第23話 出会いの時
僕がちとせの元へ行くことが急遽決まった直後。看護の人が助けに来てくれた。
それからちとせとの通話を切って、LANEのトークだけで状況を確認した。
ちとせは車に乗せられて夜間救急に運ばれたそうだ。そして、そこでようやく安心できたのか、嘔吐を繰り返したらしい。点滴を打たれて安心して、眠りにつくことが出来たのが、夜中の4時頃。僕は一睡もせずにちとせから送られてくるメッセージを待っていた。
ちとせがようやく眠りにつき、部屋の時刻を確認する。
朝の5時前を差しており、そろそろ家を出る。
ふぅ・・・っと大きく深呼吸を吐いて、立ち上がる。
リビングに『出かけてきます』と書置きを残して、静かに家を出た。
◇
始発電車に乗り、空港へと向かう。
空港までは早くても2時間以上はかかってしまうので、その間にようやく睡眠をとることが出来た。
乗換駅で一度スマホを確認すると、ちとせから『点滴を打ち終えて、家に帰ってきた』というメッセージが来ていた。
僕は、『わかった。家で安静にして寝てな?』とメッセージを打って、乗り換えの電車に乗り込んだ。
太陽が昇り、辺りがすっかり朝の陽気になり始めたころ。ようやく空港に到着した。検査場をくぐり、搭乗ゲートへと向かう。
早く北海道に向かいたい気持ちで山々だったが、飛行機の出発の時間は変わらない。焦っても仕方がないので、搭乗ゲート近くの椅子に座って搭乗時間までしばし目を瞑って待つ。
しばらくして、搭乗口に人がにぎわい始め、優先搭乗が開始された。
優先搭乗が終わり、座席が後ろの人たちから一般搭乗が始まった。
僕も後方の座席だったため、列に並んで搭乗ゲートをくぐって、飛行機へと乗り込んだ。
飛行機へと乗り込み、LANEを確認すると、ちとせから『気を付けて来てね?待ってるから』とメッセージが送られてきていた。
僕は『わかった。今から飛行機乗るから待っててね』と送って、スマホの電源を落とした。
◇
ガタガタガタ・・・
激しい振動と共に、目を開けた。
窓の外を確認すると、飛行機が地について滑走路を走っていた。ものすごいブレーキの音が鳴り響き、飛行機が減速していく。飛行機は定刻通りに出発して、僕が眠りについている間にあっという間に新千歳空港に到着したようだ。
『これより、すべての電子機器がご利用になれます。』
機内にそうアナウンスが流れ、僕もスマホの電源を入れる。
電源を立ち上げている間に飛行機は駐機場に到着し、シートベルト着用サインの表示が消えた。
乗客が一斉に立ち上がり、荷物棚に入れていた荷物を通路に取り出して、飛行機のドアが開かれるのを待つ。
僕も通路に出て、同じようにして待っていると、スマホの電源がようやく立ち上がった。すぐさま、LANEを開いて、ちとせから返信が来てないかを確認する。
『うん、わかった。待ってる』
そう返事が来ていたので、『今空港着いたよ。今から電車に乗って向かうね?』とLANEを送って、スマホをポケットにしまった。
飛行機から降りて、電車に乗り込んで札幌市内へと向かう。
札幌市内の駅で降りて、ちとせにお見舞いとして買い出しをしてから、バスに乗り込んでちとせの家へと向かう。
『もうすぐ到着する』
ちとせにそうメッセージを送ると、『着いたらLANEして?』とメッセージが届いた。
『わかった』と返事を返して、バスの窓から見える車窓を眺めた。
やはり首都圏とは違って、札幌も都会ではあるものの、建物がひしめき合って人が往来している様子ではなく、どこか延び延びとしたような雰囲気が漂っていた。
僕は眠気はあるものの、今はちとせに初めて直接会う緊張感の方が勝っていて、心臓がバクバクと振動していた。
大丈夫だ、ちとせの写真は見たことあるし、問題ない。にとお兄ちゃんとして、様子を見に行くだけだ。慰めに行くだけだ。大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、最寄りのバス停で降りた。
そこから歩いて10分ほど、ちとせから教えられた住所に到着した。確かにそこには、言われた通りの建物があった。
入り口から入り、階段を登って、ちとせがいると思われる部屋の前に到着する。
スマホを取り出して、『ついたよ』とメッセージを押した。
しばらくすると、ドンっと部屋の中で物音が聞こえ、足音がトコトコと聞こえてきた。
そして、ついにその時が訪れたのだった。
ガチャっとカギが開けられて、キィィイっという音と共に、ゆっくりとドアが開かれた。
僕はゆっくりと覗き込むように中を覗いた。
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