第七十九話:乙女

「それでですね。拓斗さまはこうおっしゃったのです。『別に、アトゥは一緒にいてくれるだけでそれでいいよ』と。その言葉を聞いて私はやっぱり拓斗さまは世界で一番かっこよくて素晴らしいお方だとその忠誠心を――」


「ねぇアトゥちゃん……」


 一人の少女による盛大な演説が繰り広げられている。

 それは先程から止まることはなく、次から次へと終わることなく続いていく。


「ああ、素晴らしいと言えばこの話もありました。私が将来を見据えて料理を勉強しようと一大決心した時の話です。こっそりと練習していたのですが拓斗さまが何処からか聞きつけてきて私の手料理を――」


「アトゥちゃん? ねぇアトゥちゃん!」


 一回目は控えめに、そして次は少しだけ強い口調で。

 困惑した魔女による物言いが先程から入れられるが、ヒートアップしたその演説は止まることなく、寧ろより熱狂度合いが高まっていく。


「それで上手に出来なかった私に拓斗さまはこうおっしゃったのです。『アトゥが作ってくれた料理ならなんだって――』」


「いい加減話をやめろぉ! この色ボケがぁ!!」


 演説の高まりが最高潮に達したとき、同じく怒りが最大に高まったエラキノの怒声で誰も求めていないアトゥのお喋りがようやく止まる。

 いや、仕方なく止めたと言ったほうが正しいだろう。

 現に彼女は楽しいひと時に水を差したとばかりに嫌そうな視線をエラキノへと向けたのだから。


「……あら? まだいたのですか魔女」


「魔女じゃない! 魔女だけど……エラキノって名前があるんだからちゃんと名前で呼ぶこと!」


 バンバンと机を勢いよく叩きながら叫ぶが、対するアトゥはご覧の通り梨の礫。

 彼女はここに来てエラキノからイラ=タクトの情報を求められるや否やひたすら彼との思い出話に花を咲かせていたのだ。

 さしもの魔女エラキノもこれには辟易としてしまう。

 我を忘れて怒りのまま叫ぶのも無理はないだろう。

 なお対するアトゥは悪びれた様子もない。当然反省もしていない。


「それでどうしましたか魔女? いまとても良いところだったんですよ。せっかくこの私が直々に拓斗さまとのほのぼの仲良しエピソードを教えてあげようというのに無粋極まりない。そもそも拓斗さまのことを聞きたいと言い出したのは貴方たちでは?」


「いや、まぁそうだけどさ。聞きたいのはそういうおノロケ話じゃないんだよなぁ……ってか! アトゥちゃんはエラキノちゃんたちの陣営でしょ!? なんで寝返ったのに敵であるイラ=タクトとの思い出話をのんきに喋ってるの!?」


「敵味方に引き裂かれてもなお惹かれ合う男女……ロマンチックでありだとおもいませんか?」


「こ、この恋愛脳がよぅ……!」


 エラキノの頭に筋が入る。

 一見して笑ってはいるが頬が引きつっておりそもそも目が笑っていない。

 大切な友人が荒ぶる姿を見かねて隣に座っていたソアリーナが慌てたように宥めすかすが、それでもなおエラキノの怒りは収まる様子はない。

 そんな魔女に対して同じ魔女であるアトゥは胡乱げな視線を向けると、何についてか分からぬ大きな大きなため息を吐き、まるで無知な愚者に教えきかすかのように先程からよく回る口を再度開く。


「まぁ確かに私はすでに貴方たちの味方。口惜しいことに拓斗さまとは敵同士。そこに違いはありません。戦場で一度相まみえれば一切の慈悲無くその刃を突きつけるでしょう。ただ! 申し上げるのなら! 私が拓斗さまに抱くこの想いもまた本物なのです!」


