急募、不器用な人の為の上手な生き方教えて下さい。

柊月

第1話 知らない場所。



知ってるよという方はこんにちは。

初めましての方は初めまして。

柊月です。


現在連載中の作品から浮気しまして、こちらを見切り発車で書こうと思います。

ゆるーく、読んで頂けると嬉しいです。


宜しくお願いします!


柊月




*****













 嫌になる。どうしようもなく。




宇田川うだがわは………大学進学か」




 キンキンに冷えた教室で、机を挟んで担任と向かい合う。




「希望学部は、経済学部、ね。何で経済学部にしたんだ?」



「潰しが効くと思ったからです」




 正直に答えれば、担任は口元に手をやり「ふむ」と一旦考える。その微妙な反応に、來奈らなは、これの何がいけない、と心の中で反発した。




「宇田川。確かに経済学部を選ぶのもいいと思う。だがお前はそれでいいのか?好きな事はないのか?」




 好きな事、ね。


 得意なもの、嗜好の合うものがあれば、こんな書き方はしない。まぁ、でもどうせ私には好きな進路を選ぶ事なんて出来ないけれど。




「ありません。好きな事なんて」



「へぇ、そう。まぁ志望大学は決まっているようだから、そこを目標にして勉強すれば良いだろう。それ以外俺は特にお前を心配するような所はないから、宇田川から何かあれば言うように」



「はい」




 中身が空っぽの革鞄を肩から提げ、教室を出た來奈は、蒸し暑い廊下をゆっくりと進む。



 どうせ、自分は親の敷いたレールの上を生きていかなければならないのだから、将来なんてどうでもいい。來奈の率直な感想は随分冷めたものだった。




『私、理工に行きたくて物理選択にしたの』



『私はゴリゴリの文系だからなぁ、尊敬するなぁ理系科目出来る人』



『いやいや、古典現代文の点数恐ろしく良い人が何を言ってるのさ』



『うーん。まぁ好きだからね。文学か人文学にはいきたいとは思ってるけど、まだ決めてないや』




 進路の話をする友人達の会話が不意に浮かんできて、來奈は自分のつまらなさを自嘲した。



 溜息を零し、いつもの調子で上履きを靴箱に入れ、毎日お手伝いさんが手入れをしてくれるローファーを床に置こうとして――一旦踏みとどまった。これを履けば、あの家に帰らなければいけなくなると思ったのだ。




 ――――いっそ、別の場所で、私を誰一人知らない場所で、誰にも縛られず、生きていきたい。




 まぁ無理だけど。諦めるように笑って、今度こそ靴を置こうとした瞬間、來奈の足元から数多の光の粒が放出した。あまりの眩しさに目を覆い、突然浮遊感を感じたと思ったら――――。






「あ、成功した」






 ―――――は……?






「こんにちは!初めまして!」






 本当に、知らない場所にいた。



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