第28話 クラン戦の事前準備

 翌日、傭兵斡旋所に行く。

 テッドの事前情報通りに、義経の名前で傭兵を募集するが魔法の鏡に出ていた。


 オーエンと一緒に徴募官に申請を終える。

 集合場所はマンサーナ島となっていたので、転移門でマンサーナ島に飛ぶ。


 転移門の付近にはうしおの理の団員がいたので、声を懸ける。

「義経さんの募集に応募してきた。どこに行けばいい?」


「それなら、酒場に行って説明を受けてくれ」

 酒場に行くと潮の理の団員がいて、紙を渡してきた。


「ここに名前を書いて。あと、紙に書いている該当スキルと、装備がある場合、チェックしてくれ」


 紙を見ると、義経は戦闘スキルの他に錬金術スキル、料理スキル持ちを探していた。


 申請する装備欄を確認する。武器や防具より船と大砲を持つプレイヤーを探していた。


(白兵戦ではなく、海戦や砲撃戦重視か)

 オーエンと一緒に紙を提出する。団員はオーエンの紙を確認すると指示を出す。


「オーエンさん、あんたは二階の二〇一号室に行ってくれ。やってほしい仕事がある」


「わかった」とオーエンは二階に行く。

 団員は遊太のスキルと装備を確認する。


「遊太さんは海底探査装置を持っているんだな。それなら、二〇三号室だ」

 二〇三号室に入ると、大木戸が待っていた。


 大木戸は顔付きも穏やかに礼を述べる。

「遊太さんだったかな。この度の戦いに協力してもらい、感謝している」


「俺も潮の理が治めるこの島が好きだ。ただ、それだけさ」

「さっそくだが、宝箱を探して欲しい。正確には宝箱から出るクエストを呼び起こすアイテムが欲しいんだ」


(あれ? もしかして、いつか引き上げた宝箱に入っていた短剣か?)

「目当ての物は、持っているかもしれない。錆びた短剣なんだ。修理に、二百万リーネが掛かると言われて、倉庫で眠っている」


 大木戸は軽く驚いた

「何と、すでに持っていたか! なら、その短剣を売ってくれ」

「いいぜ。倉庫にあるから、すぐに持ってきてやるよ」


 酒場から出て、倉庫屋から短剣を出して、酒場に戻る。

 部屋には大木戸の他に鍛冶師の男がいた。鍛冶師の男が難しい顔で短剣を見る。


ひどく破損しているな。直すには手間と費用が必要だ。それに、例の品かどうかも不明だ」


 大木戸が真剣な顔で鍛冶師に頼む。

「もし、これが義経の要求した品だとしたら必要になる。クラン戦までに直してくれ」


 鍛冶師の男は硬い表情で了承した。

「わかった。難しいが、やってみるよ」


 鍛冶師の男は短剣を持って部屋から出ていった。

 大木戸は遊太に冴えない顔で尋ねる。


「それで、短剣はいくらだ。頼んでおいて悪いが安くしてほしい」

「百万リーネといいたいところだが、状況が状況だ。修理費は潮の理が持つみたいだから半値の五十万リーネでどうだ?」


「その値段ならいいだろう」

 ぴろりんと音がして、大木戸から五十万リーネが送られてきた。


「それで、俺はこれから何をすればいい? 砲弾の作成か?」

「短剣が目当ての品かどうかわからない以上、宝箱の引き上げは続投する。港にいる潮の理の団員を一人乗せて、宝箱の引き上げを行なってくれ」


「引き上げた品は、どうする?」

「悪いが、全て潮の理で引き取らせてくれ。引き上げた品は潮の理が半値程度で買い取らせてもらう」


「わかった。なら、さっそく、宝箱を引き上げてくる」

 港に行って、潮の理の団員を漁船に乗せる。二人で宝箱を引き上げに行く。


 団員のほうが遊太より慣れていた。なので、海底探査装置の画面の確認と宝箱の引き上げを頼んだ。


 さすが、慣れているとあって、ガラクタを引き当てる失敗がなかった。

 一日目に十二個、二日目に十五個、三日目に十三個の宝箱を引き上げる。


 取り分が半分との話だったが、幸運も重なり収入は百四十万リーネにもなった。

(さすがは海洋冒険クランの宝箱探しのプロだ。効率が違う。これ、戦争がなくても儲かったな)


 クラン戦の前日を迎える。遊太たちは村の広場に集められる。

 拡声器を使った潮の理から説明を受ける。


「クラン戦が初めての者もいると思うので説明する。クラン戦は明日の十八時スタートで二十一時まで続く。二十一時まで島の領主の館にある旗が折られなければ、勝ちだ」


 団員は質問がない状況を確認して説明を続ける。

「海賊傘下の傭兵部隊は当日に港に出す黒塗りの軍艦の前に集合。軍艦にいる義経さんから指示を受けて行動してくれ。なお、作戦行動は当日まで秘密だ。何か質問は?」


 誰かが挙手して質問する。

「味方はどれくらいいるんですか?」


「有難いことに、クラン戦に参加できる最大人数の二千人まで人は集まった。事前予想では、鏡の騎士団が四百人、白頭の鷲が三百人だ」


(数で見れば負けてはいない。だが、戦闘になればプロ・プレイヤーは一般プレイヤーが十人、束になっても敵わない。質では潮の理は大きく劣る。厳しい戦いなるな)


 戦いは厳しい。だが、勝つ方法はあった。マンサーナ島は海に浮かぶ島である。

クラン戦中は転移門が使えないので、船と艦で来るしかない。


 砲弾が飛び交う海戦となればプレイヤーの持つ腕前や装備より、軍艦の数や大砲の数がものをいう。


 いかに、強い装備を持つ凄腕のプレイヤーでも、大砲のダメージは防げない。つまり、三時間、相手のクランの軍艦を島に寄せ付けなければ、潮の理が時間切れで逃げ切れる。


 ただし、上陸されてしまえば、力の差は歴然なので負ける。いかにして、敵を島に上げないかが、今回のクラン戦の鍵となるのは明白だった。

 そのあと質問がいくつか出て、解散となる。

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