「エ、エラキノちゃんは非常に不安になってきた……」


 聞いてもいない宣言を行いドヤァっと胸を張るアトゥ。本人は満足げであったが、とうのエラキノはすでに限界だ。

 ついには頭を抱えてその場でうずくまってしまう。

 隣で彼女を励ますソアリーナもこればかりはどうしようもない。

 こんな頭お花畑な娘の夢見心地な妄言を聞くために呼んだのでないのだ。話は一向に進んでいなかった。


「で、先程から煩い魔女はおいといて。そこの聖女。貴方のほうが話ができそうですね。何か質問は? 拓斗さまのことに関してのみ答えて差し上げます」


 エラキノが強制終了してしまったことを良いことに、次の矛先は隣で第三者を決め込んでいた聖女へと移る。

 質問が自分に投げかけられたことにソアリーナはビクリと肩を震わせる。

 思わず助けを求めるようにフェンネへと視線を向けるが、彼女は少し離れた場所で壁にもたれ掛かりながらこちらの様子を観察するばかりで一向に会話に入ってくる気配はない。

 ここは正念場だ。質問内容に気をつけなければまたぞろ一人劇場が始まってしまう。

 恋する娘の演目はすでに聞き飽きた。重要なのは今後の自分たちの命運を左右する戦略的な情報であった。


「えっと、まずイラ=タクトが生きているかどうかを知りたいのです。貴方の考えを――」


「生きています」


 吟味に吟味された質問が終わるより早く、その答えは明確なまでに返ってきた。

 先程のノロケぶりとは打って変わって真面目な様子だが、その発言を読み解く限りアトゥがイラ=タクトの生存に確信を抱いているのは特段不思議なことではない。

 視線で先を続けろと言われ、思案する。

 次は何を聞くべきだろうか。そもそも彼女は何を持ってしてイラ=タクトの生存を確信するに至ったのか。その点に関しては聞いてみたいところだ。


「……理由はー? あの状況で生きてる訳ないじゃん。そもそも何処の誰が心臓ぶち抜いたんだっけ?」


 少しばかり回復したエラキノがソアリーナに代わりにすぐさま鋭い指摘を投げかける。

 ここまで断言するということは、何らかのカラクリが間違いなく存在するはずである。

 確かに心の臓を貫き焼き尽くした。その中で生存するとは果たしてどの様な仕組みや能力を用いたのか。


「拓斗さまが生きている理由ですか? 理由は……しいて言うのならば拓斗さまだからですね。それ以外にありません」


 だが答えにならない答えが返ってきた。しかも都合の悪い部分は完全無視。それどころか無駄に自信満々だ。

 またコレだ。仲間であるが故に嘘をついているという可能性も低く、どうやら本心からそう思っている様子。

 これではどうしようもない。


「理由になってないぞぉ……それにしても、破滅の王の尖兵たる汚泥の魔女がこうも色ボケ恋愛脳だったなんて、エラキノちゃんはショックだなぁ。それで今までよくお仕事できたね♪」


「私は常に完璧に責務をこなしてきましたよ。一度たりとて失態や我が儘で拓斗さまを困らせたことはありません」


「ほんとぉ? 絶対ウソでしょそれ……」


 彼女たちは勘違いしているが、そもそもこれがアトゥの素だ。

 英雄という役割があることである程度の自制が効いていたのだが、今やそれもない。

 英雄としての責務も配下としての義務も、魔たる者としての本能も存在しなくなった彼女は今やただのイラ=タクト大好きっ娘でしかない。

 使えると確信し満を持して投入した手札であったが、とんでもない誤算であった。


「あ、ついでに申し上げるのなら。拓斗さまが生きていることは確実ですが、その方法を私は一切知りません。これは嘘や偽りではありませんし、今や貴方たちの仲間である私にそれを隠す必要など何処にも存在しません。むしろ私がどうやったのか知りたいくらいなので悪しからず」


