第3話 持たざる者と捨てた人

「そうよ、あたしいろいろ調べたんだから。昔からまれだけどいるんだって。1ヶ月前に分離したって話題になったじゃない」


「知らなかった」


「お、ようやく反応したな」


 サキコが笑う。


 ハヤタはユーリルの事を全て自分から遠ざけていたため、何も知らなかった。


何処どこにいるのその人?」


「地方に引っ込んだって言うから、どっかの田舎にでもいるんじゃない? なんだったら調べて来てあげるわ」


 この日初めてハヤタはサキコに感謝した。


 ⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘


(どんな人なんだろう? なんで分離したんだろう? ユーリルは生涯のパートナーだっていうのに)


 ハヤタはサキコが調べて来た住所を頼りに、都市からずっと離れた田舎の集落にやって来た。


 とても小さな村で、見かけるのは老人が多かった。


 ハヤタは2日前にフードをかぶって夜の闇にまぎれて家を出た。近ごろ感じたことのない高揚感がハヤタを包んでいた。それに後押しされて、ここまでやって来たのだ。


 白髪頭の老人に道を尋ねる。


 言われた通りに行くと、村のはずれに小さな小屋があった。畑に隣接している。その畑には青々とした野菜が育っていた。



『その人』はすぐわかった。


 サキコがニュース記事をプリントアウトして渡してくれたからだ。


「ショーターさん?」


 畑仕事をしていた若い男性が振り向く。


 思っていたよりずっと健康そうな顔立ちであった。日焼けしているせいでそう見えるのかもしれない。長く伸ばした髪が世捨て人を感じさせる。


 ハヤタが事情を話すと、彼はにこやかに迎えてくれた。





 つづく

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