第10話


 異世界3日目。

 昨夜は魔法で魔力を使い切り、そのまま爆睡。


 朝には、魔力も復活し、清々しい目覚めである。

 昨日までは、魔法だけを試して終わった1日だが、この体での戦闘もこの先のLvアップで必要となるので、地球での日課であった


 ジョギングと、素振りと、型の稽古を再開する事とした。

 朝は、レーションに付いていた紅茶の残りと、女神お勧めのフルーツ盛り合わせからリンゴもどき1個、バナナ1本と、干し肉で手早く済ませる。

 あ、そうそう、このリンゴもどき、皮が白く、果肉は黄色なんだけど、味は甘味と酸味が混じったリンゴそのもの。

 鑑定すると、アップリア と言う名前の果物らしい。しかし、地球のリンゴよりも芳醇で美味しい。

 で、バナナは皮は黄色で、果肉は真っ赤w 剥いてビックリ。

 見た目が怖い気もするんだけど、これまたとても美味しい。

 これを薄切りにして、パンにバターとバナナスライスと、シナモンをかけて焼いたら、美味しそうな感じ。


 まだ、町には行ってないけど、この世界の食材は美味しい物で溢れていそうで、楽しみである。


 さて、結界内の偵察を兼ねて、ジョギングを開始する。

 ユグドラシルの木を中心に、徐々に半径を広げる感じで、偵察しつつ、途中食材を発見した場合は、鑑定して採取する予定。

 あと、水源があれば、念のため水筒にも補給しておこうと思っている。


 半径20mぐらいの円周を走り始めるが・・・いや、5歳児のサイズで森の中って走りにくいというか、走るどころじゃないですね。

 倒木や草や木の根っこや岩と・・・障害物だらけで、もう完全に障害物競走のハードモード。

 しかし、それでもこの体の性能が良いらしく、身長より高い1.5mぐらいの倒木に、軽く飛び乗る事が出来る。

 半周ぐらいで、森の中とこの体に慣れ、常時鑑定を発動しながら走って行く。


 まだペースは遅いけど、1周目を完了する頃には、


≪ピロリン♪ スキル:鑑定Lv2を取得しました。≫


とアナウンスが流れる。


 半径30mぐらいに移動して、また1周。


 ここまでで、果物の木を3種類、食用可能な茸を多数発見した。


 勿論、多少多めではあるが、後の事も考えて、採り尽くさないようには配慮しているよ。

あ、普通に毒キノコも発見したんだけど、鑑定結果の毒の強さに冷や汗を流してしまった。

 一口サイズを口にすると、10秒であの世行らしい。


 半径40mを1周しようと思ったが、ここら辺だと、幾ら大木とは言え、ユグドラシルの木が殆ど見えない。チラチラと中心部分と距離を気にしながら走っていると、


≪ピロリン♪ スキル:マッピングLv1を取得しました。≫


≪マッピングを常時発動しますか? はい/いいえ≫


と頭の中に出て来たので、ここは迷わず、「はい」を選択。


 すると、頭の中に視界とは別のウィンドーが現れ、ユグドラシルの木も含めた、マップが表示される。

 どうやら、自分が通過した半径20mのエリアがマップされているらしい。

 うむ・・・これは便利!

 これなら、ユグドラシルの木が見えなくても周回する事が出来そうだ。


 また移動を開始し、マップと鑑定を平行して行おうとしていたら、


≪ピロリン♪ スキル:多重処理を取得しました。≫


とアナウンスが流れる。


 それまで苦戦していた、マップと鑑定の平行処理だが、苦にならず、処理出来るようなった。

「良いのかな?こんなに簡単にスキルを取れて・・・。所謂チートかな」とちょっと後ろめたい気にはなったが、せっかくの異世界、楽しく、安全に過ごす為だしと、素直に女神に感謝する事にした。


 これで、半径60mまでのマッピングが完了した訳だ。


 次は、小太刀を使った素振りと型の稽古を行う。

 初日に比べ、体に馴染んだのか、筋力全般が上がったのか、小さい手でも小太刀を振り回す事が出来るようになっていた。

 稽古初日と言う事で、軽めの素振り500回と、型の稽古を30分をこなし、30分程クールタイムを入れる。


 次は、魔法の訓練に移る。魔力操作で体内の魔力をグルグル回してみる。

「そういえば、ラノベで魔法と言えば、身体強化魔法って定番あるよな。ラノベを手本としてるなら、身体強化も出来るんじゃないか?」

と、魔力操作で身体を強化するイメージを魔力に伴わせ、手足の指の先まで高速に魔力を回す。


「お、なんか軽い感じがするな・・・」と、軽くジャンプすると、驚く事に高さ5mぐらいまで飛びあがった。

 元の世界の忍の訓練では、高さ3mぐらいまで壁を蹴って、ジャンプする事は出来たが、流石に何もない所で5mは無理だった。


≪ピロリン♪ スキル:魔力感知Lv2を取得しました。≫

≪ピロリン♪ スキル:魔力操作Lv2を取得しました。≫

≪ピロリン♪ スキル:身体強化Lv1を取得しました。≫


 ほう、これもスキルになるのか! つまり意識して魔力操作しなくても、スキルとして身体強化が使える感じなのかな?


「元の世界で考えれば、随分人外な5歳児になってしまったなw」

と呟く海渡だったが、実はこの世界でも既に「人外」枠を一歩踏み出している事に

気付いては無かった。

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