「では破滅の王イラ=タクトは、貴方に決して知られることも明かすこともなく、何らかの方法であの状況から生還もしくは復活したとおっしゃるのですか?」


「ええ、私も驚きですが拓斗さまなら可能でしょう。流石拓斗さま、敵ながらあっぱれです!」


 どこかうっとりした表情で虚空を眺めるアトゥ。

 また自分の世界に入りそうになる夢見る娘を必死でこちらの世界に呼び戻すための言葉を思考の海から絞り出すソアリーナは、あまり配慮が行き届いていないと理解しながらも彼女が一番反応するであろう言葉を口にする。


「あ、あの! アトゥ……さんが知らないとおっしゃるのであれば、やはり本当は破滅の王は滅んでいるのでは? その、貴方には酷な話かもしれませんが」


「ではどうして皆さんは私の助言を求めているのですか?」


 その言葉で、先程までのやり取りでどこか浮ついた気分だったある種の熱が急速に冷やされる。

 彼女の言う通り、当初の予定を外れて汚泥のアトゥから助力を求める時点で緊急事態だ。

 指摘にすぐさま答えられる者がこの場にいないことが、アトゥの言葉の正しさをこれでもかと証明している。


「もし本当に破滅の王イラ=タクトが滅んでいるのであれば、皆さんは順風満帆に国家の運営を続けることが出来たでしょう。多少の抵抗があったとしても貴方がたが使ったあの卑怯な技の前に敵はいません。そして私もあのまま夢に微睡み、決して目覚めることのない人形として終わりの日まで過ごしていたはずです。違いますか?」


 違わない。何も違わない。

 今までその破滅の王に対してのろけていたお前がそれを言うか?という気持ちは多分にあったが、だとしてもアトゥの指摘は正鵠を射ている。

 むしろどこまでも否定できぬその指摘の正しさが、彼女たちに置かれている状況の危険性をまざまざと見せつけてくる。

 薄暗い、決して光の下に出てこぬ闇が、何処からともなく近づいてくる気配がする。

 理解できぬという単純な感情は、彼女たちに不気味な恐怖を与えるに十分であった。


「だとしてもだよっ! エラキノちゃんたちはこの事件を解決しないといけないの! イラ=タクトが生きているかどうか知らないけど、負けるわけにはいかないってわけ! 分かる!? 負けられないの! 絶対に!!」


 癇癪をおこしたエラキノがヒステリックに叫ぶ。

 その言葉にアトゥは何かを考える素振りを見せると、やがて「うーん」と可愛らしい声音で顎に人差し指を当てながらなにもない天井へと視線を移す。


「普通に不可能なので早々に降参してはどうでしょう? 一応仲間のよしみとして助命の嘆願くらいはしてやります。拓斗さまも私のお願いならいくらか聞いてくれるでしょう。拓斗さまにとって特別な私からのお願いだから聞いてくれるんですよ? よって今ここで咽び泣いて喜び感謝なさい、私が貴方たちの仲間であることを」


 揺るぎない。

 完全にイラ=タクトが勝つと思っている。

 そして自分はちゃっかり許され助けてもらえると心から信じている。

 その曇りなき眼はイラ=タクトを一切疑っていなく、寝返った先で仲間となったはずの自分たちの敗北を確信している。

 その自信がどうにも腹だたしい。

 もう限界だとばかりにエラキノは思いつく限りの嫌味を並べ立てる。


「そもそもアトゥちゃんはイラ=タクトを裏切ってここにいるんだよね? エラキノちゃんたちの力によって洗脳されたとは言え、破滅の王がそんな裏切り者を許すかな~? もしかしたらもう愛想つかされてるんじゃない? 他に女作ってるかもかも? 残念でした、振られちゃってかわいそー♪」


「それはありえません。拓斗さまは何時だって私に優しく、私の事を理解して、私のことを受け入れてくださるのです。今回だってきっと全て上手くいき、最終的には拓斗さまより心配したよと優しくお声がけいただけるでしょう。どんな時でも私のことを第一に考えてくださる。それが拓斗さまなのです!」


