第10話 行け!ダンディー霧島。。。
これで二戦二敗。次の中堅戦は絶対に負けられない。
そして、その戦いに挑むのはダンディー霧島だ。
ダンディーは、冷泉堂大学剣道部改め剣道サークルでブームになりつつある、両頬を叩いて気合いを注入する儀式を敢行した。そして、平安神宮の拝殿の方角に身体を向け、合掌し、
「神様、僕に力を貸してください」
と堂々と神頼みをした。私たちは言葉には出さないが、絶望感に襲われていた。そして、この状況に追い打ちをかけるような事件が発生した。
「中堅、前へ!」
審判が両校の中堅を呼んだ。京仙院大学陣営から、ルーカスとほぼ同じ体格の巨大な選手が試合場に向かう。ダンディーの顔が青ざめた。しかし、今更逃げることはできない。ダンディーは、地面に置いていた竹刀を拾い上げようと手を伸ばした。その瞬間、グキッと、ダンディー霧島の腰から鈍い音がした。
「あああああああああああああああああああああああああ」
ダンディーは腰を抑えたまま動けなくなった。
「ウソでしょ!」
松尾女史が悲鳴を上げる。ダンディーは腰に手を抑えたまま苦悶の表情を浮かべている。
その時、神殿内の誰もいないはずの冷泉堂大学の控室から一人の剣士が姿を現した。防具をすべて身に着け、手にはしっかりと竹刀が握られている。風のように音をほとんど立てずに通路を歩いていく。
冷泉堂大学陣営では、ルーカスと松尾女史が対応を協議していた。その一方で、こちらも手負いの浦賀氏がダンディーから防具を奪い、身につけようとしていた。
「ちょっと、浦賀君、あなた試合ができるうような状態じゃないでしょ」
松尾女史が慌てて浦賀氏を制止しようとする。浦賀氏はこの温厚な男にしては珍しく、
「緊急事態です。霧島よりは僕の方が動けます」
と少し怒ったような口調で言った。面をかぶると右足を少し引きずりながら、まず、負傷による選手交代を告げるため、運営委員会のテントに向かった。運営委員会のテントでは、「委員長」の腕章を身に着けた和装の中年の男性が慌ただしくメンバー表に何かを書き加えていた。
浦賀氏は委員長に、
「すいません。中堅の霧島修平が試合直前に負傷しました。代わりに、私、浦賀孝司が出場します」
と告げた。すると委員長は顔を上げて、
「え?また?」
と眉間にしわを寄せて言った。
「またって、どういうことですか?」
浦賀氏は困惑した。
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