第73話

 さて、領主様の館へ戻って来た海渡は、昼食後部屋に籠り、現在1m×1mの板の上に敷地を1:100にスケールダウンして描き、店のレイアウト等を考えてます。

 勿論、採寸は知恵子さんのマッピングによる計測値を利用しているので、正確です。


「まず、作る店だが商会本部を兼ねた、ショップだな。1階は一般用品フロアで食品等を置く感じかな、2階が冒険者用品や魔道具を置いたフロア?、3階が商会事務所?・・・

 いや、商品数とかもあるからな、余り狭いと後々立て直しになるし、広すぎると賞品スカスカで見栄えが悪いしな・・・」

と頭を悩ませる。


 そもそもだが、店の外観をどうするか? 初っ端で度肝を抜くような何かが欲しいな。ショーウィンドーとか・・・エスカレーターとか!

 現代の日本でもブロックで遊ぶ5歳児は居るだろうが、本気の店舗を考えつつ、店舗の模型を魔法で作る5歳児は、流石に居ないだろう。


 店舗もだが、オープンテラス付きのカフェの方には確実に大きなガラスが必要である。

 この世界のガラスはどうなんだろうか? 町を見かけても、商店でさえ、ガラス張りの所は見た事が無い。看板があるから、何屋さんか判る程度。

 他だと、扉は無く、八百屋さんみたいに吹きっ晒しだし、これから冬なのに大丈夫?と思わず思ってしまう。


 この領主の館でも、大きなガラスって、A4サイズ程度だから、多分大きな1枚物のガラスは無いと思える。

 この際だから、ガラスも大きいのを作ってみるかな。最悪、地下に工場(魔道具)作って自動で生産すれば良いし。

 やる事一杯で楽しいなぁwwww

『知恵子さん、知恵子さんも色々手伝ってね! 頼りにしてるよ!!』


『はい、私は海渡さんの知恵袋ですからw』


(ああ、本当は知恵子さんに実態があれば、本当に助かるだけどなぁ・・・)

『ああ、そうそう、ガラスの事なんだけど、あれって主成分はケイ素だっけ?』


『ケイ酸が主成分で鉱石にはケイ酸塩を多く含む物があり、それを原料にしているようですね。この世界のガラスも同じみたいです。ただ、作る技術的な物で、大きな歪みの無いガラスは作れない為、小さいガラスだけみたいです。

 この世界でもやっている溶融法による生成ですが、一度熱して溶かし、板状に流し込んで冷却するのですが、その際の素早く冷却しないと、結晶化が起きてしまい失敗するみたいですね。』


『ふむふむ・・・つまり、要約すると、ケイ酸塩を多く含む鉱石を集め、ケイ酸を抽出し、それを熱して溶解させて、板状にして素早く冷やすって事で合ってる?』


『はい、そうですね。その認識で合ってます。まあ海渡さんなら、抽出も整形も簡単ですよね。』


『まあ、出来るだろうとは思うけど、これから先、全部を俺1人だけで生産とか、完全に地獄じゃない。それより、生産用の魔道具を作って、誰かを雇ってやって貰う感じが良いと思うんだ。

 多分、店が出来たら、滅茶滅茶問い合わせ来るだろうしw』


『そうですね、全部を1人で作るとなると、何も出来なくなっちゃいますからね。経済の活性化の為にも良いと思います。』

と言う事でした。


 と言う事で、通り側に面した横幅は65mだから丁度真ん中に屋敷への7mの通路を確保するとして、両サイド29mずつになる。店の奥行は25mに合わせて・・・。

 店舗側は両隣に60cmぐらいの余裕を見て店舗の外寸は27.8mか・・・ちょっと半端? まあ良いか。ザックリだが、決めた寸法をメモしながら平行してパーツを作って行く。


 休憩用のスタッフルームや、ストックルームも必要だから1階2階は奥はそれぞれ、スタッフルームとストックルームとトイレを完備する。

 スタッフルームとストックルームとトイレは店の奥側で奥行4m、1階と2回のショーウィンドーは奥行1mぐらいにすると、店内の大きさは、大体27.8m×20mか。


 いや、側面に表から直接3階に上がれる階段(幅2m)も欲しいから、25.8m×20mにするか。そして、極めつけは2階へのエスカレーター まあ作れなかったら、階段でいくか。


 ガラス部分は取り合えず、無しの状態でコツコツと模型を作成する。

 壁や柱部分で上手く剛性を出して、簡単に倒壊しない様に作って行く。

 店舗側は、結局ストックルームとスタッフルームの後ろ(屋敷側)にスタッフ用の階段を設けたので、27.8m×19mに落ち着く。

 1階はL字型にディスプレイ型のケースを設け、高額な商品を展示しつつ販売するか。


 3階への階段側の壁には商品棚を置いて、出口付近でレジ?かな。足りなくなったら、商品棚を真ん中に増やす感じか。


 2階は左側(エスカレーター側)に冒険者向けコーナー、右側(外部階段側)はディスプレーケースを置いた魔道具コーナーかな真ん中もO字型のディスプレイコーナーにするか。


 3階は、事務所と応接室2つと支配人室と給湯室とトイレだな。


 よし、店舗完成! 後はここにガラスを嵌めれば1:100スケール完成だ。


 さて、問題はカフェ側だよね。おしゃれなオープンテラス付きのカフェのイートインと、テイクアウトのスィーツ販売だな。

 2階はレストランにするか。 ウェイトレスは、全員メイドコスで、ボーイは執事コスかな・・・。

 2階のレストランは、ファミレス的な感じで、個室も完備。まあこれはメニューを充実させてからだな。


 大体の間取り模型が完成した。裏の庭部分は取り合えず、暫定でそのまま。


 さて、これを何で建設するか? だよな。

 日本なら、鉄骨コンクリートとかでバリっと建てちゃうだろうけど、異世界だもんね。オープン時期を考えると早目に建築出来ないとダメだしなぁ。

 トレントの素材沢山あるから、あれ丈夫そうだし、使えないかなぁ? 建築方法はもうちょっと、ジックリ検討するか・・・。


 その後の夕食時に、アルマーさんに軽く今日の出来事を話し、明日の予定を伝えた。

 一応軽く実際の店舗模型等が出来た事を伝えると、凄く驚かれた。

 この世界では、建築前に模型を作るって事が無いらしい。


 アルマーさんから、明日の夕食の後に、話していた信頼できる人物を2人、紹介すると伝えられた。

 明日会ってから決めて良いそうだ。

 その時に一緒に模型も見せてくれとの事だった。


 よし、今夜中にショーウィンドーのガラスを試作しちゃおうっと。

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