「理解のある彼君じゃねぇんだからよぉ! そんな乙女の妄想みたいなことになるわけねぇだろ現実を見ろよぉ!」


 テーブルをドカッっと蹴り上げる。

 魔女の膂力で蹴り上げられたそれは、有り余る暴力を受けて天井に突き刺さろうとするが……、その前にアトゥの触手によって受け止められる。


「彼君だなんて! 拓斗さまと私はまだお付き合いはしていません! も、もちろん! そ、その、そういう関係になれればとはおもっていますが……」


 指先をもじもじとさせながら頬を染めテーブルをそっと元あった場所に戻すアトゥ。

 奇遇なことに相対するエラキノも顔を朱に染めている。だが無論その理由は正反対だ。


「楽しそうだね! 楽しいよね! 人生バラ色だろうね!! よかったねアトゥちゃん! お互い命張ってるって分かってるの? 殺し合いなんだよ!?」


「むろん理解の上で言っているのです。貴方たちこそ分かっているのですか? いま受けている攻撃の正体もなにも、一切判明していないのでしょう?」


 図星を突かれた形になった。

 基本的に色ボケ状態の魔女アトゥではあるが、要所要所で鋭い指摘を放ってくる。

 確かにすでにペースは相手側にあるといえるだろう。

 こちらは一方的に被害を受け、後手に回っていると言わざるを得ない。

 不味い状況であるという事実は、いまさら言われずともここにいる全員が承知だ。


「私は許されるでしょうが、皆さんはきっと全員殺されますよ。助ける理由がどこにもありませんからね。私に言わせれば、皆さんこそ当事者意識と危機感が足りません。相手はあの拓斗さまなのですから」


「ならばこそ、私達は抗わないといけないのよ魔女アトゥ。教えて……貴方が知る限り、イラ=タクトの手札の中でこの状況を引き起こせる者や方法が存在しているのかを」


 フェンネがようやく口を開いた。

 ヴェールに隠れてその表情は見えないが、何か深い意図をもってようやくこの舞台に上ったようにも思えた。

 アトゥは少しだけ不思議そうにフェンネを見つめ、ややして先ほどとは打って変わって憮然とした表情でその名前をあげた。


「該当する人物が一人います。《幸福なる舌禍ぜっかヴィットーリオ》。敵国家の扇動と騒乱に長けた英雄です。かの英雄であれば欺瞞情報などで私たちを混乱させることも容易いでしょう。なお私が一番嫌いな英雄です」


「それが召喚されている可能性は?」


 フェンネが重ねる。初めて明確な情報がアトゥからもたらされている事実に、エラキノとソアリーナも固唾を飲んで見守っている。


「ないとは言い切れませんが、少なくとも私がいた頃に召喚された記憶はありません。現状の施設と研究度で生産は出来るので可能性は捨てきれませんけどね。……ただ、私は違うと思いますが」


 イラ=タクトの生存確信と同様に根拠のない勘によるものだ。

 だが今の所はその情報であっても十分である。この状況を引き起こせる存在が相手側に存在するという事実が明確にされただけでもこちらは一つ真実に近づいたことになるのだから。


「他に懸念すべき点は?」


「いくつかあるので後ほどお伝えします。……どうにも皆さんは楽観視がすぎるようですから私も心配です」


 アトゥは少し考えながら、目の前の娘たちが持つ言いようのない危うさに想いをはせる。

 この相談を受けた時、自分とタクトが『Eternal Nations』というシミュレーションゲームの能力を有した存在であることは教え伝え共有してある。

 だが表面的なゲームシステムの特徴以外にも彼女たちが知らない様々な事象が存在しているのだ。

 例えばマイノグーラがブレイブクエスタス魔王軍がもたらした金貨によって急速に揃えた軍事力。例えばフォーンカヴンとの同盟関係と武器供与。例えば満月にその力を最大化させ、狂気とともに無差別な被害を周りにもたらす姉妹のこと……。


