第9話
『ごめんね、和也!急にお母さんから手伝い頼まれちゃって』
……真紀はそこにいた。
当たり前に母親の手伝いをしていた。
お母さんからも『ごめんね』と謝りを頂戴してしまった。
『和也が帰ってくるから、今日は豪華な夕飯にしなきゃって張り切ったら手が足りなくなったんだって(笑)』
──良かった、本当に。
『どうしたの?そんな顔して』
「…いや、なんでもない」
どんな顔をしていたのだろうか?
半分泣きそうな顔をしていたような気がしてきて、恥ずかしくなる。
すると、チャイムが3回連続で鳴る。
「あ、ボクが出ます」
このチャイムは真紀のお父さんの合図だと知っていた。だからボクが出ても大丈夫だと思えた。
ドアを開けると…
『ただいま…。和也君!なんだビックリしたよ、もう着いてたのか』
真紀のお父さんが本当に優しい笑顔で迎えてくれた。─実際出迎えたのはボクだけど。
『おかえり』
真紀のお父さんからのこの一言がすごく嬉しかった。今でも家族のように接してくれる。
着替えてくるからと部屋へ消えていくタイミングで、食卓では準備が整っていた。
楽しい晩餐だった。
ボクの引越し先の話や、新幹線の乗り方にも馴れた話…。お母さんが真紀との関係に触れた時にはお父さんは咳き込んでいた(笑)
これから告白しますなんて流石に言えないし
、援護を求める目線を真紀に送る。
真紀は笑っていた。
本当に幸せそうに笑っていた。その笑顔が好きで、見ているボクまで幸せになる。
──これが現実ならどれだけ良かっただろうか。
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