第75話

 丁度昼時になった頃、敷地に到着したら、みんなで昼食に入る所だった。


 雑草だけど、20%ぐらい終わってる感じ。

 しかもちゃんと言われなくても門から屋敷までの通路を最優先で確保してくれていた。ありがたい。


「おつかれさまー! 通路を確保してくれて、ありがとう!! お陰でここまで楽になったよ。 はい、これお土産。」

と肉串を1本づつ手渡して行く。

 ちゃっかり、フェリンシアもその中に含まれているww


 みんなが食べているのを見ると、サンドイッチ1つ・・・。


「えーーー!育ち盛りにそれは足りないだろ?」

と言うと、


 リコ曰く、

「いえ、孤児院のみんなは昼は無いので、これでも贅沢なんです。」

とほほ笑みながら言われた。


「うーん、それはちょっとキツイな。特に幼い子には厳しいよな。」

と悲しくなってしまった。


 そこで、少し食べながらで良いから話を聞いて貰った。

「今、塩を含め食料の値段が上がっているのはご存知の通りだけど、塩は本当に上がり過ぎなんだよ。人間の体は塩が無いと生きていけなくなる。汗をかくと、塩気が出るから水と一緒に塩も適量取らないとダメなんだよね。

 その塩をとある貴族の商会が牛耳っていて、国全体で値段が上がっているんだよ。

 俺は、それを何とかしたくて、この商会を立ち上げる事を急いでるんだよ。

 塩の値段が下がれば、影響を受けていた食べ物屋さんとかも、値段が下げられるようになるし、味も美味しく出来る筈なんだ。

 だから、今後も何かとお願いする事があるかも知れないけど、宜しくお願いします。」

と頭を下げた。


「あと、食べ終わってからで良いから、こっちに来て、各自の着替えの服を見てみて。サイズはそれぞれに合わせてあるから。風呂上りに使ってね。」

と、各サイズの大袋を男の子用 と女の子用に分けて置いた。


「あと、風呂桶と椅子とかタオルとかは、脱衣所に置いておくから、使ってね。」と。



 買い物した物を、キッチンにと風呂場に置いて、また終わった頃に来ると伝えて、敷地を後にした。

 俺と、フェリンシアも、簡素に屋台で買い食いし、昼を済ませて、食品のある市場を見て廻る事にした。

 幾つかの店で、小麦粉(大、中、小)を5袋づつ購入し、偽装用マジックバック経由で収納。

 スパイスの店では、スパイス各種を纏めて購入。

 オリーブオイルも見つけたので、購入。

 野菜類も各種をある程度の量、まとめて購入。

 赤ワインや白ワインも樽で購入。

 代用鶏(正式名称はコッコ鳥らしい)の卵を纏めて購入。

 代用ミルクも大量に購入。


 あと、何か忘れてるな・・・何だろう?


 あ、砂糖だ!