 彼女が心から敬愛する拓斗がよしんばあの時に命を落としていたとしても、彼女たちの迂闊さが見逃せぬ火種としてくすぶり続けていたことは確定的と言えるだろう。

 本人たちは入念な準備を整えたと思っているようだが、何もかもが場当たり的すぎた。

 ただ強引に進められる能力があったからこそ、ここまで来られただけの話だ。


「みなさんと私は、まず拓斗さまが未知の方法を用いてこちら側に攻撃を行っていることを理解すべきでしょう。あらゆる状況を疑い、常に対処できるようにしておいてください。これより私も皆さんと行動を常に共にしますので決して離れないように。いまこの瞬間から戦いが始まってもおかしくないのですから」


「……そうね、警戒を高めるのは同意だわ。そして聞かせて汚泥のアトゥ。イラ=タクトが生きていると仮定して、わざわざコソコソ動く理由は分かるかしら?」


「――まぁ十中八九私の身柄でしょうね!」


 はぁ……と誰ともなくため息を吐く。

 それで終わりだ。これ以上はまたぞろのろけ話を聞かねばならぬだろう。

 否、彼女とて理解していないのだ。イラ=タクトが何をしてきているかを。


「アトゥちゃんは囚われのお姫さまってわけね。――ならもう少ししおらしくして欲しいものなんだけどなぁ」


「このご時世、そういうの流行りませんよ?」


「どういうご時世だよっ! ここはファンタジー世界なんだけど!!」


 嫌味も出尽くしたのか、適当に返事をしながらエラキノはいままでにもたらされた情報を吟味する。

 アトゥの言葉は相変わらずバイアスがかかりまくっていたが、だが彼女の身柄を求めてイラ=タクトがこの様な暗躍を重ねているというのはある種正しい推測かもしれない。

 あれほど入念な準備を行って取るに至った破滅の王がそのじつ生きているとは業腹だが、ここに至ってはその推測も受け入れなければならぬだろう。

 イラ=タクトは生きている。その前提で行動を起こすべきである。

 そして破滅の王は、何らかの未知の手段を用いて彼女たちが持つ絶対的な能力を封殺してみせたのだ。

 でなければ、ゲームマスターとしての能力を有するこちら側がここまで手こずるはずがなかった。


 エラキノたちが各々考え込む態度を見せていることから奇妙なまでに静かな時間が訪れる。

 そのまま永遠に続くかと思われた沈黙を破ったのは、自然な動きでピンと人差し指を立てたアトゥだ。

 その仕草に全員の視線が彼女に集まる。


「私が知る限り拓斗さまは間違いなく一般人で、王としての権能以外は物理的な力をお持ちでありませんでした。しかし、今起こっている出来事はそれらを全て否定している」


 アトゥは滔々と語る。

 イラ=タクトという人物が持つ危険性を。他ならぬ仲間の為に。

 拓斗は……彼は間違いなく一般人だった。『Eternal Nations』の指導者としての力を持つ以外はなんの変哲もない、重病によって若く命を落としただけのちっぽけな普通の人間。

 だが本来ありえないはずのことを成し遂げる。それを普通とは決して言わない。

 伊良拓斗は、異常だ。


「用心なさい。拓斗さまは私たちの理解が及ばぬ高みにいて、全てを理解して行動されていると言うことです。そう、敵である私を奪い去るために!」


 一番言いたい台詞を言い放ったアトゥは、むふ―っと満足気にソファーへと深く座り直す。話したいことを全て話し終えたのか無駄に機嫌が良い。


「はぁっ……。結局、何も分からず仕舞い。分からないことが分かっただけか。アトゥちゃんの役立たず……」


「いいえ、とても役立ちますよ私は。だってみなさんが生きながらえる唯一の助言が出来るのですから。――さっさと降参しなさい。それだけが生き延びる術です」


 そう断言し、満足そうに瞳を閉じるアトゥ。

 まだ話は終わってないとばかりにエラキノが彼女へと質問を繰り返すが、結局この後はイラ=タクトへの熱い思いを語られるだけで、本当に意味の無い時間がすぎるのであった。

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