第10話中世異世界転生・其の5.5

「大丈夫? 太郎」

「ああ、平気だよ、花子。こういうやられアクションは、もう慣れっこだからね」


 舞台上での爆発に、盛大に吹っ飛んで見せた太郎と、それを心配する花子である。


「結構派手な爆発だったわね。効果さんたら、張り切っちゃって」

「まあ、景気良くドカンとやってくれた方が、見てる人のウケもいいだろうし」

「それにしても、限度ってものがあるわよ。獣人役の人も平気かしら。ライオン顔の獣人なんて、見るからに強そうだけど、それは演出だからねえ」

「ああ、大丈夫みたいだよ。舞台そでに引っ込んで行った。あの獣人さんはこれ以降出番ないから、大人しく横になっていれば平気だろうさ」


 なかなかドライなことを言う太郎である。しかし、途中で演技を止めるなんて、役者にとってあってはならないことである。


「で、今回の脚本はだめだめな転生主人公が、たまたま可愛くて強力な魔法が使えるおっぱいの大きいスーパーレアを、ガチャで引いたってパターンですか。どうせ、この後二人はいい雰囲気になったりするんでしょうよ」

「不満そうだね、花子。このパターンだったら、花子に見せ場がたくさん回ってきそうじゃない」

「見せ場ったって、お約束展開ばかりじゃねえ。だいたい、太郎、あんたはこれでいいの。あんた、下積み長いんだから、それなりのアクションくらいこなせるでしょう。実際、さっきの爆発での吹っ飛び方なんて、そこらへんの素人にはとてもできないわよ。あれだけ出来るんだったら、悪役をばったばったと叩きのめす演技くらい、出来るんじゃない」

「いやあ、そういうのは俺は苦手だなあ。どうも、そういう俺つええ的なのは得意じゃないんだ。と言うわけで、情けなく逃げ回る姿をちゃんと演じるからさ、花子は遠慮なく暴れまわってくれていいよ。俺はちょっとやそっとで怪我をするようなヘマはしないからさ」

「ま、アクションシーンが安心して出来る太郎との共演と言うのは悪くないけどね。知ってる? あんた、共演者との評判結構いいのよ。『あのあんちゃんは、主役をたてる演技をしてくれる。俺が俺がなんて下手に脇役が出しゃ張られたらたまったものじゃない。そのあたりがわかってるやつとはやりやすい』って。」

「えっ、そうなのかい。照れるなあ」


 花子の言葉に、顔をにやけさせる太郎である。


「そういうことだから、あたしも飛ばしていくからね。きっちりついてきてよ、太郎」

「わかりましたよ、花子」




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