第7話 新たな決意
話を聞いた私はしばらく何も言うことができなかった。友を守れなかった父は、友を簡単に見捨てた私を許せなかったのだろう。幼いころから常に一緒に遊び、剣道に励んできた唯一の友を見捨てたことが。
僕はこれが父にとっての「武士道」なのかと思った。
私はテーブルを力強く叩くと、勢いよく立ち上がり、
「母さん、悪いけど日本行きの航空券を手配してくれ!」
と伝え、道場に向かった。
道場の入り口に立てかけてあった竹刀を二本手に取った私は、馬小屋に向かい、愛馬の「アラモ」にまたがった。久しぶりに馬で駆ける感覚を楽しみながら、私は父を追った。父にはすぐに追いついた。
馬上の父が驚いて私を見た。
「父さん、ステーキを食ったら身体を動かしたくなった。稽古に付き合ってくれ」
私はそう言うと、父に竹刀を投げた。竹刀を取り損ねた父はずるずると落馬した。近くで大きな笑い声が聞こえる。
ルーカスの母のミシェルが豪快に笑っていた。
「あれ、信夢、随分早いご帰国ね」
ミシェルは笑みを浮かべて言った。ルーカスから事情を聞いていることは一目瞭然だ。
「ちょっと、馬に乗りたくなっただけですよ。すぐに日本に戻ります。あなたの息子は俺なしじゃダメだからね」
私はそう言うと、膝についた泥をはらっている父に向かい、竹刀を構えた。
「師匠、お願いします」
「ありがとう。信夢」
ミシェルが小さな声で呟いた。
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