第5話 比翼連理(3)

 どの位、2体の化け物は戯れていたのだろう。何度もお互い交錯し、攻防を繰り広げていた。



が、凛空の恐鳥は相手を疲労させるよう動き、深手になる様な攻撃は一度もしなかった。


そして、ついに白狼は動かなくなった。恐鳥はその様子を確認してからは頭上を旋回し近づくことは無かった。



「翼、今のうちにそいつからこっちへ移れ」



「うん…」



ゆっくりと恐鳥は降下し、私の元へ寄ってくる。私は導かれるまま凛空の元へ…瞬間、世界が歪む。



「な、なに!?」



「どうした?」



私に問う凛空、しかし凛空の顔も歪み、全てが曖昧になっていく。視界の輪郭がぼやけ、ひとつに溶け合い、やがて真っ白になる。そして…



「やっと目覚めたかよ、眠り姫」



目の前には凛空の顔が浮かび上がる。



「きゃあ!」



反射的に伸びた手を凛空は掴み、防御した。



「寝ぼけて攻撃か、ただの暴力女だな」



ただの悪口を言われて、普段なら怒っているはずだけれど、いまはそれどころじゃない!?どういうこと?



「私なにして…化け物は?!」



「は?何言ってんだ。まだ寝ぼけてんのか?」



「え…」



状況が理解できない…辺りを見回すと、そこは凛空と最初に出会ったような河川の岸辺にだった。



「え!?え!?夢!?どこから?私いつ寝たの?」



「落ち着け」



そういって、凛空から暖かなマグカップを手渡された。中身は見た感じ、ココアかコーヒーだと思う。



「今俺の家の近く。橋の上で会った時、俺の顔見て気絶するように倒れた。ったく、人の顔見て倒れるとか失礼過ぎるだろ。」



橋の上…それっての…?



「あ、あの…今どこ?」



「まだ分かってねぇのか。門町だ。」



その言葉で、病院の後に行った橋で気絶したことを理解した。逆に言うと、病院での出来事は現実で起きたということか…



「なに泣いてるんだよ?」



「え」



そう言われて気づく、目からは涙が自然と流れ出ていた。



「あれ?なんで…」



私は手で涙を拭うが、涙は止まることは無く、ゆっくりと流れ続ける。



「まぁ、それ飲んで落ち着けよ」



手元のマグカップを指さされ、私はその中の液体を1口飲む。液体の正体はココアで温かな甘みが全身に染み渡り、気分が落ち着いていく。涙は温まる身体に溶け、消えた。



「凛空…私どうなっちゃったの?」



「…」



私の問いに凛空は答えない。この独特な間、最初に出会った凛空だ。



「何があった?」



凛空は、私の質問には答えず、逆に質問してきた。



「なにって…」



いったい何から話せばいいのか。起きた出来事が多過ぎて整理しないと話すことさえままならない。



「うまく話せないけど…」



「いいよ、ゆっくりでも断片的でもいいから。」



私は凛空と別れてからの出来事を、へたくそに、まるで異国の言葉を話すかのような片言で語る…

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