第67話
ドアの向こうには、髪の毛の薄い、40代後半の痩せた男が、媚びる様な笑顔でこっちを見ていた。
後ろには、少し涙目の秘書のお姉さんが立っていた。
(海渡は申請用紙があるとマズイと思い、一瞬でペンと申請用紙を収納していた)
「やあやあ、領主様、お久しぶりです。ギルドマスターのボーナム・サンテスです。本来ギルドマスターである私が担当すべき事を、係の者がミスしたらしくて。申し訳ありませんでした。」
と、手もみをしながら、ズカズカと入ってきた。
「やあ、久しぶりだね、ボーナム・サンテス殿。いや、係の者は間違っては居ないよ。私が『友人である』サンドラへの面会を求めたのだからね。」
と返すアルマーさん。
しれっと、知っててやっている癖に
「おやおや、そうでしたか。でも下の者では何かと不備が無いとも限りませんし、宜しければ、ギルドマスター室で私がご対応させて頂きますが?」と。
わぁ~無いわぁ・・・嫌いだな、こういう奴。早目に潰せるように、頑張らないとな。と心に誓う海渡。
「いやいや、そこまでは望まないよ。勿論友人のサンドラは良くやってくれているし、十分だよ。それに今日は私の用事と言うより、知り合いの子供を見学がてらに連れて来ただけなんだよ。
まあ、友人の子の見学と申請を口実に、久々にサンドラと話ていただけだからね。」
と海渡とフェリンシアをチラリと見る、アルマーさん。
ボーナムも、ギロっと海渡とフェリンシアを値踏みする様に眺め、幼児と少女か・・・と「なーんだ」って目付きになった。
ここでダメ押しだ!と海渡は一度も使った事の無いような子供っぽい感じで、「ねぇ~、アルマーおじさん、僕何かお菓子食べたいよー。喉も乾いたから、早く何か食べに行こうよーー」
と強請ってみた。
「あ、じゃあ私は肉串が食べたい!」
と便乗するフェリンシア。
それを横目で見た、ボーナムは完全に興味を無くし、「では、ごゆっくり」と大きな音をたてて、部屋を出ていった。
ブツブツ言いながら、廊下を歩いて行く音が遠ざかる。
アルマーさんと、サンドラさんが、たまらずに「「ブブゥー」」と吹き出して、
「本当にカイト君は面白いねー」
とサンドラさん。
「そうだろ、そうだろ!」
とアルマーさん。
フェリンシアだけが、キョトンとして あれ? って顔をしていた。
「おっと、申請用紙・・・」
と申請用紙とペンを出すと、
「あ、それアイテムボックススキルか!」
とサンドラさんが驚く。
「サンドラさんだったら大丈夫ですよね?」
とアルマーさんに聞くと、頷いたので、
「はい、アイテムボックスです。一応内緒にしてるんですが、つい使っちゃいました。」
「うん、誰にも言わないから、安心してね。」
とほほ笑むサンドラさん。
美しい。緑のストレートなサラサラの髪の毛に丹精な顔立ち、目はパッチリで、耳が尖がっていて・・・え?耳?
「どうしたんだい?私を見つめて・・・」
「いえ、あの、あまりにお綺麗なので、思わす見惚れてしまいました。不躾ですみません。 あの、もしかしてエルフの方ですか?」
「おいおい、本気にしちゃうじゃないかw そうだよ、エルフだよ。」
と軽く返すサンドラさん。
「エルフキターー やっぱり、エルフの人って、驚く程綺麗なんですね!」
思わず、ガッツポーズで叫ぶ海渡。
ポカンとする周り3人。
あ・・・やっちゃった。
「すみません、ちょっと嬉しくて興奮してしまいました。前々からエルフの方に会ってみたいと思っておりましたので・・・」
と急に恥ずかしくなる海渡。
「そうかい、そんなに気に入ったなら、ちょくちょく遊びに来てくれよ! お茶ぐらいだすからさw」
とサンドラさん。
「はい、ありがとうございます。時々寄らせてもらいます。でもそのうち、サンドラさんも忙しくなりますよw 申請書を書きあげますね。」
と笑う海渡。
新規魔道具ギルド会員申請書
名前:カイト
年齢:5歳
出身:
魔法:火魔法、水魔法、土魔法、光魔法、聖魔法、闇魔法、時空魔法
スキル:
その他:
書ける所は書いたな。
「すみません。こんな感じでも良いでしょうか?」
とサンドラさんに申請書を差し出す。
「うん、十分だ。ほう、全属性が使えるのか。凄いね。」
「はい、お陰様で。 あ、ところで、申請代金とかは幾らでしょうか?」
「そこは私が出すので心配しないで良い。」
とアルマーさん。
「いえ、ここは公私別けるべきだと思いますし、幸い素材を売ったお金も十分過ぎるぐらい貰っておりますので、お気持ちだけ頂きます。」
と、納得してもらい、申請代金の銀貨5枚を支払った。魔道具ギルドは結構取るんだね。
