第25話 ぞんざいな扱い

 ゆっくりと思考が冴えてきて、目を覚ました。


 目の前にはハンガーにかけられて干されている大量の女性ものの洗濯物と、机の上に無造作に置かれた小物が散乱している部屋であった。


 そうだ・・・僕、ちとせの部屋に来てそのまま寝ちゃったんだ…


 布団の方を見ると、向こう側を向いて、スヤスヤと寝息を立てながら眠っているようだった。


 僕はスマホをポケットから取り出して時間を確認する。時刻は夕方の4時を回ったところであった。

 ちとせの元へ来たのはいいけれど、結局何かしたかと言われれば正直何もしていなかった。僕は一体何しに来たのだろうか??そんなことを考えてしまう。


 ひとまずは今後の予定を全く決めていなかったので、どうしようかと思案する。

 ちとせはまだ眠っているし…そもそも、いつまでちとせの家にいていいんだ?全くわからんぞ!?


 とりあえず、今日中に家に帰れるかどうかを検索して調べることにする。


 日帰りプランと一泊プランを立てたところで、布団の衣擦れの音が聞こえ、ちとせが目を覚ました。スマホから目を離すと、布団で寝っ転がっているちとせと目が合った。


「おはよう、ちとせ」

「うん…」


 ちとせは、まだ眠気が覚めていないようで、覇気のない生返事だけを返して、再び寝返りを打って向こう側を向いてしまった。それからしばし、ちとせは寝返りを何度か繰り返してから、ようやくスマホに手を伸ばした。しばらくスマホでLANEのトークチェックなどをして返信する。

 すると、ちとせからスマホ越しにスタンプが送られてきた。しかも連打で何個も送ってくる。


「うるさい、うるさい、うるさい!!」

「あはは!!」


 ちとせは、可笑しそうに笑う。その姿を見て、元気を取り戻していることを実感してほっとする。


「今日は俺何時までいた方がいい?」

「う~ん・・・何時でもいいよ。あ、でもうちのアパート宿泊禁止だからそれだけは守ってね?」

「わかった」


 ちとせからの答えを聞いて、僕は明日まで北海道に滞在することを決意して、今日宿泊するためのホテルを探して予約する。

 スマホで購入の手続きを進めていると、ちとせが突然ムクっと立ち上がった。


「よしっ!風呂入ろ!」


 急にちとせがそんなことを言い出したかと思えば、寝間着などを取り出してそそくさと準備を始めてしまう。


「にとお兄ちゃんいるのに、いない存在として扱ってるっていうね、笑うわ」

「いや、笑うところじゃねーわ」

「えへへ」


 へらへらと笑いながら寝間着と下着を持って、そのままお風呂場へと消えていった。


 ・・・全く、昨日あんなだったから心配してきてみれば、ピンピンしてやがるし、ぞんざいに扱われて・・・僕は一体何のためにちとせのために来たのだろうか…?

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