 しかし、砂糖が見当たらない。市場のおばちゃんに聞くと、


「ああ、砂糖はね、塩と同じで、アレスター商会が独占してるのさ」と。


「マジか・・・」と嘆きつつも、お礼を言ってその場を立ち去る。


 つまり、砂糖もどうにかしないとダメって事か。

『ねえ、知恵子さん、この世界の砂糖って、やっぱりサトウキビから作るの?』

と聞いてみた。


『いえ、この世界の砂糖は、甘芋と言う芋から作ってます。しかし、甘芋は栽培する条件が厳しく、一部の地域でしか栽培出来ないとされています。』


『なるほど、話が見えたよ・・・ それがドラーツ公爵家の領地だって言うんだろ?』


『はい、その通りです。しかしおかしいんですよね。条件に合致する所は他にもあるんですが、他の地域では悉く失敗しているようです。』


『なんか、話だけでもキナ臭いね。ちなみになんだけど、サトウキビってこの世界には無いの?』


『いえ、ありますが、サトウキビから砂糖が作れる事を誰も気付いてませんね。名前もサトウキビではなく、軟竹って名前です。甘いのを誰も知らないみたいです。

 重量当たり砂糖の生産量からすると、甘芋よりサトウキビ(軟竹)の方が3倍は効率が良く、砂糖の味も更にまろやかで上品な味になるんですがね。』


『え、そうなの? ちなみに、サトウキビって、あっちの世界だと南国でしか育たないイメージだけど、やっぱりこっちの方もそうなの?』


『いえ、それがそうでもないのです。この近辺で言えば、絶界の森の中にも自生してますし、ある程度の寒さがあっても育つ、生命力の強い植物になってます。』


『ほう、それはナイスな話(設定)だな。流石は女神様だwww』


『と言う事は、取り合えず、サトウキビをある程度、根本から採って来て、何処かに適当に埋めれば、ドンドン自生する?』


『はい、栽培の手間で言うと、甘芋の1/5以下で簡単ですよ。成長も甘芋より断然早いので、雪さえふらなければ、2ヵ月毎に収穫出来ます。』


『ちなみに、一番近いサトウキビの自生場所って何処かな?』


『現在地点からだと、微妙ですが、南門を抜けて、10km程南へ進み、東へ3km行った場所に、ちょっとしたサトウキビの自生場所がある筈です。マップのエリア外なので、不正確ではありますが・・・』


『有益な情報ありがとう!』

 よし! 塩と砂糖の市場を奴らから奪い取ってやる。(と黒い笑みを浮かべている)


