラスまで綺麗な純度の透明度の高い物とかは無理らしい。
そこで、我が商会のラインナップに入れると、凄いんじゃね?と思いついた訳ですよ。
朝の鍛錬と朝食も終わり、出発準備は完了し、ちょっと早いけど、早目に敷地の方へ行く事にした。
朝の町を通り、いつもの様に肉串とか買い食いしながら、敷地へと向かう。
こうやって歩きながら見てると、時刻はまだ8時15分ぐらいなんだけど、もう結構な数の店が開いている。
店の業種にもよるみたいだが、冒険者向けの店や、朝食を出している店は殆ど開店している。
逆に飲み屋や服、アクセサリーの店は閉まってる。
あと、ちょっと気になったのは、結構顔色の悪い人がフラフラ歩いているのが目についた。
もしかして、避難民達なんだろうか? 今まで余り目につかなかっただけに、気になるよね。
8時半過ぎに敷地の門に着くと、もう16名が待ち構えていた。
「おはようございます。」
と声をかけると、
「「「「「おはようございます。今日から宜しくお願いします!」」」」
と声を揃えてご挨拶。
門を開け、中に入って漏貰う。
「この敷地の草なんだけど、宜しくお願いしますね。 あと、ざっと15名って言ったけど、もし人員が足りないようなら、同じ条件で増やしても良いから。その時は教えてね。」
とリーダーとサブリーダーに伝えた。
すると、「あのぉ~」とサブリーダーが手を上げる。
「ん?何?」
と聞くと、
「トイレは如何しましょうか?」
と赤い顔をして聞いて来た。
あ・・・考えてなかったよ。
「すみません、そこまで考えてませんでした。 ちょっとみんなで屋敷の方へ来てもらえますか?」
と草を掻き分けて玄関まで移動する。
すると、屋敷を見た子供達が、
「すっげー!」とか「えー?新品?」とか口々に呟いていた。
ふっふっふ、どうだい?綺麗にしたんだよ? と内心ちょっと誇らしげ。
鍵の束でドアを開け、
「この奥にトイレあるんだけど、ちょっと見て貰えるかな?」
と案内する。
そう、昨日はザザッとした間取りの確認と、綺麗になったかの確認ぐらいしかしてなかったからね。
「トイレ、ピカピカですぅ~」と言う声が聞こえるが、問題は使えるのか否かだ。
この世界のトイレは、汲み取り式の所と、完全な魔道具型とに分かれる。
どうやら、この屋敷のトイレは魔道具式っぽいんだが、魔道具だと考えると、魔石の魔力が無くなっていたら、交換が必要だからね。
で、確かめて貰ったら、まだ使えるらしい。
ついでに、色々見てもらって、照明が点くかとかも見てもらった。全箇所照明も付くらしい。
ちょっと、みんなで探検ついでに廻ったんだけど、ここが従業員の部屋になる予定・・・と3階の部屋を見せたら、凄く感激された。
みんな、結構目が❤になってたし。
あと、意外に人気だったのが、2階の風呂!
「すっげーー! 風呂じゃん!!」
と大興奮のエンジ君。女の子よりも奴が食いついて来るとは、意外だった。
気になったので、
「これって、今でも使えるのかな?」
お湯を出してみたら、これも稼働する。
「不思議だな・・・150年ぐらい放置されてた屋敷なのに」
とボソっと言ったら、みんなビックリしてた。
『おそらくですが、昨日時間を巻き戻した際に、魔力が殆ど無くなったと思いますが、時間の巻き戻しと共に失った魔石の魔力もチャージされたんだと思います。』
『ああ、なるほど!それなら合点がいくね。ありがとう知恵子さん』
理由が判ったのでスッキリした。
そこで提案してみた。
「ねえ、みんな、せっかくだから、仕事上がりに、ここでお風呂入って戻ったら? 汗もかくだろうし、スッキリして帰ったらどう?」
と言うと、みんな喜ぶ喜ぶ。
エンジ君なんて、「ホントか! 絶対だぞ!」と。
「よし、みんな頑張ろうぜ!」「「「「おー!」」」」と、気合入ってました。
「じゃあ、怪我とかしないように、気を付けてね。ちゃんと水分とか休憩とかも取るんだよ? また昼頃に顔を出すよ。」
と挨拶して敷地を後にした。
フェリンシアと話し、風呂に入るなら、洗面器とか椅子とか石鹸とかタオルが必要だから、ついでに買っておこう と言う事になった。ついでに、みんなの着替えも買っておくか・・・汚れるだろうし ね!
