第35話 旅行日

ついに、旅行前日。

俺はちとせと最終確認の通話をしていた。


「明日はお昼過ぎに迎えに行くから、その時には出れる準備しておくんだぞ」

『うん、わかってる!』


俺もちとせと一緒に持ち物の確認を済ませて、後はしっかり眠って明日を迎えるだけという状態になった。


『ついに明日だね』

「あぁ、そうだな」

『楽しみにしてる…』

「うん」


ちとせが楽しみにしているのは、東京に来ることだろうか?それとも旅行自体だろうか?

それは分からないが、とにかく俺はこの旅行でちとせを諦める。

それが、最大のミッションだ。



「それじゃあ、俺はもう寝るから、また明日な」

『うん、また何かあったら連絡するね』

「ん。それじゃあ」



ちとせとの通話を終えて、今度はあおいさんに連絡する。


「もしもし?」

『あ~似鳥君~!!!』


あおいさんが嬉しそうな声を上げて電話に出てくれる。

これだけで、一日の疲れがふっとんでしまいそうになる。


「明日から旅行に行ってくるね」

『…あ、そっか明日からか』

「6日には会いに行くから」

『うん、楽しみにしてる。ちとせのことよろしくね』

「うん、頑張る」

『似鳥君、気を付けてね?』

「ありがと」


そんな会話を何度か繰り返して、あおいさんは気が付いたら寝息を立てて眠ってしまっていた。


「…おやすみなさい」


明日から始まるちとせとの旅行。俺の目標は二つ、ちとせのことを完全にあきらめること。そして、あおいさんに少しでも自分が向き合えるようになること。


この二つをしっかりミッションコンプリート出来れば…


俺は気合を入れ直して、眠りにつくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る