第55話

 さて、本日の予定のラストは、冒険者用の防具と靴。

 武器は・・・俺のはあるし、フェリンシアはどっちかと言うと、魔法かフェンリル形状での格闘?になるから使わない。

 そこら辺を考えると、防具や靴ってのも、フェンリルだとどうするか?ってのもあるんだが。


 アニーさんに聞いた所、武器屋さんとかもあるが、もし良いのを自分専用に作るのであれば、ここがお勧めらしい。

 店のドアを開け、中に入るが誰も居ない。


「すみませーーん、何方かいませんか?」

「すみませーーーん、防具と靴が欲しいんですがーー!」


 すると、誰も居ないと思っていたカウンターの裏から、頭の禿げたお爺さんが起きてきた。


「なんだ?客か?珍しいなw」

と、大あくびをしている。


 おいおい、売る気ない店だなwww


「何だ坊主、防具と靴か?」

とぶっきらぼうな店主w


「はい、俺とこの子の冒険者用の靴を2足づつと軽くて動きやすい防具を1つづつ、お願いしたくて。」


「ほう、坊主達は冒険者志望か?」


「いえ・・・もう既に登録終わって、ランクも決定したので。」


「そうか、登録出来たのかww しかしなぁ、その歳では、町の中の雑用ぐらいだろ? ワシの所の靴も防具も高いぞ?」


「あ、いえ、冒険者登録前に倒した魔物の素材の売却とかもあって、金額面ではそれなりに大丈夫だと思います。

 そういう訳で冒険者ランクもそこそこ良いランクになりまして。」


 ガバッっと向き直って、俺とフェリンシアをガン見する、お爺さん。


「ふむ・・・不思議じゃな。良く見ると何故かお主らから、強者のオーラが出ている気がするが・・・。ランクを聞いても構わないかの? そのランクにあった物を作りたいのじゃ。」


 そこで、少し思案する・・・が、どうせなら、良い物が欲しい。

「えっと、ここだけの話で内緒にして貰えますか?」


「無論、この商売、信用と出来栄えが第一じゃからの。そこは安心してくれ。」

と言う事で、おずおずと、金色のカードを取り出す。


「ガハァッ! お主、その若さでSランクか!!!」


「はあ、まあ色々ありまして。これまでに魔物の討伐も、それなりにやってますので。」


「そっちの子もか?」


「はい、この子も同じです。」


「これはたまげたな・・・。長年この商売やっておるが、お主らの様な子供がSランクのカードを出したのは、初めてじゃよ。よし、腕によりを掛けた防具と靴を作るとしよう。」


「しかし、問題がある。お主らの歳だとすぐに成長して、せっかくサイズを合わせた防具も靴も、すぐに小さくなくなってしまうからのぉ。 あまり高い素材だと直ぐに無駄になってしまう。」


 なるほど、確かに俺、成長期だよな。


「でしたら、大人用のサイズで作って頂けますか? 俺、付与が出来るんですよ。 なので、付与でサイズをピッタリに合わせる事も出来るんです。ただ、付与に耐えられる素材である事が重要なんですけどね。」


「ほう、その歳で付与魔法か! これまたたまげたな。よし、じゃあ何年でも使えるような良い物を作ってやる。 靴は底が減ったりしても、その部分をメンテナンスすれば良いし。その時は持ってくれば良い。

 素材次第だが、動き易く丈夫な靴を作ってやる。しかし、お前さんの今つけてる防具も、履いている靴も、素晴らしい物じゃな。よしそれに負けない物を作ってやるぞ。」


 ふむ。この人なら大丈夫かな? どうせなら良い素材で作ってもらいたいし・・・。

「もし、足りない素材があれば、教えて下さい。もしかすると、俺が持っているかもしれません。」


「取り合えず、最高・・・と言えばキリが無いが、耐物理攻撃のスキルを持っている魔物の皮とか、鱗とかあれば、良いんじゃが、なかなかなぁ・・・」


「例えばですが、ポイズン・リザードマン、ワイバーン、キラー・アンツ・クィーン、スナイプ・モンキー、フォレスト・ビー、パウンド・スネーク、コボルト、シャドー・ウルフ、フォッグ・ベア、エルダー・トレントとかの素材で、使える物ってありますか?」


 すると、お爺さん、グワッと目を剥いた!!!

「その中で一番は、ワイバーンの皮と鱗があれば、軽くて丈夫な防具や靴になる。鱗は胸当てや、つま先や脛の部分の保護用だな。

 2番目はキラー・アンツ・クィーンの外骨格も鱗と同様に使える。ポイズン・リザードマンも鱗も使えるが、皮を使っても良いな・・・。どれも一級品どころの騒ぎじゃない伝説級の素材じゃよ。

 中で一番のお勧めは・・・ そうじゃな、やはりワイバーンの皮と鱗かのう。但し、問題は加工時の切削や縫い合わせの穴が開けられるか? と言う事もあるんじゃ。なんせ、お目に掛かった事が無いからのう。」


