第8話

 気が付くと、仰向けに地面に倒れていた。太陽の高さから、昼時である事が判る。

 起き上がろうとしたが、体が怠く、地面にぶつけた後頭部が痛い。

 後頭部をさすりながら、体を起こし、胡坐をかいて座る。


 横に落ちてる、「魔法の手引き」を引き寄せ、再度11ページ目を開く


------11ページ目~前の続き~-----



 どう、魔力が集まってきたのを、感じた?

 あ、でも先に言っておくけど、あまり最初は集め過ぎちゃダメよ?

 暴発したり、一気に魔力が枯渇して、意識失っちゃうからね? 徐々によ!徐々に!!

(「遅せーーーよ!!(怒)」と本を殴る。)


 で、魔力を集めたり、体中を高速で巡らせたりする鍛錬をすると、魔力操作スキルが取れます。

 普通、魔力操作スキルが取れるまでは、早くても1~2ヵ月、遅いと数年掛かる人もいるから、根気よくやってね。

 まあ、海渡君はジーナ特性遺伝子のお陰で、多分数日で取れる筈よ!!

 これで、魔法を使う準備出来るって訳よ。

(そして女神ジーナが腰に手を当てて、「えっへん」と胸を張ってる挿絵)

----------------------


 まあ、結界のタイムリミットがあるので、あまり気長には出来ないのだが、これは日々鍛錬をして早めにスキルを取れるように、頑張ろう。


------12ページ目-----

■魔力の増やし方

 魔力量の増やし方なんだけど、これは簡単だお! 魔力って使えば使う程、徐々にだけど内包量が増えていくのよ。

 種族にもよるけど、伸び盛りは大体、5歳~15歳までの10年間が勝負よ!

 海渡っちは、私頑張っちゃいましたから、最初の魔力量が他より大きいけど、魔力量はあればあるほど、出来る事が増えるから、日々増やす意識を習慣づけると良いと思うの。

 (おいおい、呼び名が、ドンドンくだけて、海渡っちになってるよ)


 で、増やす方法だけど、魔力を使えば使う程、増えるから、毎日枯渇寸前まで使えば良いだけ。

 魔力は枯渇しても大体5時間寝れば、満タン復活するから。


 魔力ポーションってのもあるけど、毎回飲むとコスパ悪いからね。

 アイテムボックスに念のために、魔力ポーションが入ってるけど、もしもの際に取っておいた方が安全だから、魔力量を増やす為には使っちゃダメだよ!

 まあ、そのうち、自分でもポーション作れるようになるだろうけどね。

(布団で寝る俺の口にガソリンスタンドのホースが突っ込まれて、チャージされてる挿絵)


----------------------


 ここで、「ぐーーー」っと腹が鳴る。あ、飯食ってなかった。


「取り合えず、体怠いし、作るのキツイから、女神シリーズ行ってみるか。」と、

女神お勧めのフルーツ盛り合わせ、女神お勧めの保存食、女神の好物たこ焼き を1個づつアイテムボックスから取り出してみる。

 女神お勧めのフルーツ盛り合わせ・・・これ、あれだな、病院とかに入院した人に持って行く籐網カゴのバスケットだな。ご丁寧にリボンが結んであるし。

 果物自体は、リンゴっぽい物、バナナっぽい物、マンゴーっぽい物、桃っぽい物、イチゴっぽい物、ブドウっぽい物、あとは良く判らないトゲトゲした物が入ってる。

 でも色は、地球のそれと違う。


 取り合えず、湯気の出てるたこ焼きを食べてみる。

 うん、美味しいね! 地元で食べるたこ焼きよりも美味しく感じるね。

 ハフハフしながら、小さい口で平らげて行く。

 喉が渇くので、アイテムバックからバックパックを取り出し、中の水筒から水分補給。


「残り、半分切ってるから、早急に水を補給しなきゃな・・・。」


「さて、お次は女神お勧めの保存食かな?」


 ワンセットで、箱に入ってるんだが、開けると・・・


「あ、これ完全に軍隊のレーションだな」


 1食分がセットになってるんだけど、紙に包まれた乾パンみたいな物と瓶詰のスプレッド。

 蓋の閉まってる2本の瓶に謎の紫の液体と具材の瓶が木製の茶碗に入ってて、スプーンが付いてる。

 あと、もう1つ皮?の袋の水筒と木製のコップ。

 そして紙で包まれた茶葉。微量の塩と胡椒の紙包みもあった。

 あと、干し肉。


 箱の蓋の裏には、挿絵付きの説明が書いてある。

 説明に従って、木製の茶碗に瓶詰めの具材と謎の液体を入れ掻きまわす。


 すると、不思議な事に、湯気が出始め、毒々しい紫だった液体の色が、具材と混じった事で、クリームシチューっぽい白っぽい色へと変わる。


 湯気と共に食欲をそそる匂いが登る。

 スプーンで一口掬い口に運ぶと、口の中一杯に濃厚なチーズぽい味と、肉の旨味が広がる。

 今度は乾パンを取り出して、浸して食べると、これまた乾パンのほのかな甘味と合わさり、絶妙に美味い。

 あまりの美味さにガツガツと貪るように完食しちゃいました。

 あ、スプレッドはジャムっぽいフルーティーな味で、乾パンに付けると、これまた不思議な事に硬かった乾パンが、柔らかいトーストっぽい感触に変わって、美味しかった事を付け加えておく。


 結構、シチューと乾パンだけで腹いっぱいになったんだが、干し肉も少し齧ってみると、スパイスと塩が効いた物でこれまた絶品。

 ちょっとビール欲しくなる感じ。

 満腹になったので、干し肉は後で小腹がすいた時の為に、残しました。


 食後の一服という事で、謎の茶葉を試す事にする。説明によると、木製のコップに茶葉を入れ、革袋の水を入れると書いてある。


 そして、コップの横に書いてある魔法陣に魔力を流すらしい。

 さっき、ぶっ倒れた事もあって、ちょっとビビりつつ、魔力操作で少し魔力を指先に集め、魔法陣に触れてみると、薄ぼんやりと魔法陣が光り、自ら湯気がでて、紅茶ぽい色に変わった。


 口で息をかけて冷ましながら、一口。これまた美味しい紅茶。香りが凄く良い。


「これ、日本でも高級紅茶店とかで売ってるか微妙なレベルの紅茶じゃん。」


 満腹感に浸りつつ、怒涛の2日間を振り返る。


「そう言えば、一人暮らしのアパートとか、両親の事とか、研究室の事とか・・・どうなったんだろうか?」


「連絡の取りようが無いし、滝の横にメモを残して来たけど、迷惑かけちゃったなぁ・・・。」と、思いをはせる。


 まあ、しかし、なっちゃったもんはしょうがない。戻りようが無いから、こちらから手を合わせ、謝るぐらいしかないと、気持ちを切り替える。


「まあ、今は5歳児だしw せっかくの異世界、楽しまなくちゃね」


 本来の海渡の性格だと、もっとクヨクヨ考え込む質だったのだが、異世界に来て、遺伝子改造された肉体のせいか、以前に比べポジティブな性格になっている事に、本人は気づいてなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る