第29話 寝落ち通話終了
次の日、無事に家に到着したのは18時を過ぎたころであった。
「ただいま~」
「おかえり似鳥、あんたどこ行ってたの?」
「まあ、ちょっとな・・・」
母親から問い詰められたが、華麗にかわして自室へと向かう。
「ご飯は?」
「食べてきた」
そう言い残して、自室の扉を閉めた。
自室は、微かに肉眼で見えるくらいの明るさで、僕は背負っていたバッグを放り投げてベッドに倒れ込んだ。
「はぁ…」
一昨日から突然の出来事がありすぎて、やっとひと段落着いたら一気にどっと疲れが込み上げてきた。
足を伸ばして大の字になって倒れ込み、毛布をそのまま被って眠りについた。
◇
トントントン
「んん・・・」
「似鳥!お風呂入って!洗濯物洗いたいから!」
「わかった・・・」
母親に部屋のドアをノックされ、お風呂にはいれと促されて目を覚ました。
既に部屋は暗闇に飲み込まれており、僕は体を起こして必死に手を伸ばして部屋の電気をつけた。
眠い体を無理やり動かして、風呂へ入る準備をする。
風呂場へ向かう前に、スマホを開くと、LANEの通知が来ていた。
ちとせから、膨大な数のメッセージが送られてきており、正直読むのも億劫な気分だったので、お風呂に入ってから確認することにした。
スマホを机の上に置きっぱなしにして、僕は風呂場へと向かっていった。
◇
風呂から上がり、部屋に戻ったところで先ほど見るのをやめてしまった、ちとせのメッセージを確認する。すると、大量のスタ連が送られてきていた。僕は、苦笑しつつスマホをスクロールさせていくと、ようやく普通のメッセージが書かれていた。
『プィ・・・』
『もういいし…』
そして、さらにその下に書かれていたのは、目を疑うようなセリフだった。
『好きな人できた~!』
『今日からその人と寝落ち通話するね!』
『グル通これたら来てね?』
ある意味簡潔かつ、驚きの連続が続くメッセージだった。ってか、また好きな人できたのかよ、早すぎるだろ…
さらに、新しいグループに招待されており、僕はそのグループ名を確認する。
『雑談グループ』と名付けられているそのグループに、僕は招待されたようだ。
僕はグループに参加しますか?『参加』 『拒否』 の『参加』ボタンを押して、グループに参加した。
既にグループには、50人近い人数の人たちが、グループに参加していた。
そして、グループ内ではグループ通話が行われており、数名の人物たちがグループ通話を楽しんでいるようだった。その中に、ちとせの姿はない。
「…」
無言のまま、グループトークからちとせの個人トークのページへと切り替える。
そして、『今日から寝落ち通話さんは、終わりかな?』と尋ねた。
すると、すぐに既読が付いて返信が返ってきた。
『うん』
ただ、その一言だけが返ってきた。今まで寝落ち通話してきたことを感謝の一言もなく、捨て駒のように扱われていた。
込み上げてくる怒りを抑えながら、僕はぷるぷる震える腕を必死にもう一方の腕て押さえながら返事を打った。
『そっか…一応、お礼言っておくね?今まで寝落ち通話してくれてありがとう』
『うん』
彼女から来た返事は、またもや、その一言だけであった。
僕はひと段落したところで、ベッドに倒れ込んだ。
やっぱり・・・ちとせは僕の事なんか眼中になかったんだな…昨日はあんなことを言っていたくせに、結局は好きなタイプの男がいたらすぐにそっちへふらふらと行ってしまう。ホント、こっちは振り回されてばかりでやってられん。
だがこれで、ちとせから離れられることにもなる。
そう思った瞬間、ふっっと自然に息が出てきて、「せいせいしたぜ・・・」気が付けばそう独り言をつぶやいていたのであった。
寝る間際、一応ちとせの親友である、あおいさんにも伝えておくことにした。
『あおいさん、お疲れ様です。似鳥です。今日付けで、ちとせの寝落ち通話兼、暇つぶし係から左遷されました。まあ、厄介ごとにかかわらないで済むようになるんでいいですけど、一応色々とお世話になったあおいさんにはお礼を言っておこうと思いました。これから、自分はどうちとせに扱われるか分かりませんが、今後も何かあった時はよろしくお願いします。』
そう、メッセージを送って、僕はスマホを閉じて、部屋の明かりを消して、一人寂しく暗闇の中で眠りに落ちていくのだった。
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