第28話 うれしかった

 20分ほど経った頃。あおいさんがちとせとの個人通話を終えて、グループ通話に帰ってきた。


『ただいまー』

『お帰りあおい~』

「おかえりなさい、それで、どうでしたか」

『うん、大丈夫だよ!ちとせの勘違いだったみたいだから!気にしないで!』

「そうですか…それはよかった」


 僕はほっと胸を撫でおろした。


 グループトークの通知にも、『ユミをグループに招待しました』という通知が来て、直後にちとせが再びグループに参加した。


 これで一件落着したところで、僕はグループ通話をいったん辞めて、寝る支度を整える。


 寝る支度を整えて、ホテルのベッドに寝っ転がり、ちとせに個人チャットを送る。


『今日、僕行って、意味あった?』


 そう送ると、すぐに既読が付いてちとせから返事が返ってくる。


『うん、人恋しかったし、嬉しかった』


 そう返事が返ってきて一安心する。


『そっか、それはよかった』

『うん』

『そろそろ寝るけど、ちとせはグループ通話続ける感じ?』

『うん』

「そっか…」


 思わずホテルの一室で一人そう呟いた。まあ、今日会ったし、僕は用済みというか十分ってことかな?


『おやすみ』


 僕はそうメッセージを送って、部屋の明かりを消して、久しぶりの誰とも通話しない、ごく普通の就寝につくのだった。



 だが、これ以降、ちとせと個人で寝落ち通話をすることは一切なくなることを、この時の僕は全く思ってもいなかったのである。

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