第2話 カケル(承)

 えくぼのある人には前世の記憶があるという中国の言い伝え。

 嘘か真か前世の記憶を持って生まれ変わったオレにも小さい頃はえくぼがあったんや。

 大きくなるにつれて、いつのまにかえくぼが出来んくなってしまって。

 おかんと姉貴によう言われよる!

 カケちゃん、小さい頃は笑顔が可愛かったって。


 オレのえくぼは無くなっちゃったけど、あいつらとの前世の記憶は覚えてたよ。


 せやけど、あいつらに逢いたいとは思っていたけど、実際探すのなんて無理な話よ。


 せやから、親父の転勤で大阪から東京について来て、あいつらに出逢ったときは、奇跡って本当にあるんやと思ったな。


 あいつら、男の子と女の子に生まれ変わって、上手くいってるんかと思いきや、何かこじらせちゃってる感じがして、俺は黙って見てることしか出来なくて…

 あの時は再会できた喜びともどかしい気持ちが入り乱れていたな。


 涼太の病気を乗り越えて、あいつらが結ばれたのを見届けたときは嬉しかったよ。


 オレはあいつらに伝えたいことがあったんやけど、今のあいつらにそれを伝えることは無意味に思えてきて、オレはこのまま黙っていようと思っていた矢先、羽根に呼び出されたんだったな。


「翔…

 もしかして。

 俺のこと覚えてるんでしょ⁉」


 オレは黙って頷いた。



「俺達のそばにいてくれて。

 いつも見守っていてくれて。

 俺達が恋人だってことを隠すために、前世でいつも一緒にいてくれてた、あれはやっぱり翔なんだね、やっぱり…」


「今も昔もオレが涼太と羽根と一緒にいたかったから、いた。それだけのことや。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る