「フェリンシア、緊急任務だ! 南門から出て、フェリンシアが喜びそうな物を採取しに行くぞ!」

と言うと、


「了解!早く行きましょう!!!」

と走り出しそうになるフェリンシアをなだめつつ、市場を後にした。


 城壁の南門で、一度衛兵に止められた。

「今は魔物のスタンピード等の可能性があるので警戒態勢中だから、成人前の子供は出ない方が良い」

と言われた。


「あ、僕ら一応冒険者なので」

と2人で黒いギルドカードを見せると、


「えええ? SSランク!?」

とビックリされた。


 なるほど、そう言う情報は、まだ伝えられてないようだな。

「もしかして、偽造か?」と疑われたが、


「何かの際にはこれを見せなさい」

とアルマーさんに貰っていたメダルを見せると、敬礼して通してくれた。


 あのメダルってなんだったんだろう? 「絶対に失くすなよ?」って渡されたんだけど。


 南門を通過し、

「フェリンシア、久しぶりにいつものペースで行くよ!」

と声をかけ、身体強化を発動して、一気に加速していく。


 フェリンシアも人化した状態に慣れたようで、同じスピードで着いてくる。

 途中何台かの馬車や、歩きの冒険者を追い越し、10分も掛からず10km南へ到達。


『知恵子さん、ここから東に3kmで良いのかな?』


『はい、その筈です。1kmぐらい進めばマップに出て来る筈です。』との事。


「フェリンシア、ここから東に3kmぐらいだ」

と向きを変えて、街道から外れ、東へと進む。


 途中岩場を通り過ぎた頃、マップに▲が表示される。ん?赤い点も表示されてるな・・・。


 マップで詳細を見ると、

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 種別:スイート・ボア

 Lv:25

 説明:軟竹の自生地に生息する4足歩行の猪型の魔物。

   それほど強くはない。物理攻撃には若干の耐性がある。

   噛む力が強いので、噛みつきと突進に注意する必要がある。

   肉が取引されている。

   肉は甘い香りがして非常に柔らかく美味しい。市場には結構出回る。

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 ふむ・・・スイート・ボアが全部で35匹か。


 あとは

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 種別:バンブー・ラビット

 Lv:17

 説明:軟竹の自生地に生息する4足歩行のウサギ型の魔物。

   冒険者のEランクでもパーティーであれば、討伐可能。

   噛む力が強いので、噛みつきとジャンプによる攻撃に注意する必要がある。

   肉が取引されている。

   肉は癖の無い味で甘い香りがして柔らかく美味しい。市場には結構出回る。

 **********************************************************************

 バンブー・ラビットは全部で21匹か。


「フェリンシア、目的地に魔物、スイート・ボアが全部で35匹とバンブー・ラビットが21匹居る。両方とも美味しいらしい。

 あと目的は奴らの好物の軟竹って言う植物。外見は竹に若干似てる。

 だからなるべく軟竹を傷付けないように倒そう。」


「了解しました。どれも綺麗に倒して、美味しく頂きましょう! 私が半分殺るね!」

とフェリンシア。


「了解、じゃあフェリンシアは左側を任せるよ。俺は右側をるね。」


 さあ、戦闘開始だ。



 右と左に別れて進み、俺は、右側のスイート・ボア18匹と、バンブー・ラビット11匹を担当する事にする。

 3Dマッピングで先ずは最初の15匹をロックする。魔法はアイスアロー・ホーミングにして、上空からの五月雨撃ちにする。垂直降下射撃なら、被害少ないしね。

 発射! 上空に駆け上がったアイスアローが、弓なりのの頂点から、一気に向きを変えて地面に向かって高速降下していく。


「ピギャ」と言う連続する悲鳴が聞こえ、15匹のスイート・ボアの点が消える。

 更に14発のアイスアロー・ホーミングをロックして発射! さっきと同様に垂直降下したアイスアローの着弾と共に「キュー」と言うバンブー・ラビットの悲鳴が聞こえ、担当分の討伐が完了した。


 倒した獲物をアイテムボックスに収納して、フェリンシアの担当した方の赤い点を確認すると、残り5匹に減っていた。

 待ってる間に軟竹ことサトウキビを採取する。50本ぐらいは、植え替え用に根本の土ごと綺麗に取る。


 目の前で見ても全く日本で見たサトウキビと同じ。 これで、目にもの見せてやるぜ!と黒い笑みを浮かべつつ、せっせと刈り取りする。


「これで2ヵ月もすれば、次の収穫と言う事だから、笑いが止まらないなぁ。」


「海渡、ご機嫌ですね!」

とフェリンシアも微笑みながらやってくる。

 一本のサトウキビから少し短く2本切り出して、の表皮を剥いてフェリンシアに渡す。


「こうやって、齧ると甘い汁が出るんだよ。」

と齧って見せる。


 フェリンシアも真似をして齧り付く。

「カミカミ、チュウチュウ、カミカミ、チュウチュウ」

 一心不乱に甘い汁を堪能するフェリンシア。


「どう?」と聞くと、


「うん、すっごく甘いです。」と良い笑顔。


 これで、砂糖を作って、売ったり、甘いお菓子を作って売るんだよ と説明すると、更に嬉しそう。


「あ、倒した魔物だけど、ウエストポーチじゃ入らなそうだったから、そのままなの。海渡回収してきてくれますか? その間に私が採取しておくので。」

とフェリンシア。


 了解と、すぐさまサトウキビの間を駆け回り、全ての獲物を回収。


 戻ると、既に残り半分ぐらいになっていたので、2人で一気に刈り取った。束になって置かれているサトウキビを全て回収して、帰途につく。


 帰り道は、迂回せずに一直線に南門を目指す事とした。途中何匹かのゴブリンをサクサク仕留め、南門に到着。


 門の衛兵に冒険者ギルドカードを見せるとそのまま素通り出来た。

 どうやら通達が回ったみたいだね。

 頭を軽く下げて無事城壁内に戻れた。


 時刻は狙い通り、午後2時半過ぎ。


 草刈りの本日の予定は午後3時終了予定だから、軽食のサンドイッチとかを屋台で購入しつつ、敷地へと向かうのであった。

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