第56話

 町での予定が終わり、領主様の館へと戻る。


 門番のおじさんは、俺たちを発見すると、ホッとした顔をしていた。

 どうやら、心配してくれていたみたいだ。


 館に入ると、早速リーファさんとサイファさんに捕まった。

「もう、お二人とも遅いですわよ?」

「ずっとお待ちしてました。ささ、こちらに・・・」

と連行されちゃった。


 良く知らない部屋に連れて来られ、きょうあった出来事を聞かれた。

 ランク判定の魔道具の一件では、ビックリされ、フェリンシアの洋服の買い物の話では、サイファさんに、

「ズルいですわ。私もご一緒したかったのに」

と拗ねられた。


 そのあと、末っ子のララーさんも乱入してきて、森の事や色んな話を聞いてきた。


「そういえば、奥様の御加減は如何でしょうか? 今朝拝見した限りでは、大丈夫との事でしたが、日中は問題なかったでしょうか?」


「はい、お陰様で、今まで寝たきりだったのが、嘘の様に元気になられました。

 ただ、まだ筋力が完全に戻ってはいないので、長時間歩いたりは難しいみたいですが、今日も午前と午後に1時間づつ、庭を散歩したりして、体を慣らしてました。 本当にありがとうございました。」

とララーさん。


 そうか、今まで不安で寂しかったんだろうね。

「そうですか。良かったです。寝たきりが長いと筋力が落ちますので、一気にではなく、徐々に体を馴染ませながら、筋肉を動かして行けば良いリハビリになると思いますよ。」


「しかし、こうやってお話しすると、カイト様って不思議ですわね。本当に5歳には思えませんね。私達より年上の知的な男性とお話ししている様に錯覚してしまいます。」


「本当に・・・外見はこんなに可愛いのに、不思議ですね」

と、リーファさんサイファさん双子コンビ。

 鋭いな・・・実際10歳ぐらい年上だからなw


「さあ、じゃあ夕食の時間までは、まだ十分あるので今の内にお風呂を済ませておきましょうかね。ふふふ」

とリーファさん。


「そうですわね、お姉さま。うふふ。」

とサイファさん。


「あら、良いですわね。私もご一緒します。」

とララーさん。



「・・・・」

嫌な汗を流す海渡。



「えっと、昨日教えて頂いたから、お風呂の使い方は完璧です。 今日はちゃんと1人で入れますので」

と予防線を張った。


 なのだが、結局何故か、サイファさんが男湯に付いてくる。

 またこの攻防か! いや、本当に疲れるから、勘弁してください・・・。

 結局押し切られ、現在抱っこ状態で、背中に男の夢の先っぽである突起物が2つ当たってる訳ですよ。

 風呂は素晴らしいんだがなぁ・・・。



 で、風呂から上がって、今部屋のベッドでグッタリしてる所です。


 こりゃあ、早めにこの館を出られるように、情報収集を急がないと、なし崩し的に出られなくなりそうな悪寒が・・・。


 と言う事で明日やるべき事を、バックパックから出したメモに書いて、整理していく。


 →済み・冒険者の資格をとって置く。

 →途中・アイテムボックス内の死蔵品の整理。

 →途中・食料や食材の確保。

   ・生活基盤と資金の確保。

   ・本や人から世界の情勢や常識や知識を学ぶ事。

          =館の蔵書の読書&料理長に食材や料理を聞く


   ・この世界の人のステータス値の確認。

          =騎士や魔法兵の訓練に参加


   ・この世界の魔法や魔道具の確認。

          =町やこの館の魔道具なんかを見て廻る


   ・あと魔道具や料理(日本の食事)の研究。

          =料理長に食材や料理を聞く


 →済み・教会に行って、女神様への近況報告とお礼。


   ・観光&美味しい物食べ歩き。


 つまり、明日は


 ・館の蔵書の読書

 ・料理長に食材や料理を聞く ←優先度高い

 ・騎士や魔法兵の訓練に参加 ←優先度中

 ・この館の魔道具を見て廻る ←優先度低い


 この4つがメインかな。あとで、領主様にも確認しとこう。


 暫くすると、フェリンシアも部屋に戻って来た。

 ソファーに座り、風呂上りのお水を出して、休憩した後、今日買ったフォークやナイフで、その使い方を教えていく。

 見よう見まねで、かなり出来るようになっていたので、最後は結構、様になっていた。

 お箸の使い方は、また次回余裕のある時って事にした。あまり一気にやるのもね。


 そう言えば、エルダートレントでお箸作るの忘れてたな。これも早めに作らないとな。


 そして、夕食の御呼びが架かる。

 食堂に入り、開口一番にアルマーからSSランク(現在は仮にSランク)のお祝いが述べられる。


「アルベルトから聞いたぞ! 凄い事は判っていたが、まさかいきなりSSランクを超えるとは思ってなかったぞ。冒険者ギルド始まって以来初らしいな。いやぁ~めでたい。」と。


「はい、私もビックリしました。まあまだ歳もいかない子供なので、あまり悪目立ちしないように気を付けます。」と返すと、


「ははは。その子供からそんな言葉が出る事自体がミスマッチなんだがなww」

 しかしなぁ・・・下手に子供っぽく振る舞おうと思っても、咄嗟に判んないんだよね。 下手にやると、思いっきりわざとらしくなっちゃうし。

 ははは・・・と乾いた笑いで返した。


 食事は進み、フェリンシアも練習のお陰で、スムーズにフォークやナイフを使って食べられるようになっていた。

 ああ、やはり領主の館のご飯は今日も美味しい。なんかこっちに来てから、食い物に執着が湧いた気がするなぁ。


「あの・・・明日からの予定のご相談なんですが・・・」

と、アルマーさんに尋ねる。


「そうか、じゃあ今夜でも明日の午後でも、料理長と話してみるが良い。 あ、午前中は騎士と魔法兵の訓練があるので、朝食後は訓練場へと来てくれ。 本を見る件と魔道具は、いつでもケージにでも案内させよう。空いた時間にケージに聞いてくれ。」

と快諾して貰った。


 料理長と早く話したいなぁ。


「ああ、それと、これはお願いなのだが、昨日貰ったワイバーンとかのお肉だが、子供らからの強い要望があってな、出来れば一度カイト君の料理を食べてみたいと・・・な。で、明日の夕食はどうだろうか? 作ってみて貰えないだろうか?」

と言われ、


「ええ、色々お世話になりっぱなしですので、お礼も兼ねてやらせて頂きます。しかし、そんなに自慢出来る程の腕ではないのですが・・・。明日午後に料理長さんと話して、少しこちらの食材も使わせて頂くかも知れませんが、宜しいでしょうか?」

と、あまり期待しないように、やんわりと予防線を張る。何か知らない間にドンドンハードルが上がってる気がするからね。


「よし、それじゃあ、明日の夕食は楽しみだな!」

と全員が頷いていた。


 そして、部屋へ戻り、明日の訓練のをして、ようやく眠りにつくのだった。

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