第16話 プレゼント
とある日、ちとせといつものように昼間っから通話をしていると、ふと思い出した。
「あ~ちとせ~」
『ん~何??』
ちとせは、他の友達のLANEのトークを返すのに必死で、生返事を返してくるだけだ。
適当に聞き流している時の方が、チャンスだと思い、僕は思い出した用件を伝えた。
「ごめん、今度の土曜日は僕、友達と遊びに行くから。昼間は通話できないや」
『えぇ~』
「ごめんな」
『・・・嫌だ』
「いやだって言われてもなぁ…予定は予定だし…」
ちとせに駄々をこねられるのは嫌な気分ではないが、既に決まっていた予定だし、断るのも申し訳ない。それに、ちとせとは毎日のように通話しているので、たまには一人の時間があってもいいのではないか、そう思っていた。
『・・・もう知らない』
すると、プイっと顔を逸らしたのが電話越しでもわかるほどに拗ねてしまった。
「ご、ごめんってば…」
『・・・』
ガチャ!
その時だった。突然通話が途切れてしまった。
画面を見ると、向こうから通話を切ったらしい。
えぇぇぇ・・・癪に障るようなことだったのか!?
僕は驚きつつ、もう一度通話ボタンを押した。
しかし、何度コールが鳴っても、ちとせは出てくれなかった。
諦めて、通話中止のボタンを押して、ため息をついた時だ。ちとせからスタンプが送られてきた。そのスタンプは、アッカンベーと舌を出して怒っているスタンプだった。
「…」
どうしたものか…とりあえず、ちとせに何かアクションを起こさない限りは意味がないと思ったので、トークに返事を返した。
『ごめん、悪かった』
すると、『プィ』っと返事が返ってきた。う~ん・・・もうどうしたらいいのか分からないので、直接聞くしかないなぁ…
『どうしたら許してくれる??』
僕がそう聞くと、既読が付いてしばらくして、一枚の画像が送られてきた。それは、蛍光ペン7色セットだった。
『これ欲しいの』
『つまりは…これを買えと??』
『うん!』
何ということだ、ちとせが醸にしてきやがった・・・だが、これを買わない限りしばらくちとせは口きいてくれなさそうだしなぁ…どうしよう…
迷った末に、僕は渋々『わかった。旅行の時に買ってあげるな』とついつい甘い返事を返してしまうのであった。
まあ、少し早いけど誕生日プレゼントということでいっか・・・
そう自分で納得して、僕はため息をついてその蛍光ペンの写真を眺めた。心なしか、その蛍光ペンたちは、発行しているかのように、さらにピカピカと光を増しているように見えた。
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