第2話

 朝、目覚めて、滝の音が聞こえない事に気付き、チャックを開けてテントの外に出る。


 すると、滝が完全に干上がっていた。

 慌てて撤営し、滝の周囲の探索を開始する! ・・・までもなく、滝つぼを見ると底部分に大きな横向き(滝の上流向き)の洞穴が見える。


 不思議な事に、滝が夜中の間に枯れて、時間もそんなにたってないにも関わらず、既に水溜まりさえ見当たらない。

 場所が場所だけに、一瞬どうすべきか考えてはみるが、イン〇ィー・ジョーンズに憧れた海渡の考えは、Go!の一択だった。

 一応、万が一の事も考え、空のペットボトルに、昨日の伝承とこれからの自分の進路のメモを入れ、テントを立てた場所に枝を刺し、そこにペットボトルをバンダナで結び付けた。



 バックパックから、洞窟探検用のヘルメットとLEDヘッドライトとアクションカメラと皮グローブを取り出して装備し、動画撮影開始。

 滑る岩を慎重に降りて行く。

 どうやら穴は2mぐらいの深さで横向きに上流へと行くようである。やはり直径2mぐらいの穴だった。

 洞窟の中は、湿気はあるものの、水自体は完全に引いている。


 入り口付近こそ、水分で滑りやすかったのだが、10分も歩く頃には、やや登り坂となり、中も乾いていた。

 不思議な事に、洞窟内部の壁がボンヤリ光っており、ライト無しでも問題なさそうではあった。

 しかも、衛星画像と同じようにほぼ直線の洞窟。 あきらかに、人工的な何かに思える。

 2時間ぐらい歩いた頃、頭上に垂直の穴が見えて来た。青空が遥か上空に小さく見える。

 実はこの穴が山頂付近の滝に繋がる水源の穴だったのだが、穴の中の海渡には判らなかった。



 更に歩く事、1時間すると、大きな明るい空洞に行き当たった。

 この空洞の床だが、岩のタイルを組み合わせた明らかに人工物であった。

 この半径50m程の空洞?ホール?はドーム状で、中央の床に大きな縦穴があり、そこから光が漏れ、ドームの天井に反射して明るい事が判った。


 一応、念のため、ガイガーカウンターで測ってみたが、放射線は反応しなかった。

 竪穴の周囲には、何やら骨が落ちている。

 付近には何かの骨?が落ちていた。


「人骨ではないな、それぞれが太いし大きいな・・・ 動物? 熊より大きいな。 形は猪の頭蓋骨に似てるような・・・」


 そして最大の関心事項である、中心部の穴へと足を進める。

穴の直径は3m程度で、どうやら何かによって突き破られた際に出来た事が、穴の周囲から伺える。


「もしかして、これが伝承の星が落ちた穴?」


 是非とも内部に降りたい所なのだが、命綱無しでは穴の縁まで行くのも危ない気がする。

 30mのロープは2本持参しているが、どこにどうやって固定するかが問題である。

 生憎、ロープを結べるような突起はタイル状の何処にもない。

 辺りを散策したところ、穴から5mぐらいの所に、タイルの一部が欠けた部分を発見する。

 ここで、海渡の道場で培ったスキルが活きて来る。

 自作したフックを穴にねじ込んで、降下用の装具にセットし、穴へと向かう。

(まあ降下用の装具が無くても、ロープだけでも身体能力的には十分なのであるが)


 下から漏れてる青白い光のせいで、深さが判らない。取り合えず、ロープ2本で降りれる所まで降りてみる事にする。

 勿論、万が一の事を考えて、バックパックは背負った状態である。

 20m程降下した所で、光源が見えて来る。

 もう一本のロープを延長し、更に30m降下する。床が見えてきた。

 が、約6m程ロープが足りていない。


 海渡の身体能力だと、着地面が綺麗なら、4mぐらいなら問題ない。

 ロープの末端からぶら下がって降りれば、約4m・・・但し、ロープを使って同じルートで帰る事が出来なくなってしまうのが、問題である。


 ただ、普段は割と冷静で慎重な海渡ではあったが、好きな事、今までの人生で目標にしてきた大冒険を目の前にしている訳で、これまでの人生で、テンションMaxであった。 


「よーし、行ってみようかw」


 普段にないノリノリのテンションのまま、ロープを離す。

 目算では光源の横1mぐらいに着地出来る筈である。


 が、海渡のせいではないのだが、6m足りないと思っていたロープは、実は10m足りなかったのである。

 理由は光源のある部屋の天井部分にあった、結界によって、屈折率の違いが生じ、目測を誤ったのであった。


 落下中の海渡は、結界を破壊し、減速・・・結果無事に着地となった。


 筈だった・・・。

 着地地点に、転送魔法陣さえなければ・・・。


 着地の瞬間に、辺りを見渡したのが、10畳程の四角い部屋だった。

 着地と同時に、足元の魔法陣が赤く光り、内側と外側の良く判らない文字?が逆方向にグルグル回り、瞬時に重力が消えたのだった。

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