第6話 一喜一憂(4)
「私は止めに行った。そしたらね。急に現れた私を見たお母さんは驚いて、自分の子供じゃないのに私をギュッと一回抱きしめてくれた。死なないでって伝える事しか私はできなかった。でもお母さんは私を見て、笑顔で一言だけ言ったんだ。『翼をよろしく』って。」
「凛空…ううん翼」
翼の目には涙が溜まり、そして流れた。
「結局私はお母さんを助けることができなかった。だから、私は決めたの。この世界のお母さんの願いを叶えてあげようって。」
「お母さんの願い…」
私は首のペンダントに触れる。お母さんの願い。お母さんが好きな私。
「そこからは翼の知ってる通り、私は君の前に現れて命を救った。でもその反動で力を覚醒させてしまった。本当にごめん。」
私は涙でぐちゃぐちゃになった顔で凛空の肩を掴む
「ごめんって思ってるなら、早く逃げてよ!色々教えてよ!私をこれ以上苦しませないでよ…」
「本当にごめん。」
翼の足からはどくどくと血が流れ出ている。
「ねぇ、早く自分の足を治してよ」
私はただ懇願することしかできなかった。私はどんなに力を貰っても無力だ。
「私の力は自分には使えない。」
「そんな…」
「そんな顔しないで、もう私の仕事は終わったんだ。」
「私ね、分かったの。何をすべきか。お母さんが好きな私に、人を助ける翼みたいになりたい。」
その言葉を聞いて、翼は目を丸くして優しい目をする。
「そう、翼ならきっとできるよ。」
翼は手を伸ばし、私の頬へ添える。私はその手を握り締める。
「嫌だよ!一緒に行こうよ!2人ならもっとたくさんの人を救えるよ!私ひとりじゃ無理だよ…」
「はは、まるで比翼の鳥だね。大丈夫私ができたんだから。それに翼はもう一人じゃないでしょ?」
そう言って凛空は後ろにいる白狼を見る。
「彼が翼の力になってくれる。」
翼はゆっくりと手を離し、目をつむる。
「いや!嫌だよ!起きて!ねぇ!」
瞬間、周りを囲む影に大きなものがぶつかった。影の外はどんどんと崩れ去っていく。
白狼は首を上げ、私の服を咥え私を持ち上げる。
「え、待って!まだ翼が!」
そのまま白狼は私を背に乗せ、影を突き破る。
「つばさーッ!」
離れる翼の姿はどんどんと見えなくなっていき、そして天井が崩れ、翼の居た場所は埋もれた。
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