「冒険者ギルドと同じで、成果や貢献度なんかでランクが変わるんだよ。このギルドカードはFランクで、Fから順にSSまである。
年会費が毎年、ランク毎に金額が違うが払って貰う事となる。Fランクは年銀貨2枚となる。初年度は入会費に含まれるので、無しだ。」
「なるほど。ランクが上がると何かメリットあったりするんでしょうか?」と疑問を投げる。
「ランクが上がると、特許の申請費が徐々に安くなる。更に1個製品が売れる毎に払わなければならないロイヤリティが割引となる。」
なるほど。なんか、パッとしないな。まあ良いか。
「ついでに、何か特許申請していくかい?」
「うーん、どうしようかな・・・今はまだ自分専用のしか作ってないんですがね・・・。一応見てみますか?」
と、作品第一号であった、野営用の結界魔道具を出してみた。
「まあ、これは最初の試作品だったので、パッとしないんですがねw」
と笑いながら効果を教えた。
すると、サンドラさんもアルマーさんも、ドン引き。
「あれ? 期待外れで、ガックリさせちゃいましたか? うーんと、他には・・・」
「あ、これは同じ時期に作った試作品第2号で・・・テント内の室温を保つ奴ですね。」
「あ、これは試作第3号で、風呂用のマジックミラーシールドですね。」
「あ、あとは、フェリンシア、ちょっとだけマジックポーチ貸してくれる? そうこれが試作第4号でマジックポーチ」
「あとは、昨日作った、このミンサーですね。まあ、これは第6号ですけど」
とズラっと並べたら、固まってらっしゃる。
「すまないが、1号からもう1回づつ、もっと詳しく教えてくれるかい?」
と言う事で、1号から再度説明。
1号:野営用簡易結界
侵入警報結界半径10m、発動者の認証無い物の絶対侵入不可結界半径7m、
動作時間は10時間
オークの魔石で100回ぐらい使える筈です。
ちなみにリザードマンもパウンド・スネークも、この結界破れませんでし
た。
2号:テント用エアコン
テント内の快適温度及び湿度の状態維持と、細かい埃やゴミ、毒ガス等を
除去する空気清浄化機能で1回の発動で10時間
3号:野外お風呂用マジックミラーシールド
外側マジックミラーシールド で 内側からは丸見えのシールド
発動者以外侵入不可半径3m 稼働時間は1時間
4号:マジックポーチ
内部空間拡張無制限、内部重力0、内部時間停止、初期魔力供給者限定、
期間はリセット発動時まで
5,6号:ミンサー
肉をミンチにする魔道具 発動時と停止時に除菌を行う。
と言う説明を終えた。
すると、サンドラさんが静かに話だした
「多少はアルマーから規格外っぷりを聞いていたが、予想以上だったよ。何だい、そのデタラメな性能っぷりの試作機達はww
そのままでも十分に、しかも飛ぶように売れる内容じゃないか。それって何か月ぐらいで作ったんだい?」
「えっと、材料があったので、1個10分から30分程度ですね。あ、勿論テスト時間を除いてですが」
と答えると、
「そりゃまた桁違いに短時間だね。と言う事は、君は魔法陣を書くのに要する時間が、もの凄く早いって事だよね? 普通はね、魔力を込める為に、数日~数か月、長い大がかりな物は、年単位になったりするんだよ。だから魔道具は高い。」
「なるほど、そんな感じなんですね。人と比べる事がなくて、ヒントを貰った後は独学だったので。」
と答えておいた。
「まあ、これを独学でやれてしまうのも凄い事だよ。 アルマー、君の友人は凄いな!! なんか100年ぶりくらいに楽しくなってきたよw」
と笑いだすサンドラさんとアルマーさん。
そして「な!例の話も現実味を帯びて来ただろ?」とアルマーさん。
「そうだな。」と返すサンドラさん。
「ちなみに、1つ質問なんですが、マジックバックやマジックポーチとかって、既存であると聞いてますが、このマジックポーチとかって、作れば、特許取って売れますか?」
と聞いてみた。
「ああ、全然大丈夫だよ。今まで世に出ている、マジックバックとかって、全部ダンジョンからのドロップ品なんだよ。誰か人の手で作られたというのは聞いた事がない。
売り出せば、確実に物流革命が起きるんじゃないか? 飛ぶように売れるのは間違いない。」
と太鼓判を押された。
慌ててフェリンシアが「これは海渡から貰った、私の宝物なの。絶対に売りません!」
と言って、腰に装着してた。
「大丈夫だよ、フェリンシアのはフェリンシアのだよ。盗ったり売ったりしないから、安心して!」と。
それから、暫く話をして、再度握手をして、魔道具ギルドを後にした。
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