第14話


 結界外周の偵察を終えて、訓練のジョギングを始める。

 マッピングの索敵範囲が広がったので、半径120mを周る。


 3周目を走っている際、マッピング画面に動きが現れ、赤い点が1つ結界の傍まで近づいてきている。

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種別:オーク

Lv:22

説明:顔は猪に似た2足歩行の魔物。

   固い外皮と分厚い脂肪層で、耐物理攻撃を持つ。力は強いが、知能は低く、

   長時間戦闘可能なスタミナを持つ。

   オーク・キングの指揮下に居る場合、同じレベルのオークよりスペックが

   高くなる。

   人族等の女性を襲い、繁殖する。

   一般のオークは魔法を使えない。武器はこん棒や、冒険者等から奪った剣な

   どである。

   魔石、皮、と肉が取引される。

   肉は美味しい。味は豚肉を更に美味くしたような味。

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これはチャンス!?単独のオークだ。さっき見たオークより、若干Lvも低い。

ここら辺りの魔物では、これが最低Lvと思われる。


隠密を発動して結界の傍の木の上に移動。

ターゲットを発見。身長2m50cmぐらいの巨体で、猪っぽい牙を持った顔に太った体。

手には棍棒を持っていた。鑑定すると、

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 種別:オーク

 Lv:22

 状態:飢餓(軽)

 HP:783/791

 MP:152/152

 筋力:834

 俊敏:153

 武術:棍棒術Lv1

 魔法:

 スキル:身体強化Lv1 嗅覚強化Lv1

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 ふむ・・・Lv差はあるが、通常のオークだとそれ程ステータス差はないんだな・・・。

 素早く頭の中で戦略を立てる。

 問題は、結界の中から攻撃して、結界を素通りするのか?


『この結界は、転送された本人である海渡さんは出入りも自由に出来ますし、中から攻撃する事も可能です。結界の外からの物理攻撃も魔法攻撃も弾くようになってます。』

と突然アナウンスが流れる。

 そうか、女神の知恵スキルを常時発動してたな・・・。


『よーし、逝ってみようか!』


 ダメ元で魔力で魔法をぶつけてみる事にする。


 森だから、火は拙そうだし、水の刃のイメージでいくか。

 前回のアンコウサギの時より大きな魔力を指先に集めていく。

 加減が判らないので、取り合えず前回の3倍くらい。

 首筋を狙い、水の刃をイメージしたアクアカッターを発動。


「ズバッ」と水の刃が勢いよく発射される。


 その瞬間、オークがこちらを振り向くが、時すでに遅しで、首にアクアカッターが着弾し、スパッと通過。

 そのまま後ろの直径1mぐらいの木に当たり、更に、その次の木に当たり、地面に大きな溝を作った。

 メキメキメキと音が響き、2本の木が首の無いオークへと倒れて来る。


 2本の木が、結界に寄り掛かっている。振動でオークの死体も倒れ、首から威勢よく血を噴き出していた。


≪ピロリン♪ Lv4にレベルアップしました。≫


とアナウンスが流れる。


「わぁ・・・オーバーキルだったか。しかし、何か人型だと生々しいなぁ」

と、木から飛び降り、ステータスを確認する。


『ステータス』

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 名前:(冴島海渡(仮))

 年齢:5歳(27歳)

 種別:人族(+α)

 職業:(テスター)(考古学者)

 Lv:4

 HP:550/950

 MP:1170/1210

 筋力:1258

 俊敏:562

 武術:剣術Lv10 槍術Lv10 忍術Lv10 体術Lv10

 魔法:火Lv1 水Lv1 風Lv1 土Lv1 光Lv1 闇Lv1 聖Lv1 時空間Lv1

 スキル:鑑定Lv3 アイテムボックスEx 言語理解Lv10 経験値増加

     スキル取得補助 隠密Lv5 気配感知Lv5 女神の知恵Ex 料理Lv1

     魔力感知Lv2 魔力操作Lv2 エクストラレーダーマッピングLv3

     多重処理 身体強化Lv1

 称号:武術マスター(異世界の訪問者)(神々の使徒)(インテリ筋肉)

    (冒険に童貞を捧げし者)

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「ほーー! Lv差も大きかったから、一気に上がったな。経験値増加の恩恵だろうな。」

と、ほくそ笑む。


 この分なら、結界消滅までに、何とかなりそうな気がしてくる。

 オークの死体を見ると、ほぼ血が止まっていたので、結界を出て、アイテムボックスに収納した。

 結界に寄り掛かっている2本の木もアイテムボックスについでに収納。


「今夜は焼肉だーーー♪」とベースキャンプへ戻った。


 さて、解体しなきゃだが、これだけ巨大な物を力業で木に吊るして血抜きを完了するのは、5歳児の肉体には無理がある。


「どうすべきかな? 血が抜ければ良い訳だから、水魔法で一気に押し出せばどうだろうか?」


 ベースキャンプから、一度離れた場所に移動し、土魔法で穴を掘り、横にオークの死体を出す。

 腹を割いて内臓を取り出すのだが、これがなかなか刺さらない。

 そこでちょっと閃き、ナイフに付与魔法を掛けてみる。


「切味上昇」とか「鋭利増加」とかで良いかな。


 付与する内容をイメージして、ナイフの刃に触れると、ナイフに魔法陣が浮かび上ががって消えた。


 微量ではあるが、ナイフへと魔力が流れるのを感じる。


≪ピロリン♪ スキル:魔法付与Lv1を取得しました。≫


 さっきと同じように、オークへとナイフを当てると、バターに温めたナイフを刺すように沈み込んで行く。


「付与魔法凄いな!こんなに効果あるのか。」

と、気分は既に久々の焼肉モードの海渡。


 内臓を傷つけないように切り開き、肘まで血まみれになりながら、内臓を取り出しては、ドンドン穴に捨てていく。

 心臓の辺りを手探っていたら、拳大の丸い塊があった。取り出してみると、紫色の宝石の様な丸い石。


鑑定を掛けてみると、

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 種別:オークの魔石

 ランク:D

 説明:一般的なオークの魔石。

    市場によく取引される魔石。

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と出てきた。あとで売れそうなので、アイテムボックスに収納する。


 生臭い臭いが充満する中で、肘まで血まみれで、顔はニヤッとしてる森の中の5歳児・・・。

 目の前には解体中のオークの死体。

 客観的に知らない人が見ると、ホラーである。


 内臓の処理が終わり、今度は血管に水魔法で水を流す。

 赤黒い血の混じった水がドンドン流れていく。


 1分も掛からず、透明な水が出て来るようになったので、今度は肉塊に切り分ける。


 大きな木の葉を敷いて、肉塊を並べていく。要らない部位は、穴へと捨てる。

 30分ぐらいで解体が完了し、肉塊をアイテムボックスへ。


 汚れた手を、水魔法の水塊と石鹸で良く洗うが、生臭い臭いが残った。


 日々生きる残る事に必死で忘れていたが、こちらに来てから風呂もシャワーも浴びてない。

 自分の脇の下とかをクンクンと嗅いでみる・・・麻痺してて判らない。

 結界内をマッピングした結果だが、川も池もなかったが、生活水は魔法で必要な量を確保していた。

 体を拭くぐらいで済ませていたが、一度気になりだすと、止まらない。


「ああ、風呂入りたいなぁ・・・」


「魔法で風呂作れるんじゃないか?」と思いつく。


「やっぱり、日本人の異世界転移物は、風呂は定番だよね。」

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