第11話
ここはどこだろう?歩き続けながら思った。
雪で白くなった街は、どこか綺麗で、どこか寂しくて、どこか静けさが煩わかった。
……どこだっていいか。
どうせ真紀は居ないのだから。
ボクが殺したんだから。
葬式の途中、式場を抜け出した。
──耐えられなくて逃げた。それが正しい。
誰にも何も告げずにひたすらに真っ直ぐに歩いていた。
あの優しい真紀のお父さんの行き場のない怒りの籠った怒鳴り声がリピートしていた。
どれくらい歩いたのだろう?
時間にしても、距離にしても、どちらにしても見当もつかない。
空は暗さを増し、制限なく雪は降り続いていた。真新しい雪を何度も踏み、ボクの足跡はこの雪が埋めて、そしてまた真新しい誰かの足跡を残すのだろう。
手足は冷たくなりはじめていた。
本当はもっと前からそうだったのだろう。ただ、麻痺して感じなくなっていただけだ。
意識がたまに途切れては、ハッとなりまた歩いた。
……それを何度繰り返した頃だろう。
気がついたら雪の上に横になっていた。
倒れたのか、転んだだけなのか思い出せない。不思議と体が冷たいとは感じていない。
生きてる意味、生きる資格、そんなものはもうない。1番足りないのは生きる意志だ。
『…和也』
ふと、真紀の声が聞こえた気がした。
「真紀のそばにいけるかなぁ?」
口にした自分の言葉を、自分の罪の意識が否定する。
───人殺しには無理…か。
ボクはそっと目を閉じた。
スイッチを切るというより、ブレーカーから落とすような勢いで意識が途切れた。
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