第3話
依頼人の少女が去った事務所で、探偵は
呪われていると指摘された少女は
そして、依頼を
「さて、どうしたものかな」
その時、室内に据え付けられたARの通話装置が起動する。通知画面には
ARによって事務所内に描き出されたのは長い金髪をした
「あれ、探偵くん。依頼人はもう帰っちゃったの?」
鋼探偵は
「帰った。探偵も留守だ」
「何その堂々とした居留守」
白澤はたしなめるように人差し指を突き出す。
鋼は紙の新聞から目は離さない。
「社長様は忙しいんだろう?」
「多忙なのにわざわざ出向いてあげてるんだから感謝してよ。ほら、感謝を態度で現わせ」
白澤がARの手を近くでブンブンと振ると、手が新聞紙をすり抜ける。探偵が迷惑そうな顔をする。
「さっきの魔女、どうせ調べるんでしょう」
「盗み聞きはやめろ」
「業務の一環として監視カメラ網のチェックをしていたらたまたま目に入っただけです~」
金髪の少年は探偵が座る椅子の背に体をもたれかける。ARで描き出される少年の体がわずかにブレて椅子の背に透ける。
「で、あの子が言っていたイイズナ様って?」
「
「イズナゴンゲン?」
「山岳信仰をルーツとする神で、狐に乗った烏天狗の姿をしているとされる。その飯綱権現を信仰する
「へえ、すごい。狐ってそんなこともできるんだ」
「できるらしいな。その狐のこともまたイズナと呼ぶ」
「イズナねぇ」
金髪の少年はしばらく考える
「じゃあ、それでいいや」
「何?」
探偵は怪訝な顔をする。
「魔女は風見優だ。彼女が
「ただの女子高生が儀式の手順を整え、何遍も真言を唱えて他の生徒に呪いをかけたって? 本気で言ってるのか?」
鋼は読んでいた紙の新聞を手の甲で叩く。
「この新聞だって手に入れるのに大変苦労したんだぞ。小娘が人間の死体やら動物の生き血やらを集められるものか」
「苦労するなら、諦めて電子新聞にしなよ。……風見優って子はさるIT企業の社長の御令嬢なんだ。会社のツテやら何やら使ったんじゃないかな」
金髪の少年は冷たい目で鋼探偵を見る。
「それが真実だよ」
鋼探偵は嫌そうな顔で睨み返す。
「何かあるな」
「さあ、何も。真実は僕が言った通りだよ。君にできることは魔女にこれ以上の凶行をやめさせることだけ。化け物退治は得意でしょ?」
「言われなくともそうするさ」
鋼は追い払うように手を振る。
愛嬌のある笑顔を作った白澤が優雅に手を振り返すと、ARで描き出されていた彼の姿が消えた。AR通話が切れる。
探偵は煙草を揉み消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます