欲望Ⅲ


「許せない、花は私だけのもの。」

花の祭壇のアーチ型に広がった高い天井には、スクリーンに映像が映し出されるように、花に触れる鳥と、蝶が映っていた。その幸福そうな、満ち足りた表情が、気に食わなかった。

「なのにそれを、横取りしようとするなんて、許さない。」

蜜蜂はグシャリと花を潰す。すると映像はそこで途切れ、真っ暗になった。

「わかってるのかしら?私がいなければ、こんな世界、回すことだってできないのに。」

そう呟くと、今度は天井に一輪の花が映し出される。まぎれもなく、祭壇に咲いているあの花だ。

「彼女は、僕だけの…かわいい女の子。」

蜜蜂は花を撫でるように指を伸ばす、その柔らかく湿った花弁に口づけた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る