第13話
『おかえり、和也君』
退院して両親に送られて真紀の家に着くと、真紀の両親が迎えてくれた。
……おかえりか。
とてもただいまなんて言えなくて
「…どうも」
と、愛想のない言葉しか出てこなかった。
真紀の部屋はすべてがそのままにしてあるらしい。勝手に入るのとは種類が違うが、罪悪感しかなかった。本当なら好きな人の部屋なんか嬉しくないわけがないのに。
ここで真紀は暮らしていた。
ボクの知らない真紀がここに確かにいた。
そう、ボクが殺すまでは。
葬儀の前の日、たまたまボクは真紀のお父さんが泣いているのを見てしまった。
あの姿を知っていたから余計にボクを責めないことが辛かった。
ふと、机のそばにあるコルクボードに目が止まった。そこには同級生だろう友人たちと笑っている真紀の写真が貼ってあった。
その笑顔は昔から変わらない。
小さい頃からボクの知る、1番大事な人の笑顔。
『…居なくなっちゃうの?』
ボクの引っ越す時に言われた真紀の言葉を思い出した。
そしてその時、あることに気づいた。
ボクは……泣いていた。
真紀が居なくなって初めて泣いていた。
殺した本人が泣くなよ……と、真紀は思っているだろうか。
「…居なくなったのは、そっちじゃないか」
…なぁ、真紀。
今だけは許してほしい。
涙が止まったら責めてくれて構わないから。
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