第4話 邂逅遭遇(2)
佳代おばあちゃんの言った通り、道をひたすらに真っ直ぐ進み続けていると、川が見えてくる。
川は道とは平行に流れており、道と交差する場所には小さな橋が架けられていた。私は、その橋を渡り、中腹で止まる。周囲はすっかり夜になり、此処には街灯もなく、煌煌と月明かりだけが辺りをうっすらと照らす。場所は違えど、シチュエーションはそっくりだった。
「ただいま」
ふと、感じたままそんな言葉がポロリと零れ落ちる。
「あの時の川、綺麗だったな」
小さな橋の、短な幅を横断し、外の景色を眺める。そこから見える景色は真っ暗で、遠くに山の稜線がうっすらと見えた。
月は、山のさらに頭上に位置し、遠く、想像もできないくらい遠くにあるはずなのに、私に光を届けている。何かを掴む手とは逆の手を、私に胸に当てる。
「お母さん、どこにいるの…」
当てた手をぎゅっと握り込む。私にはお母さんの声は聞こえない。いったいどうすればその“声“は届くのだろうか。
「また飛ぶのか?」
聞き覚えのある声が、背中から聞こえてくる。私は振り向かず、ただ答える。
「飛ばない、私はもう飛ばないよ。」
「そうか…じゃあ何してるんだ。」
「さあね」
私はいつかの真似をして、両手を肩の辺りまであげて、手を広げる。
あんなに開かなかった佳代おばあちゃんの手を、私はあっけなく開いた。
「なにそれ?」
「お守り」
「それが?」
「そう」
佳代おばあちゃんがくれたのは、思いだ。
私はそれを、ジーパンのポケットにしまう。そして声の主へ振り返る。
「凛空、教えて。私に何をしたの?」
「…」
昨日と変わらない格好をした髪の長い人は、静かに私を見つめていた。私も凛空を見つめる。初めて見る凛空の瞳は、綺麗な藍色だった。
「なんか変わったな。」
「変えられたんだよ、いろんな人に」
そう、本当にいろんな人に…言葉の重さを知ってる人、自由を求める人、欲望にまみれた人、温かい人。
「来なよ」
凛空は不意に、腰ぐらいの高さにある、
こちらに振り返る凛空の顔は月の光に陰って伺うことはできなかった。一体どこに行こうというのか。
「来ないの?」
「い、行く!」
振り絞った勇気を足に乗せ、凛空の横に並ぶよう欄干の上に立つ。でも、この先に道は無い。
「いったいどこへ?」
「行くぞ!」
急に凛空に手を引かれ、凛空と一緒に欄干より先へ飛び出す。
そう、文字通り飛んだ。
「いやぁぁぁぁ!」
私は絶叫した。
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