9時台だとまだ店が開いてなさそうだから、先に約束してるドミニクの店に行く事にした。
「おはようございます!」
と店に入ると、
「おお!坊主!来たか!!!」
とドミニクさんとドリンガさんが待ち構えていた。
「はい、途中経過を聞くのが楽しみで、早目に来ちゃいました。」
と答える。
「そうか、そうか。はっはっは。まあ見てくれよ」
と店の奥から、大人サイズの防具を引っ張り出して来た。
「え!? 試作って聞いてたけど、もう形になってるんですね。」
と驚くと、
ドリンガさんが、
「まあ、最初は試作で、色々やってたんだけど、試しにワイバーンの鱗とミスリルを叩きのばしてみたんじゃよ。これが凄くてな。完全に融着して、一枚の薄い板になってな。で、後は勢いに任せて胸当て部分は完成したんじゃ。」
で、ドミニクさんは、
「で、今度はこっちがせっつかれてのう。ワイバーンの皮を上手く裁断できるコツが判ってな。それで製法してみたんじゃ。」
結果、こんなの出来ました・・・と言う事らしい。
試しに鑑定してみると、
*****************************
ワイバーンとミスリルの胸当て
説明:伝説級の素材で作る伝説級の胸当て。
ミスリルとワイバーンの鱗の融合により、魔力伝道に優れた付与に
最適の素材。
付与次第で、神話級へ昇格する可能性が高い。
*****************************
「わぁ!これ伝説級の一品になってますよ!!! 凄いです!!」
と言うと、
「「マジか!」」と作者本人もビックリしていた。
「と言う事で、まだ、これだけなんじゃが、方法や方向性が決まったので、後は残りを作るのみだ。 まあワシらに任せてくれよ!」
と背中をバシバシ叩かれた。
「また近々に『絶海の森』の偵察依頼が入る予定なので、楽しみにしてますね。 あ、前金の方、まだ足りてますか? あれだったら、追加しますけど?」
と聞くと、
2人はと笑いながら
「ああ、十分足りてるから大丈夫だ。 じゃあ、次は・・・靴とかもあるし、1週間後に来てみてくれ」
と言っていた。
了解と、2人に挨拶して店を出た。
「フェリンシア、と言う事で、みんなのお風呂道具や着替え、あと、キッチン道具や家具とかを見に行こうか。」
「判りました。じゃあ、最初は洋服屋さんかな?」
と以前フェリンシアの洋服を買った店へ向かった。
あそこ、普通の服も置いてあったから、男女16人分を買う事にした。
店に入ると、
「あら、いらっしゃい。また今日も彼女のお洋服?」
とお店のおばちゃんにからかわれる。
「いえ、今日は僕らじゃなくて、12歳の男の子用の服7着、女の子用を9着、それぞれ下着、靴下込みで買いに来ました。」
と言うと少しビックリされた。
出された服を見て
『知恵子さん、このサイズはどう?』と確認しながら、女の子は3サイズをチョイス。
男の子用は2サイズをチョイスし、それぞれ必要な枚数を揃えてもらった。
全部をサイズ毎に袋に詰めて貰い、マジックバックを装ったバックに収納するふりをして、アイテムボックスに収納した。
「また近い内にお世話になります。」
と頭を下げて店を後にする。
次は、日用雑貨の店に行く。(考えたら前回と同じ流れだなw)
店員さんが、またしても覚えてくれていて、
「おや、先日は沢山買ってくれてありがとうね。今日も買い物かい?」と。
「こんにちは。はい。今日も買い物です。洗面器や風呂用の小さい椅子とか、タオルとかを20個づつ欲しくて。あと、石鹸も10個お願いします。お皿も各サイズ20枚づつお願いします。
あ、コップも。あとフォークとナイフとスプーンも20個で。」
「今日も大量だね♪」と喜ぶ店員。
「あと、調理器具も一式買わないと・・・」
と、鍋や寸胴やフライパン、ボウル等々・・・次々に「これ、これ、これも」と指を指して注文。
(少し、マ〇ケルの買い物の気持ちが判る感じww)と元の世界のネタを思い出したりしてた。
大量買いの帰りに、家具やベッドを見て廻る。家具屋さんを発見して、従業員用のベッド一式とキングサイズのマット(フレームは残ってたからね)の値段を聞いて、従業員用は20個以上必要になる事を伝え、聞いてみると、やはり在庫は無いとの事。注文をくれれば、足りない分を作るので2週間ぐらいで揃うと言う事だった。
なので、余裕を見て30個分とキングサイズのマット4個を注文した。前金で半額払い、残りは完成後と言う事で、運び込む場所を教えると、ビックリされた。
あの場所って、やっぱり旧領主館だけに有名なんだね。 俺なんかが使って、本当に良いのかな?と考えてしまう海渡だった。
更に寄り道して、食材を少し買う事にした。
小麦粉や、スパイス等。何処で買おうかと物色してると、嫌な商会を発見してしまったよ。
「『アレスター商会』わぁ・・・ここかぁ」と
『フェリンシア、ここが俺と敵対する予定の商会だよ』
とフェリンシアに伝心で伝える。
『ああ、ここなんですね。 早くみんなの為にも叩き潰したいですね。』
と返事が来る。
前を通り過ぎようとしてると、何やら塩の値段で揉めていた。
「そんな、その金額だと、先週よりも更に上がってるじゃないですか!」
と必死で交渉しているおじさんが居た。
「嫌なら買わなきゃ良いじゃないか。別にこっちは売らなくても困らないんだから。」
と嫌な態度の店員。
(あの商会って、店員もあんな調子なんだ・・・ 潰すのに迷いがなくなって丁度良いな。)と
潰す事で、罪の無い従業員が路頭に迷うんじゃないか?と言う罪悪感がお陰で消えた。
とにかく、1日も早く、塩だけでも開始しないと、このままじゃあダメだな・・・と出来るだけ急ぐ事を考えつつ敷地へと戻るのだった。
今日の買い物だが、支払った金額は全部で金貨3枚ちょっと。日本円で約300万円ぐらいか。
(あ、あのシーンを見ちゃって、頭に血が上って、食材買い忘れたよ・・・)
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