第4話


「ここは何処だ??」


 落下までと全く違う周囲の景色に驚きつつも、瞬時に現状把握と、これからの行動の優先順位を考えていく。



 ここが、鏡山どころか、地球上ですら無い事を、まだ海渡は知らない。

 周囲を見渡しても何も無い。取り合えず、消えた魔法陣のエリアから横に移動し、床に座り込んだ。

 ヘルメットを脱ぎ、バックパックへ仕舞い、落ち着く為に水筒で水分補給を行う。

 突然前方で光の柱が輝いた。

一瞬目を背け、次にゆっくり目を開けると、白いギリシャ神話風の衣を身につけた金髪の綺麗な女性が、そこに居た。

 身長は170cmぐらい、歳の頃は22歳ぐらいだろうか? 白い肌に非の打ち所がない程整った顔、しかし冷たげな印象ではなく、見る者を包み込む様な優しさが感じられる顔。

 あまりの美しく神々しい姿に、ポカンと口を開け、水筒を手に持ったまま、暫くフリーズしてしまった。


「こんにちは、冴島海渡さん」

ニコっと笑顔で、優しい声で喋りかける神々しい女性・・・いやもうこの際、女神で良いだろう。


「冴島海渡さん、聞こえてますか?」


思わず「美しい・・・」と呟く海渡。


「まぁ、ありがとうございます。お褒め頂くのは数万年振りです。」

と、女神は少し頬を赤く染め、笑顔で答える。


 ハッと我に返り、

「あ、初めまして、こんにちは。何故名前を? ん?あれ?もしかして、俺死んだ?? 死後の世界??」

とさっきまでの状況を思い返す。


「私はファンテスタと名付けた世界を管理している神々の一柱で、ジーナと呼ばれてます。

 ここは、我々の世界の神々のファンテスタ神域のエントランス。

 そして、冴島海渡さん、ご安心ください。あなたは亡くなってませんよ。

 肉体も魂もちゃんと存在してますよ。

 今から順にご説明させていただきますね。」と。


 このファンテスタ神域には、幾つかの星に神々が管理している知的生命体が存在する星がある。本来であれば、海渡は『アトランティス』と呼ばれる星へ、転移される筈だったのだが、

「アトランティスは地球時間で言う所の約3000年前に滅んでしまいました・・・」

と、女神。

 文明や技術は、地球の現在よりも遥かに進歩し、貧困も無く、働かなくとも何不自由なく暮らしていける様な所まで発展したアトランティスではあったのだが、

しかし、その結果、アトランティスの人々は、生きる意欲を失い、生存本能を忘れ、新しい生命へと命のリレーを繋ぐ事もなく、種としての役割を終えてしまった。

 そして、彼らの残した文明のエネルギー供給システムは放置されて、耐用年数の10倍が経過した結果、爆発し、連鎖反応で星全体が消えた。

海渡が、アトランティスに転移されなかったのは、既に星が消滅した事によるセーフティー機能が働き、管理者(神々)の元に送還されたらしい。


「通常であれば、このような事態は起きないのですが・・・。

 通常生きてるダンジョンコアの転送座標は、常に相互更新されるのですが、今回地球のダンジョンコアのエネルギー切れで、もう動く事が無い筈だった為、転送座標更新されてなかったのです。」


 ん?? ダンジョンコア?? あれか?ラノベに出て来るダンジョンにあるコアの事か?


「そうです。

 日本のラノベって凄いですよねぇ~。

 結構真実に近い設定が溢れてますし。

 ああ、一応神なので、思考を読めるのです。

 冴島海渡さん 海渡さんと御呼びさせて頂きますが、海渡さんの疑問に色々お答えさせて頂きますね。」


 そして女神から語られる、地球の歴史の真実・・・


 地球の現在の人類は、ファンテスタ神域の模倣で作られ、時々時代時代に訪れるファンテスタ神域からの訪問者により、更なる発展を遂げた事。

 現在では、地球独自の文化が発展し、現在に至る事。地球に作られたオリジナルのダンジョンと、それを形だけ模倣したピラミッドや古墳等・・・。


「うーーん・・・、これを知っちゃうと、もう考古学意味ないね はははは・・・。」

と海渡は、乾いた笑いを吐きだした。


「と言う事でして、今回は緊急措置でここへ転送させて頂いたのですが、残念な事に地球には既に、現在稼働しているダンジョンコアは無く、今回海渡さんが発見したダンジョンコアも、超新星爆発で偶然チャージされ、今回の転送でエネルギーが尽きた状態です。

 地球のダンジョンコアは、地球の神々の管轄下の為、私どもには何とも出来ないのです。

 非常に言いにくいのですが、既に地球へ帰還する方法は、今の所ありません。」


マジか・・・ と言う事は、ここで生きていく?


「で、お願いなのですが、私どもが管理している、比較的新しい世界がございまして、ラノベをご存知の海渡さんに、そちらのテスターと言いますか、色々とインプレッションを頂ければと。」


 また、ラノベって出てきたな・・・もしかしてラノベ好きなのか? って事は、その世界って・・・


 地球の神々が手本としたファンテスタ神域のアトランティスだったが、結局は滅んだ為、新しいテスト環境を作ったらしい。

 しかも、そのネタ源は日本のラノベにあるファンタジーらしい。

 驚く事に、女神ジーナはラノベのファンらしく、目を輝かせて熱く語られたよ。

「やっぱ、異世界と言えば、魔法と剣は必須ですよね❤」と。


 ああ、やっぱりそう来たかwww まあ、俺もラノベは嫌いじゃない。

 魔法とかってあれば使ってみたいし。


「では、そちらの世界へ行って頂けると言う事で、宜しいでしょうか?」


「ああ、真実知っちゃって、今更地球に戻って考古学も意味ないし。

まあ元々イン〇ィー・ジョーンズの冒険に憧れて、この道に入った事だしな。

魔法とかって、俺も使えるようになるのか?」


「ええ、しかし今の体のままですと、その世界に順応出来ないので、魔法は使えないです。でも、ご安心下さい! その体をベースに良い感じに改造出来ますので❤」


おっと、なんか改造とか不信なキーワード出てきたぞ!?


「(ふふふ・・・腕が鳴りますね・・・)」

とか、女神が呟いてるし・・・。



「まあ、この際、何でもありだなw よーし、行ってみようか!」

と答えた。


「では、一旦魂と肉体を切り離しますね。」

との声と同時に、手足の感覚も目線もいきなり切り替わる。


あ、俺の体が目の前にある・・・。


「海渡さんは、今魂の状態でして、今から体の遺伝子操作を行います。

 魂が入ったまま遺伝子操作しますと、その苦痛に精神が保ちませんので。

 では始めます。」


 目の前の肉体が、白い光に包まれて行く。

 結構な時間が流れているようだが、魂だけの状態だとその時間が長いのか短いのか、全くわからない。

 女神へ目をやると、美しいが、額に汗をにじませ、両手を前に出したまま目を瞑って、ブツブツと何やら呟いている。

 時々、「あっ・・・」とか、「ああ~・・・」とか、「むふふ」とか聞こえる。


 やめてーー、怖いから、やめてーー。


 それから暫く時間が経過したと思うと、いきなり肉体を包む光の中から

「パンッ!!」

と破裂音がして驚くと同時に意識が飛んだ。

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