第2話 嫁取りとその反対の事

「残念ですが息子さんは不適合者です」


 そう告げられた時の両親の顔は見るに耐えなかった。


 ユーリルに適合できない。


 それはエンダーミネ人ではないという烙印を押されたようなものだった。


 そしてその日、不適合を宣告された自分よりも辛そうな顔をした両親は、ハヤタを病院から連れ帰った。


 その日以来、ハヤタは外出していない。昨日までの生活が嘘のようだった。生活は一変し、両親もハヤタとは話をしなくなった。


 ハヤタ不適合者と言われただけで、両親の人生の汚点になってしまったのだ。


 それはハヤタにもよくわかった。


 だが、この孤独感を受け入れることは出来なかった。


 頭で理解していてもそれを精神こころが受け入れてくれない。


 心をコントロールするにはハヤタはまだ幼すぎた。


 ——世界が自分を拒否している。


 お前はこの世界に受け入れられない異物であると、排除しようとしているのだと、そう言われている気がしてならない。


(何処かに行きたい…)


 毛布の端を握りしめて、ハヤタは気遣いのないサキコを見ていた。


 この一年、ずっと誰かが同じように不適合者になればいいと願って来た。


 誰かが仲間になればいい。


 せめて自分1人ではなくなればいい。


 世界を不幸にするすべはないものか。



「——でね、あたしつい最近聞いたんだけど、『離婚』した人がいるんだって」


 サキコの声が初めてハヤタに突き刺さった。ハヤタは反応した。


「『離婚』?」


『離婚』とは一度適合したユーリルと再び分離することだ。かなり珍しく、ユーリルの説得が難しいとも言われている。


 ハヤタは毛布から顔をのぞかせた。


 サキコは勝った、というような表情をしていた。





 つづく

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