第12話 消えたルーカス
ルーカスの部屋の前に到着すると、今度はインターホンを鳴らすことなく、松尾女史は迷わず合い鍵を使ってドアを開けた。
ルーカスも不在であった。
しかし、私の部屋とは異なり、ルーカスの部屋には生活感があった。松尾女史は胸をなでおろした。メンバーたちはルーカスの居所を突き止めるため、部屋の中で手掛かりを探した。
とりわけ気合いが入っていたのはダンディー霧島だ。
「やつの秘密を探してやるんだ。目には目をDVDにはDVDを」
と呪文のように呟きながら、目を充血させて探している。
「道着と竹刀がない。変だな」
ダンディーの異常な熱意に圧倒されながらも、トモッチこと葛城智彦が部屋を見回しながら言った。
すると、木田氏がデスクの上に置かれている京都のガイドブックを手に取り、パラパラとめくり始めた。そして、しおりが挟まれているページがあることに気づいた。
嵐山を紹介するページであった。竹林に関する項目が赤で囲まれている。その場所を示しながら木田氏が松尾女史に助言した。
「ルーカスはここに行ったんじゃないでしょうか?」
メンバーたちがガイドブックをのぞき込む。
「嵐山の竹林?なんで?今さら観光?」
松尾女史が首をかしげた。
「傷心旅行かな?」
トモッチが呟いた。
「とにかく嵐山に行ってみましょう」
ダンディー霧島の一声で松尾女史とメンバーたちはアパートを後にした。
約40分後、地下鉄とJRを乗り継ぎ、嵯峨嵐山駅に到着した。既に午後四時をまわっていた。
松尾女史とメンバーたちは、二手に分かれてルーカスを探すことにした。
嵐山の冬は厳しい。桂川沿いを桜が美しく咲き乱れる春、そして、紅葉が山々を染める秋には観光客でごった返す渡月橋も、今日は閑散としていた。
メンバーたちは、法輪寺、野宮神社、常寂光寺、二尊院等の名所で職員に声をかけ、ルーカスが来たかどうかを尋ねたが、手掛かりは得られなかった。
絶望感が漂う中、松尾女史が一緒に探していた木田氏に質問した。
「そういえば、竹林が赤ペンで囲まれていたのよね?」
「そうです」
「行きましょう」
松尾女史は竹林の小径に向かって走り出した。木田氏は慌てて、別の場所でルーカスを探しているメンバーたちにも連絡し、竹林の小径に来るよう指示した。
松尾女史と木田氏が竹林の小径の入り口に到着すると、すぐにダンディー霧島、トモッチこと葛城智彦、そして、浦賀氏が白い吐息を吐きながら走ってやってきた。
松尾女史、そして、メンバーたちは、すぐにルーカスを探すことにした。
太陽が沈み、夜のとばりが降り始めていた。メンバーたちの顔に焦りの色が見え始める。メンバーたちは必死にルーカスを探した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます