第3話中世異世界転生・其の2
「す、すいません。考え事をしていたもので。わたし、”ヒロ・イン”と申します。そちらは、どういったお名前でしょうか」
「お、俺は、異世界太郎と言います」
そう自己紹介をしてくれたヒロ・インさんに、俺も自分の名前を告げる。
「”イセカイ・タロウ”さんですね。わかりました。わたしのことは、”イン”って呼んでください」
「じゃあ、俺のことも”タロウ”と呼んでください」
インさんが、下の名前で自分を呼んでも良いと言ってくれたと思い、俺も”タロウ”と読んでもらおうと思ったのだが、どうやらそれは誤解だったみたいだ。
「”タロウ”ですか。珍しいファミリーネームですね。外国の方ですか」
「そ、そうなんだ。遠いところから来たんだよ」
ああ、そうか。この世界だと、日本語みたいな名字で名前みたいな順番じゃなくて、英語みたいなファーストネームでファミリーネームの順番なのか。
しかし、インさんは”タロウ”をファミリーネームだと思っているようだが、とにかくかわいい女の子に”太郎”と名前呼びされているようで、実に気分がいい。インさんがどう思っているかは関係ないのだ。
「服装も、このあたりでは見かけないようなものですし。それにしても、ずいぶんと変わった格好ですねえ」
「そ、そうかな。俺のいたところでは、別に普通の格好なんだけど」
そんなふうにインさんが評する俺の服装は、ティーシャツにジーンズという、現代日本ではごく普通のものだ。
だが、この中世ヨーロッパ風の異世界では、明らかに俺の服装は浮いてしまっている。それこそ、テーマパークに客が俺一人だけといういたたまれなさを感じてしまうのだった。
「だけど、ちょうどよかった。お願いします。わたしに協力してください」
「協力? 何ですか。まあ、俺で良かったら協力しますけど……」
そう言って、インさんが俺にお願いごとをしてくる。一体全体なんなんだろう。
「わたしのお婿さんになってください、タロウ」
「はいはい、お婿さんにね……って、いきなり何を言うんだよ」
唐突すぎるインさんの申し出である。当然、俺はあっけにとられるのであるが、インさんは構わず話を続けるのであった。
「ですから、わたしと結婚してくださいという事ですよ、タロウ。こうしてはいられません、急いでいるんです。まずは私についてきてください」
「だ、だけど、俺たちまだ出会ったばかりだし、いきなりにもほどがあるよ、インさん。あっ、手をそんなに強く引っ張らないでください」
とまどう俺にもかかわらず、インさんは俺をどこかに連れて行くのだった
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