僕の中に住む人

青樹春夜(あおきはるや:旧halhal-

第1話 適合者とそうでない者

 惑星エンダーミネの人々には、自分の頭の中にユーリルと呼ばれる精神体を住まわせる習慣がある。


 ユーリルはこの世界に漂う、非物質的な存在だ。人々の中に好みの精神や思考、感情を認めた時に彼女らは近づいてくる。


『住む』とか『飼う』とか呼ばれる行為だが、実際には一方的に手放すことはできないし、ユーリル自体に気に入ってもらえなければ住み着いてもらえない。


 ただエンダーミネの99.999%の人間がユーリル適合型の脳波を持つとされ、不適合の者はほぼいない。




「うちのお嫁さんはね、ホント趣味が悪いのよ」


 サキコがそう言う。

 ハヤタはこの幼馴染が苦手だ。

 人付き合い自体が苦手だといってもいい。今日も図々しくハヤタの部屋に遊びにきている。


「ユーリルと適合すると精神安定の効果があるっていうけど、ウソね。あたし、ずーっとイライラしっぱなしだもん」


 サキコは3日ほど前に適合したばかりである。


 エンダーミネの人々は15才から適合が許可されている。サキコはさっさと『嫁取り』をしたわけである。


「頭ん中でね、家具を揃えたりしてんの。せっまい部屋でさ。おばさんみたいな家具…あたし達が子供の頃のような家具を揃えてさ、始終新聞読んでんの」


 ハヤタは毛布をかぶってサキコの声をさえぎろうとした。


(何でコイツはこんなにおせっかいなんだろう。僕はユーリルの話は聞きたくないのに)


 サキコは彼の様子に気がつかずに、話を続けていた。


「見た目はね、痩せてて背が高い神経質そうなタイプね。私は『雄』が良かったんだけど、来たのは『雌』だったの。口うるさくてー」


 大抵の人は自分と違う性別のユーリルを希望するが、そこは選べない。妖精のような『嫁』が来たと言う人もいるし、同性のユーリルでも親友のようになれたという人もいる。様々だ。


『そんなのでもあたしの精神に必要だっていうんだから、不思議よね。何の役に立つのかしらー」


(役に立って来たから、昔から適合して来たんだろ)


 ハヤタは一年前の事を思い出していた。


 ⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘


「残念ですが息子さんは…」


 不適合者です。




 つづく

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