第22話 トップシークレット
大学でクラスメイトに引っ越した事を伝えたら、『えっ? セレブリティ超高級アパートメントじゃん! 遊びに行かせて!』としつこく言われてしまった。
うっかりアパートの名前を言うんじゃなかったよ。
私達って秘密が多いので、部屋に一般人なんて入れられやしない。
この仕事をやっている限り、私在学中はボッチ確定なのかなー…… やっぱ、ヒーロー活動は趣味に限るよ。
アパートに帰ったら、ピートが食事の用意をして待っていてくれた。
すんごい肉が美味いんだけど。
私、肉なんてどれも味一緒だと思っていたけど、その考えは改めた。
時々、ゴム板みたいに噛み切れない肉に当たる事があるけれど、そういう最低な肉以外は殆ど違いは無いと思っていたのね。
だって、何処のレストランへ行ったって対して味変わらないでしょう。
だけど、上級の肉を食べてしまったらもうね、いかに味音痴な私でも分かったよ。あれは、別物だって。
はあ、この仕事が終わったら私、普通の生活に戻れるのかしら?
ピートも一口食べては顔を綻ばせ、飲み込んだ後に険しい顔をしている。多分、私と同じ様な事を考えているんだろうなー。
さて、そんな罪悪感満載な食事を終えて、今日のお仕事お仕事。
「今日は私も付いていくわ。」
「おや、どんな風の吹き回し?」
「だって、そんな何千キロも離れた所で、もしあなたに何か有っても助けに行けないじゃない。私、テレポーテーション出来ないんだから。」
成る程、確かに。
じゃあ、一緒に行くか。
私は、アパートの部屋のドアのノブに手を掛け命令をした。
「昨日の小屋へ」
【Roger(了解) 空間扉起動】
扉を開けると、そこは広大な麦畑だった。
昨日は夜中で良く見えなかったのだけど、明るい所で見ると凄い広い畑だった。
鍵の掛かっていた筈のドアが開いて、私達二人が出て来たのを見た農夫のおじさんがビックリしていた。
「お、おい、お前等どうやって……」
そして、小屋のドアに鍵が掛かっているのを確かめ、更に首を捻っている。
私達は、そんな声が聞こえないかの様に会話を続けている。
「そう言えば、あなたはどんな姿に変身するの?」
「しないわよ。いい歳してヒーローごっこなんて。」
「でも、身バレしないためには何かした方が良いんじゃない?」
「それもそうかー。何か考えるべきかしら……」
「変身。」
【Roger(了解) 変身術起動 チェンジノイータ】
「マスクと衣装の変更。」
【Roger(了解) 変身術起動】
「うわお、な、なんだ!?」
農夫のおじさんは、私達が変身したのを見て腰を抜かしている。
私は何時ものノイータのゴスロリ姿へ変身し、ピートは目元を隠したマント姿の黒い衣装へ変更した。
「なんだ、さんざん子供っぽいとか言っておいて、ちゃんと衣装を考えてたんじゃない。」
それにしても、やっぱりアメリカ人は目元を隠すんだね。面白いね。
「飛ぶわよ、ロビン!」
【Roger(了解) 飛行術起動】
「私はサイドキックか! フライト。」
【Roger(了解) 飛行術起動】
腰を抜かしたおじさんを放置して、私達は飛び去った。
後に、テレビ局のインタビューにおじさんは興奮した様子で答えていた。
「おらが農機具を片付けようと小屋の前へやって来たらべさ、鍵の掛かっていたドアが開いて二人の女が出て来たんだよぉ。……うーん、二人共、普通の娘っ子さに見えただなー。それが、あっという間に例の『宝玉に導かれしなんとか』というのに変身しちまってよぅ。あっちの山の方角へ飛んで行っちまっただよ。」
「もう一人の女性も魔女なのでしょうか、それともサイドキックなのか、謎は深まるばかりです! 現場からマクギーがお送りしました。」
私達は残りの行程を他愛も無い会話をしながら飛んだ。会話の内容? そんな物は殆ど覚えていない。多分、あの角のカフェのスイーツが美味しかったとか、3階のブティックの服が素敵だったとか、そんな話だったと思う。
音速飛行中に会話が出来るのかって? ふっふっふ、それが出来るんだなー。お互いに接近して、
そんなこんなで退屈もせずに1時間半程飛んでいると、大きな都市が見えて来たので徐々に高度を下げて行く。
「昨日犯罪が起こったという場所へ案内して。」
【Roger(了解) ナビゲートします。】
玉に誘導されて向かったのは、カルフォルニア州のサンフランシスコの当たりの様だ。
所謂、シリコンバレーと呼ばれる地域で、かの有名な林檎社とか、SNSで有名なあの会社とか、これ無しではネットサーフィンも儘ならないあの会社とかが在る地帯。
でさ、そんな大会社はさぞでっかい超高層ビルの社屋なのかと思うじゃない? だけど、大体は5~6階建ての低層の建物が多いんだよね。
その代り、敷地面積が半端無いの。広大な敷地に平べったい、ワンフロアの面積がアホみたいに広い建物が並んでいるんだよね。
件の事件のあったという研究所は、やはり公園みたいに広大な敷地の真ん中に平べったい楕円形の建物が在るだけの普通のIT企業の様に見えた。
「あれ? あの会社のマークは見覚えが有るんだけど。」
「うちの系列だわ。シェスティン様の会社よ。」
マジか。一体何を盗まれたんだか。
まあ、考えるまでも無いか。アーティファクト関係だろうね。
「という事は、ロビンには既に情報は入っていたのね?」
「私の呼び名はロビンで確定なの? まあいいわ、確かに情報は入っていたわね。だけど、こっちはこっちの諜報員が当たるから、私達が動く必要は無いのよ。」
それもそうか、4000キロも離れた所は当然別の人達がやってるよね。
「それで、何を盗まれたの?」
「それが、最高機密っぽくて、末端の私達には何も……」
その時、ピートと私のリストバンドに無線通信が入った。
そんな建物の上に対空していたら目立つから、とっとと中へ入れってさ。
私達は建物の屋上へ降り立ち、屋上の出入り口を探そうと見回したら、そちらの方向からシェスティンお婆さんとDDが歩いてやって来た。
ん? 何で居るの? あそうか、お婆さんもテレポーテーションは出来るんだもんね。
「来るのが遅いね。事件が有ったのは昨日だよ。」
「しょうが無いじゃない。こっちまで守備範囲にしようとは思って無かったんだから。」
そんな事を言うお婆さんも、ここへやって来たのは今日の朝らしい。
お婆さんの様子からすると、そんなに大事では無かったのかな?
「何か盗まれちゃったの?」
「ああ、ちょっとした機密をね。」
機密にちょっとしたもしないも有るのかな? ちょっとした物であっても盗まれたらヤバイから機密なんだろうと。
「もしかして、アーティファクト盗まれちゃった?」
「ああ、ここに保管してあった1つがな。」
「え、それヤバイじゃん!」
「いや、アーティファクトは、私が回収した時点で妖精を抜いて使えない様にしてしまうから、抜け殻をいくら持ち出されても問題は全く無いんじゃが……」
どうやら、抜け殻のアーティファクトと研究データが盗み出されたらしい。
何を研究していたのかは教えて貰えなかったんだけどね。
お婆さんに連れられて、警備本部のモニタールームへ入って、昨日の監視カメラの映像を見せられた。
そこに写っていたのは、私をこのアメリカへ連れて来たあの男だった。
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