第22話

雪が降っていた…。

軒先でいつまで落ちてくるのかわからない雪を見ていた。勢いは増すばかりだ。


……軒先に逃げ込んだ時から、少し離れたところで男の子が泣いていた。

暫く経つが迎えが来たり、どこかに向かうような感じがしない。ただうつ向いたまま泣いていた。さすがに気になる。


「……キミ、もしかして迷子?」

『………………』


泣きながら首を横に振る。

どうやら迷子ではないらしい。


「誰かを待ってるのかな?」

『………』

「迎えに来てくれるパパかママかな??」

『…………』


迎えには誰かが来るようだが、親ではないみたいだった。すすり泣いていて話もままならない。


「ずっと待ってるの?」

『………うん』

「ずっと居たよね?」

『……ボクが呼んだんだ。だから迎えに来るし、来るまで待たなきゃダメなんだ』

「──来るまで待たなきゃダメ…か」


止む気配のない雪が降り続いている。


「いつまで待つつもり?」

『……来るまでずっと』

「理由があって来られないとしたら?」

『ボクが呼んだんだ。だから待たなきゃダメなんだ』

「ずっと待ってて欲しいのかな?」

『あいつ泣き虫なんだ。もしボクが居なかったら泣いちゃうよ』

「──キミも泣いてるじゃないか」

『………』

はここでずっと待ってて欲しいなんて思う人なのかな?」

『……』

「……キミは」


自然と浮かんだ言葉を口にする


「──キミは俺なんだね」


肯定も否定もないまま、ただ下を向いたままの子供に続けた


「忘れることと引きずることは違うよ」

『……』

「俺もやっと気づいたんだけどね」

『……そうなの?』

「独りじゃ気付けなかったかもしれないけど、気付かせてくれる人が居たんだ」


真紀の両親や三島が居たから俺は救われた

そんな存在に自分がならなきゃならない気がした。


『……でもボクのせいなんだよ?』

「違うよ、キミだけのせいじゃない」

『でも……』

「少し立ち止まったり、振り返って後ろを見てもいい。でも…」

『でも?』

「前を見ることをやめちゃダメなんだ」

『……怖いんだ』

「うん、後ろになら足あとが残ってるからだよね?自分と真紀の歩いた足あとが」

『……うん。前は真っ白で怖い』

「俺が歩くよ」

『え?』

「俺が歩くから、ゆっくりでいいからその跡をついてくればいい」

『……いいの?』

「もちろん」

『…ありがとう』


その時、ふと真紀の声が聞こえた気がした


───居なくなったら寂しい?


俺は子供と顔を見合わせて同時に叫んでいた


「寂しいに決まってるじゃないかぁぁぁ!」


そして、少しだけ笑った。


真紀、待たせてたのは俺だった。

でももう大丈夫。これからは自分で歩くよ。

足あとは自分の歩いた跡にできるんだから。



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