欲望Ⅱ
「好き、嫌い、好き、嫌い…」
忠誠の蜜蜂は祭壇で小ぶりの花の花弁を毟っていた。
「嫌い。…まあ、いいわ。『好き』になるまでやり直せばいいんだもの。」
手を放す。はらはらと、花弁が舞って無残な姿になった花が落ちる。そして蜜蜂は指を鳴らす。すると花壇にまた一輪の花が咲いた。彼女は手を伸ばし、それを摘み取った。
「好き、嫌い、好き」
健気に生えたその花弁をひとつ、またひとつ、千切ってゆく。
「花が散るくらい、構わないわ。どうせまた、咲くもの。…けれど。彼女だけは、もう二度と、」
力任せに握りしめたこぶしの中で、気づけば、花の茎が折れてしまっていた。花はしおらしく、倒れている。
「…いいえ、違う。彼女は死んでなんか、いない。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます