第2話 ここは異世界だった。
「きゃー!可愛い!モデルみたい!」
可愛らしいドレスを身に纏う少女は、壇上から軽やかに降りると、床にペタリと座る
「あの………」
「私は
來奈の手を取った桃花は、目を爛々と輝かせながら顔をずいと近づける。桃花のパワーに萎縮した來奈は、未だ彼女の言葉の意味を理解出来ずにいた。
どういう……こと?
ここは、何処?
見渡せば、巧妙に作られた柱や華やかなシャンデリアが目に止まる。そして桃花が先程までいた場所には玉座のような立派な椅子が2つ。その1つには、浮世離れした、日本人とは似つかわしい顔立ちの銀髪金眼の男性が足を組んで座っており、その薄い唇に笑みを湛えてこちらを見ていた。
「あの、新堂さん?」
「はい!桃花です!あ、貴方の名前は?」
「宇田川來奈です、高二です」
「あ!同い年!やったね!」
花開くように笑った桃花は、「あ!燎南高校の制服だ!めっちゃ頭良いんだね!」とはしゃいでいる。
「あの………新堂さん」
「も、も、か、だよ!……どうしたの?」
「ここは………何処ですか?」
すると桃花は壇上の上の男性の元へ駆け寄り、両手を広げ破顔してみせた。
「ここはシュタイン王国のお城、異世界だよ!」
―――――は?
來奈は唖然として「何を言っているんだコイツ」とでも言いたげな目で桃花を見る。そんな様子を見た桃花は、わざとらしく頬を膨らませた。
「もーう、來奈りん信じてないんでしょー。私は嘘は言わないよ?ここは、地球じゃないの!」
「ら、來奈りん………?……ええと、何故私はここに居るのか分かりますか?」
「何でか?それは――――私達が召喚したからだよ!!」
――――は?
意味が益々分からない。この人は一体何を言っているのだろうか。そんなフィクションは起こるわけないじゃないかと來奈はジト目になる。
ダメだ、この子。話が通じないかもしれない。
そう思った來奈は、玉座に腰掛ける男性をちらりと見た。彼は眉毛を下げて困ったように微笑んで來奈に喋りかける。
『─────────』
「Could you say that again?」
『?』
「Pouvez-vous parler plus lentement s’il vous plait?」
『───、─────』
フリーズした。困った。どうしよう。
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語………と、「もう一度お願いします」と言ったのだが全く伝わらない。
困った事に、マルチリンガルの來奈でも彼の言葉は全く聞き取れず、聞いたことも無い言語に首を捻る。それは男性も同じようで、首を傾げて桃花と來奈を交互に見た。
「あれー?おかしいなぁ。來奈りん、もしかしてディーの言っている事が分からない?」
「はい………」
「何でだろう?ディーも來奈りんの言ってる事分からない?」
『────』
「まじかー分からないかー」
桃花は「ディー」と普通に会話しているが、桃花の言葉は日本語だ。「ディー」の言葉だけが意味がわからない。……まぁ取り敢えず桃花に話を付けて、学校に戻してもらわねば。
「あの、新d……」
「も、も、か、ね!」
「えぇ……と、あの、ここは何処の国でしたっけ?」
「ここは、シュタイン王国。で、ここがシュタイナー城。ディーはこの国の王子様なの!」
シュタイン王国。幼い頃から幅広い教養を身につけてきた來奈でも、その名前は聞いたこともなかった。地球上ではないから來奈が知らないのは当たり前なのだが、だからこそ、徐々に信憑性の増す桃花の言葉にドクンドクンと大きく心臓が鳴る。
「王、子……?」
「そう!ディートリヒ=レ=シュタイナー様!かっこいいでしょー?」
桃花の惚気にディートリヒは頬を染めてはにかんでいるが、そんな光景を見ている余裕は無く。
「もう一度、聞いてもいいですか?」
「うん!來奈りんなら何度でも!」
「ここから──日本に帰れますよね?」
取り敢えず日本に、いや、何処か言語が通じる所までは戻りたい。今にも壊れそうな希望だが、桃花が明るく「うん!帰れるよ!」と言ってくれるのを信じて言葉を待つ。
しかし、それは無惨にも打ち砕かれる。
「───それは無理だよ、來奈りん」
パリン。
音のしない音が、大きく響いた。
*****
作者は外語語に弱いので、調べました。
間違っていたら申し訳ありません。
急募、不器用な人の為の上手な生き方教えて下さい。 柊月 @hiiragi-runa-6767
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