「ふむ・・・なるほど、確かにどれも硬かったよな・・・。素材の研究してみますか?」

と、幾つかを出してみた。


 お爺さん、急いで、店をCloseにして表から見えないように、しちゃったよ。


「お主、想像の斜め上を行きおる・・・。

 こんな素材、そうそう人に見せる物じゃなぞ? 危ない事に巻き込まれでもしたら・・・。」

と心配された。


「あ、不用心ですみません。で、これギルドに出した物の一部なんですが、これで研究してみますか? 確かに討伐する際、硬くて普通には刃が通らず、付与魔法で『鋭利増加』とか色々掛けて、やっと切れた物もあるので、普通には加工が難しいとは思うのですが。」


「なあ、坊主、物は相談なんじゃが、この仕事、鱗の加工もあるんで、隣の鍛冶屋と共同でやっても良いかの? 何、そいつの人物・・・いや、口の堅さと腕は、ワシが保証する。まあ頑固なドワーフなんじゃがな・・・」


「なるほど、了解しました。お爺さんを信用しますよ。」

と答えると、


「ちょっと、待っとれ。今呼んで来る!!」

と店を飛び出して行った。


 3分くらい待つと、お爺さん(この店の)が背の低い、ズングリとしたゴツイお爺さんを連れてきた。


「なんじゃ・・・急に人を引っ張って来て・・・ ワシは忙しいんじゃよ!! まったく・・・」

と言いながら、出してある素材を見た瞬間、


「うぉーーー!」と叫んでワイバーンの鱗に駆け寄って来た。


「こ、これは!? まさか?」


鱗を手に取り、プルプルと震えるドワーフのお爺さんに、


「そう、そのまさかじゃよ。だからお主を呼びに行ったんじゃ。せっかくなら、共同で良い物を作りたくてな。」

と、したり顔で、ほほ笑むこの店のお爺さん。


「ああ、そういえば、まだ名前を聞いておらんかったの。 ワシは、この店の主人で、ドミニクと言う。こっちは隣の鍛冶屋のドリンガというんじゃ。」


「初めまして。俺は、カイトと言います。 こっちは相棒のフェリンシアです。

 今日冒険者ギルドに登録したばかりですが、一応そこそこ戦えます。宜しくお願いしますね。ワイバーンの素材は爪とか牙とかもあるので、必要なら言って下さい。あと、鉱石とかも何種類か持ってます。」


 この鉱石と言うキーワードに、ドワーフの血が騒いだのか、ドリンガさんが食いついた。


「おい、坊主・・・いや、カイト、どんな鉱石があるんだ?」

と更に食いつく。


 そこで、女神様から頂いているインゴットシリーズ(鉄インゴット、ミスリルインゴット、アダマンタイトインゴット、オリハルコンインゴット)を少しづつ出してみた。


「これらが、あともう少しづつありますね。

 あとはオークの集落の倉庫から頂いた鉱石類とか、武器庫から回収した武器なんかもありますが・・・」


「「お主・・・それはアイテムボックスか!」」

と食いつく2人の爺様方。


 あ・・・しまった・・・。忘れてた・・・

「・・・ あのぉ・・・一応内緒にしてくれますか? アイテムボックスのスキル持ってます。 領主様からも面倒ごとになるので、人に言わないようにとは言われていたんですが・・・」


「安心せい!勿論他言はせぬ。しかしランクの事と言い、素材の事といい・・・つくづく規格外な坊主じゃのぉ」

と笑い出す2人の爺様方。


 そこで、一応希望の内容を再度伝える事にした。


 ・防具も靴も、軽くて動きを阻害しない丈夫な物。

 ・付与魔法でサイズはジャストフィットさせたり、強化したりできるので、

  大人サイズで作る事。

 ・付与にはその付与内容に耐えられる素材である必要がある事。

 ・お金は気にしなくても良い事。

 ・手付金をちゃんと払う事。

 ・持っている素材は提供できる事。

 ・何か提案があれば、教えて欲しい事。

 ・スピードを生かした戦闘もするので、ガチガチのフルアーマーは要らない事。


「よし、大体判った。

 後はドミニクと相談しながら、良い物を作るので心配するな! な、ドミニクよw」


「おおよ、これだけの素材、一生に一度お目にかかれるかどうかだからな。良い物を作ろうぞ」


 サイズ違いの2人の爺様方が肩を組んで笑ってる。


「何かありましたら、当分はここの領主様の館にお世話になっておりますので、お知らせください。もし移動する時には、判るようにしておきますので。

 で、着手金ですが、当座のお金も必要でしょうから、これぐらいでどうでしょうか?」

と、1人金貨5枚づつ出してみた。


「え・・・こんなに良いのか? そりゃあ、こちらは助かるが・・・。」


「ええ、勿論です。すみません、初めてで相場が判らないので、もし足りなければ、途中で言っていただければ、またお支払いしますから。」

と言っておいた。

 やっぱり、良い仕事をしてもらうのに、(お金が足りなくて手抜きとかは無いだろうけど)お金の心配とか抜きでやって欲しいからね。


「取り合えず方向性を決めるのに3日ぐらいは欲しいか、次は4日後ぐらいに来てみてくれ。その間いに色々アイディアを出し合って、試してみるから、楽しみにしておれ!」


「じゃあ、また4日後ぐらいに来ますね!」

と店を後にした。どんなアイディアが出るのか楽しみだね!

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