第9話 次鋒戦

「次鋒、前へ!」

審判から両校の陣営に声がかけられた。

「次鋒、赤、京泉院大学、金村選手。白、冷泉堂大学、葛城選手」

場内アナウンスで選手の紹介が行われた。

「よし、いくぞ!」

トモッチこと葛城智彦が選手全員とハイタッチをかわし、試合場に向かった。

「それでは開始!」

審判が試合開始を宣告したと同時に、京仙院大学の次鋒、金村紀明は何の前触れもなく面打ちを放った。

「勝負あり」

審判が開始を告げてから一秒も経っていない。トモッチこと葛城智彦は何が起きたか分からず、中断構えを崩していない。金村紀明は礼をして、そそくさと自陣に戻っていった。


「おい、ちょっと待てよ。逃げるのか!」

まだ状況を理解していないトモッチが叫んだ。

京都医科大学の副将戦で私が相手を一撃で葬ったときと全く同じ反応だ。


「君の負けですよ。面がきれいに入りました」

審判が表情一つ変えずにトモッチの敗戦を告げた。

「ウソだ。そんなのイヤだ!」

現実を受け入れられないトモッチは駄々をこね始めた。そのとき、トモッチの身体が十五センチほど宙に浮いた。業を煮やしたルーカスがトモッチを軽々と肩にかつぎ、嫌がるトモッチを自陣に運んだのであった。京仙院大学陣営は瞬殺を成功させた金村を笑顔で迎える。

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